姉妹の約束2
リリアは、やがて、胸の奥に溜めていた息を、ゆっくりと吐き出す。
「お姉さま……。
これは、お姉さまの胸だけにしまっておいてください」
「ええ。約束するわ」
迷いのない返事だった。
リリアは、その言葉に背中を押されるように、静かに口を開いた。
「……『吸血鬼の末裔』。
それが……ただの噂ではなく、本当のことだとしたら?」
セシリアの顔から、すっと血の気が引いた。
「……リリ、ア……?」
リリアは静かに頷いた。
「お姉さま。
私は、私の愛する人の呪いを解きたいのです」
月明かりの下、その声は凛としていた。
「そのために、自分のルーツを探りたい。私に何かできることがあるのなら……どんなことでも知りたいのです」
セシリアは、ただ妹を見つめていた。
その横顔は、もう幼い頃のリリアではない。
毅然としたその姿を見つめながら、セシリアは息を呑む。
胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
――ああ、リリア。
あんなに小さかったあなたが。
いつの間に、こんなにも強くなったのだろう。
いつの間に、こんなにも強い瞳をするようになったのだろう。
セシリアはしばらく妹を見つめたあと、静かに頷いた。
「……そう。分かったわ」
そして、柔らかな笑みを浮かべる。
「協力する。私も伝承を調べてみるわ。
古い文献なら、少しは心当たりがあるもの」
「え……?」
リリアは目を見開いた。
セシリアは博学だった。
何か国語もの読み書きを身につけた才女であり、古い書物を読むことも得意としている。
その助けがどれほど心強いものか、リリアにはすぐに分かった。
「お姉さま……。
何も、聞かないのですか?」
セシリアは微笑んだ。
「『吸血鬼の末裔、それが本当のことだとしたら』って、聞いたわよ?」
そして、妹の手をもう一度、優しく握る。
「それで十分よ。リリア。それ以上は聞かないわ」
「お姉、さま……」
セシリアは、いつもの優しい笑顔で笑った。
「話してくれて、ありがとう。リリア」
その手に、少しだけ力を込める。
「リリアの許可なく誰にも言わない。絶対に。約束する」
二人の頭上で、月が静かに輝いている。
セシリアは妹の手を握りながら、心の中で強く誓った。
――この子を、幸せにする。
自分にできることがあるのなら、何だってする。
どんな古い書物も、どんな伝承も、決して恐れない。
愛する妹が、大切な人と共に笑える未来を見つけるために。
「大丈夫よ、リリア」
セシリアの声が、夜風の中に柔らかく響いた。
「きっと、大丈夫」
その優しい言葉に、リリアの張り詰めていた心が緩んだ。
視界が滲む。
月明かりが、姉妹を優しく照らしていた。




