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幸か不幸か神ひとえ  作者: 壬裕 祐


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16/21

規定的かつ確定的に


 僕の言葉に、またも一瞬で顔を真っ赤に怒らせて隣で叫ぶ天下谷あまがやさん。呆気に取られた様子でポカンとして、正面にて高速で僕と天下谷さんを見比べる千雨ちさめさん


 両者ともに、予想のできた反応ではある。


 それゆえ、僕は至近距離からの大音声に耳を破壊されながらも冷静に────


「……この家に、とは言いましたが、すみません。『()()()()()()()()()()()()()()()()()()です。あまり言葉選びが上手くないのは大目に見ていただけると」


 自分の悪癖を認めつつ、二人を落ち着けるべく説明を繋ぐ。


「天下谷さんも……ええと、娘さんも、御祖母様も、事の緊急性は正しく受け止めてくれているものと思います。実際に今日、命の危険が在ったわけですから」


 さすれば、


「そ、それは……そう、ですけど…………いえ、はい。そうです」


「それは、本当に、そうね。正直に言って、()()()()()()()()()()わ」


 僕の下手な言葉選びの衝撃半分、そして勢い半分で思わず叫んでしまったのはわかる。そんな天下谷さんも、そんな孫娘に釣られて動揺していた千雨さんも……重ねて、事が事。状況が状況だけに、すぐさま落ち着いてくれた。


 加えて、


「……頼れる相手ヒトが現れたのなら、こちらこそ逃がせない・・・・・のも、事実ね」


 御祖母様の方は流石というか、やはりというか。お歳を感じさせない頭の回転速度で話を合わせてくれるために、本当にありがたい。


 そう、逃がせないのは互いに同じ。


 頼れる者が存在し得ないという世知辛さも、互いに同じ。……こんな身の上だ。それはもう、僕だって語り尽くせない〝いろいろ〟を経験して今に在る。


 天下谷さんだって、その家族だって、きっとソレは同じだろうから。


「緊急性、必要性に合意がある……互いに合意する以外の選択肢が無いと判断しての、提案です。────僕を、あの『部屋』に置いてください」


 僕は、天下谷さんが住んでいるという部屋……あの『蔵』を改造して用意されたのだろう『部屋』を見た瞬間から決めていた提案を、改めて二人に示して。


 然らば、


「え……」


 ぽつり、天下谷さんが声音を零して。


「天下谷さんは、今日から母屋こちらに住めば良いかと」


 僕はとなりを見ないまま、千雨さんに対して断じるように言った。


「天下谷さんが隔離……また言葉を選ばず申し訳ありませんが、隔離されていた理由はわかってます。でも僕が居ればソレも必要ない、何か起こる前に警告できる」


 ────ここに来てからというもの、天下谷さんと千雨さんは目立って会話をしていないが、見ればわかる。時折に孫娘へ向ける視線や雰囲気から、それはもう。


「どれだけ〝足音〟が早かろうが、僕なら天下谷さんを助けられます。御祖母様に飛び火・・・する可能性も、()()()()()()()()()()()()対応できる。万全です」


 あんなところに天下谷さんを押し込めるのは不本意だろうと、確信できるくらいには。彼女を大切にしているであろう様子が、ありありと読み取れたから。


「…………あなたは、それでいいのかしら?」


「おばあちゃんっ……!?」


 いまだ情緒に振り回され気味な天下谷さんはともかくとして、千雨さんは迷わず……かどうかまでは知る由もないが、乗ってくるだろうと察しがついていた。


 ならば、あとは僕から答え返すだけ。


「秘密基地みたいで、ワクワクしますよ」


「芳野君っ……!?」


「……、…………うふふ、男の子ね」


 特に嘘というほどでもないが、見え透いた建前を。


「今日から?」


「はい」


「今すぐ?」


「できる限りは」


「いろいろと、急な準備が必要だけれど……」


「手を出せることであれば、いくらでも手伝います」


「ちょ、ぇっ、あ、あのっ……!」


 しつこいようだが、今この状況は命に係わる緊急事態。混乱、全くもって道理ではあるが、置いてきぼりが発生するのは仕方なしと置いておく他にない。


 然して、あわあわと腰を浮かせ僕らの顔を……先の千雨さんよろしく高速で見比べながら、紛れもない当事者の身で取り残されていく天下谷さんを他所に。


 今の今まで、最後の最後まで、()()()()()()()()()僕と、


 同じく、見ようによっては倣うように、()()()()()()()()()御祖母様は、


「……では」


「えぇ、わかったわ」


 差し出す手が一つ、迎える手が一つ。



 合意と契約を意味する握手を、呆ける孫娘の目前で交わし────



「真っ暗になっちゃう前に、あなたの『お部屋』を整えましょうか」


「よろしくお願いします。手伝います」



 所要時間、僅か数分。


「………………………………………………………………えぇ……?」


 呆然とする声音の隣で、無事に僕の突発的居候が決定した。







続きは夜、おそらく真っ暗になった後に。

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― 新着の感想 ―
話が…話が早い…! それだけ孫娘の現状が危ないと認識していたってことだろうけども。
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