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姉の代わりに嫁いだら、吸血鬼公爵に溺愛されました  作者: 高梨美奈子


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魔獣の森4

魔獣の群れが、次から次へとエルヴィンたちへ襲いかかってくる。


「――そこを退け!」


エルヴィンの剣が閃く。

一体の魔獣が低く唸りながら飛びかかってきた瞬間、その懐へ踏み込み、鋭い一閃を叩き込む。

黒い魔力が霧のように散り、魔獣の巨体が地面へ崩れ落ちた。


間髪入れず、別の魔獣が横から迫る。


「右です!」


「分かっている!」


クラウスが叫ぶと同時に、エルヴィンは身を翻した。

鋭い爪を紙一重でかわし、その首元へ剣を走らせる。


クラウスもまた、迫る魔獣を一体、また一体と確実に斬り伏せていった。


魔獣の群れは途切れることなく押し寄せてくる。けれど、二人の進む速度は少しも衰えなかった。


一方、フィリーナは彼らとは別の方向へ走っていた。


「こちらです! 急いで!」


怯えた村人たちを先導しながら、迫り来る魔獣を次々と斬り伏せる。


「子どもを先に!

振り返らず走ってください!」


「で、でも、あなたは……!」


「私は大丈夫です!」


フィリーナは微笑んだ。

その手に握られた剣が、再び月明かりを弾く。


彼らの様子を高空から見下ろしていた、一頭の巨大な龍が目を細めた。

低く、地を震わせるような声が響く。


『なかなかやるな、人間』


ヴォルフレアの視線が、剣を構えるエルヴィンへ向けられた。


『お主、名は?』


「……エルヴィン・ノワール」


『ほう……』


ヴォルフレアの口角がわずかに上がる。


『お主が、エルヴィンか』


その声には、どこか愉快そうな響きがあった。


『気に入った』


次の瞬間。

巨体が地上へ舞い降りた。


ズ、ズン――。


大地が揺れ、舞い上がった土煙の向こうで、ヴォルフレアがゆっくりと顔を上げる。

その眼前には、なおも魔獣の群れが押し寄せていた。


『下がれ』


静かな声だった。

ヴォルフレアは大きく息を吸い込む。


空気が震える。


森の炎さえ、一瞬揺らいだように見えた。


『――消え失せろ』


咆哮とともに、ヴォルフレアの口から、闇のような黒い光が放たれた。


――虚無の閃光。


黒い光が大地を走る。

触れた魔獣が、声を上げる間もなく消えていく。


濃密な瘴気がほどけ、光の粒となって、土へ、風へと還っていく。


「……っ!」


エルヴィンは思わず息を呑んだ。


もう一度、黒い光が走る。

魔獣たちが、次々と光の粒へ変わっていく。


『ここは我らに任せろ』


ヴォルフレアはエルヴィンを振り返った。


『エルヴィン、行け』


エルヴィンは迷わず頷く。


「感謝する! ヴォルフレア!


手綱を握り直す。


「クラウス、行くぞ!」


「はっ!」


目指すは、炎の向こうにある村。

背後では、ヴォルフレアを中心に、龍たちが翼を広げた。

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