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姉の代わりに嫁いだら、吸血鬼公爵に溺愛されました  作者: 高梨美奈子


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魔獣の森5

その頃。

リリアはレヴァフレアの背に乗り、森の奥深くへと進んでいた。


翼が夜空を切る。

周囲には数頭の龍が付き従い、炎の中を縫うように飛んでいる。


だが、奥へ進むほど――空気が変わっていく。

胸の奥にまとわりつくような、濁った気配。


「……レヴァフレア」


リリアが小さく声をかけた。


「この奥から……嫌な気配がする」


『……うん』


レヴァフレアの声にも、緊張が滲んでいた。


『僕にも分かる。

進むほど、澱みが濃くなってる』


リリアは森の奥を見つめる。


「レヴァフレア、気をつけて」


『分かった』


その直後だった。

森の奥で、何かが脈打った。


――ズン。


大気が揺れる。


「……え?」


次の瞬間。


黒々とした瘴気の塊が、まるで生き物のようにうねりながら、彼らへ襲いかかってきた。


『危ない!』


レヴァフレアが翼を翻す。


間一髪。

黒い奔流が、ほんの一瞬前まで彼らがいた空間を貫いた。


「レヴァフレア!」


『大丈夫!』


レヴァフレアは体勢を立て直すと、後方の龍たちへ叫んだ。


『お前たち、援護しろ!』


『はい!』


周囲を飛んでいた龍たちが、一斉に集まった。

何頭もの龍が互いの翼を寄せ、リリアを守るように、その周囲を固めて飛んだ。


「みんな……ありがとう」


リリアが呟いた、その時だった。


「……あっ!」


思わず声が漏れる。

彼女の視線が、森の奥へ吸い寄せられる。


炎の赤い光が届く、そのさらに向こう。

木々の隙間から、何かが見えた。


黒い。


あまりにも黒く、巨大な何か。

それは森の中に沈み込むように佇み、周囲の瘴気を吸い上げるように脈動していた。


リリアは息を呑む。


「……あ、あれは……何……?」


森の奥から、大地が唸るような低い音が響く。


『……分からない』


その声が、初めて震えていた。


『……だけど、あれが……澱みの中心だ』


レヴァフレアが低く呟く。


そして――

黒い巨大な影の奥で、二つの光がゆっくりと開いた。

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