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幸か不幸か神ひとえ  作者: 壬裕 祐


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30/34

お休み中


 ────本来ならば、安全を取って出歩くべきではないのだろう休日。


 僕が天下谷さんを外へ連れ出したのは、ひとえに……できるほど単純な話ではないが、ともあれ大きな理由として彼女の『これから(・・・・)』を示すためだった。


 色々なことを、我慢させない。もう、しなくていいと示すため。


 本当に(・・・)、普(・)通(・)に(・)生(・)き(・)て(・)も(・)ら(・)う(・)た(・)め(・)。


 それこそ色々な意味で難しいことは考えるまでもないが、彼女を守ると、助けると言ったのだから半端をする気など端から無い。



 まずは、僕が居れば大丈夫(・・・・・・・・)だということに慣れてもらう。



 未来のことを考えるのは追々でいい。まずはとにかく今、天下谷さんに本当の意味での『普通』と『日常』を思い出させる。取り戻させる。


 そうすることで、取り急ぎ彼女の心を救う────〝不幸〟に見舞われ始めて七年余り、察するに疲弊し切っているであろう、その心を。



 ……然して。


 唯一(・・)の懸念点が『芳野律人(ぼく)』という男子が片時も離れず傍に居るという、それこそストレスを避け得ないだろう真実どうしようもない問題だったのだが────




「──────…………」


「……、……………………」


 時は暫し過ぎて、午後四時過ぎ。僕らの間に在るのは沈黙。


 服選びを終え、その後に昼食も天下谷さんの意向に合わせた……もとい僕と隼太で強引に引き出したリクエストに沿うハンバーガーショップで済ませた後。


 街へ出たとはいえど、そもそも娯楽の選択肢が少ない田舎だ。迷いなく案内できる遊びの場などカラオケ程度が関の山で、予想通り経験が無いという女子一名を男子二人で丁重にエスコートして……まあそれなりに、楽しんでいただいた後。


 さて次は、という頃合い。


 解散には少しばかり早く、また僕の予定として帰るには早過ぎる、そんな頃合いに挟んでいた散歩の最中。出歩き経験値の少ない天下谷さんの疲れを鑑みて、小休憩に立ち寄った小さな公園にて────これは、喜ぶべきか否か。



「──────……ん…………ぅん……」


「…………………………」



 天下谷小幸は、僕の肩に頭を預けて熟睡……お昼寝(・・・)に、興じていた。



 ……隼太は、こうなる前。休憩開始と共に「ちょっと失礼」と言いフラっと場を離れている。なにをしているかは察しがついているし、もう暫く戻って来ないであろうことも経験から把握できている。助けが訪れるのは先のことだ。


 ……そして勿論、初めから至近距離(これ)で、そう大きくもない長椅子(ベンチ)に腰を下ろした訳でもない。コテンと転がり落ちそうな彼女を支え直すこと都度三度、丁重にベンチに転がす(・・・・・・・・・・)か身(・)体(・)を(・)張(・)っ(・)て(・)枕(・)を(・)作(・)る(・)か(・)の二択で後者を選んだゆえのこと。


 ────そして勿論、特に理由が無ければ後者の択など選んではいない。


 最後の三度目に寄った際、夢の中から僕の手を捕まえた天下谷さんの手が、振り解くのを憚られる強さを……心細さを露わにするかの如く、籠めていなければ。


「………………これは、どう受け取ればいいのかな。天下谷さん」


 眠る彼女に、独り問う。


 繋がれた手に関して、特に思うことはない。どう受け取るべきかと思っているのは、彼女がスヤスヤと眠りに落ちてしまったこと自体に対してだ。


 流石の僕でも、理解しているから。────年頃の女子が、全く気を許していない男の前で、無防備に意識を落としたりしないと。


 ……当然、慣れない外出で疲れたというのもあるだろう。けれども小さな子供ではないのだから、そして七年もの間で誰より、


 『気を張ること』に、慣れ切っているはずなのだから。


 欠片でも警戒心が在れば、天下谷小幸は人前でスイッチを切ったりしないはず。


 ……その、はずなのに。


「…………、…………、……────」


 意識を落として、人に触れて、気の抜けた寝顔で、規則正しい寝息の音。


 おそらくは、気合いを入れて起こしに掛からなければ目覚めることはないだろう。身を委ね切った有様(・・・・・・・・・)────あまりにも、早過ぎる。


 心の底に、感情が湧き出す。


 こんなにも早く────出会ったばかりの男に縋り、一も二もなく心を許す他ないほど、真に疲れ切っていたのであろう彼女の境遇(これまで)に。


「………………はー……」


 寝顔を覗き見る咎を切り上げて、空を見上げつつ息を吐く。


 そうして、空(・)の(・)奥(・)底(・)ま(・)で(・)も(・)睨(・)み(・)な(・)が(・)ら(・)。



「どうかと思うよ、神様」



 溜息と共に、決して届くことはない恨み言を一つ。既知(・・)へと投げる。



「……僕は、この子の〝不幸〟を許さないけど」



 そして、



「────それを『許さない』とは、まさか言わないよね」



 新たにするまでもなく、改める必要さえもなく。


 僕は『僕』を貫き通す旨、無関心な神様(ひとでなし)へと贈り告げた。






 ……斯くして、また取り急ぎは。


「────え? やっぱ俺このまま帰るか?」


「遅い、帰らないで、助けて。女子の起こし方なんて知らない」


「いや、お前いつだか居眠り天下谷さん起こしたつってたじゃん。帰るな?」


「帰んな。助けてよ」


 友の助けを得て、この窮地を脱する努力から始めよう。







甘さより労しいが勝つの誰かなんとかして。

早急になんとかします。


夜へ続く。

※続きませんでした。作者発熱につき許して。

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