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姉の代わりに嫁いだら、吸血鬼公爵に溺愛されました  作者: 高梨美奈子


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探索

その夜。


夕食を終えたリリアの部屋には、クラリーチェが淹れてくれた紅茶の香りが漂っていた。


リリアがカップを手に取ったところで、エルヴィンが静かに口を開く。


「リリア。

やはり、王家の書庫へ行く必要がありそうだ」


「そう、ですか……」


「封印区域に入ることになる。

許可が下りるまで、少し時間がかかるだろう」


エルヴィンは妻を見つめた。


「……君も一緒に来てくれるか?」


リリアは迷うことなく頷いた。


「はい。もちろんです」


だが、リリアはそこで表情を曇らせると、視線を伏せた。


「あ……あの……エルヴィン様」


「どうした?」


「……私……。

謝らなければならないことがあるのです」


エルヴィンだけでなく、傍に控えていたクラウスとクラリーチェも、その声音に顔を上げた。


「姉に……話しました」


一瞬、部屋の空気が止まった。


「リリ、ア……?」


エルヴィンの声に、驚きが滲む。

リリアは慌てて続けた。


「あ、あの、詳しいことまでは話していません。

ただ……『吸血鬼の末裔』という噂が本当だったら、と。それだけです」


そして、少し俯く。


「姉は、それだけで何も聞かずに受け止め、全てを察してくれました」


少し間を置き、静かに続ける。


「姉は博学で、数か国語の読み書きができます。

古文献にも心当たりがあると言って……調べてくれるそうです」


「そうか……」


リリアは肩を落とした。膝の上で手を握りしめる。


「独断で、勝手にこのようなことを……本当に、本当に申し訳ありません」


消え入りそうな声だった。


するとエルヴィンは、何も言わずに手を伸ばした。

隣に座るリリアの手を、ぽん、ぽん、と優しく叩くと、そのまま包み込むように握る。


「それが君の判断なら、私は何も言わない」


「エルヴィン様……」


「いや」


エルヴィンは穏やかに頷いた。


「むしろ……心強いかもしれないな」


その言葉に、リリアの目が潤んだ。


「……ありがとうございます」


握られた手から伝わる温もりに、リリアは静かに微笑んだ。



それから数週間後。


王宮の奥深く。幾重もの封印を施された王家の禁書庫。

閉ざされた扉の向こうには、数百年もの時を眠り続けた、古文献が眠っている。


その重々しい扉の前に、四人の人影があった。


エルヴィン、リリア、クラウス。

そして――セシリア。


リリアは姉を見つめた。

二人の視線が重なる。


セシリアは、いつもの優しい笑顔を浮かべて頷く。

その瞳には、静かな決意が浮かんでいた。


やがて、エルヴィンが扉へ手を伸ばす。

長い夜の先にある答えを求めて。


今、彼らの探索が始まろうとしていた。

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