その歩みの先で2
「そう……だったのですね……」
話を聞き終えたリリアは、呆然としたまま呟いた。
その隣で、エルヴィンはわずかに眉を寄せる。
「しかし、女性の一人旅などと……。
危ない目には遭わなかったのか?」
「はい、合いました」
「なっ……!」
あまりにもあっさりとした返答に、エルヴィンだけではなく、リリアも、クラウスも、クラリーチェも、揃って目を見開いた。
「フィ、フィリーナさん……?」
するとフィリーナは、何事もなかったかのように柔らかく微笑んだ。
「ご心配なく。返り討ちにいたしましたので」
「…………」
一瞬、サロンが静まり返った。
「か、返り……討ち?」
リリアが恐る恐る聞き返す。
フィリーナはこくりと頷いた。
「はい。少々物騒な方々に絡まれまして」
「そ、それで……?」
「なぜか慕われてしまって」
フィリーナは困ったように微笑む。
「その後は、ここまでの道中、護衛のような役割をしてくれました」
リリアはぱちぱちと瞬きをした。
「そ、そうでしたか……」
どう反応すればよいのかわからない。
クラリーチェは口元を押さえ、まじまじとフィリーナを見つめている。
そんな中、エルヴィンだけが、ふと何かに気づいたように顔を上げた。
「フィリーナ」
「はい」
「君の父上は確か――カディオン、と?」
フィリーナは姿勢を正した。
そして、今度は先ほどまでとは違う、凛とした礼を執る。
「はい。畏れ多くも、貴族の末席に名を連ねておりました」
一呼吸置いて、静かに告げた。
「父は、ライレム伯爵家の三男坊でございます」
「そうか……」
エルヴィンは静かに頷いた。
「カディオン・ライレム伯爵が、君のお父上か」
その名がサロンに落ちる。
「はい」
フィリーナはまっすぐに頷いた。




