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姉の代わりに嫁いだら、吸血鬼公爵に溺愛されました  作者: 高梨美奈子


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姉妹の約束

夕食の時間は、夢のように楽しかった。

この日は特別に、屋敷の使用人たちも食卓を囲むことを許されていた。


広間にはいくつもの料理が並び、いつもは静かな屋敷が、今夜ばかりは笑い声で満たされていた。

何より、皆が公爵夫人となったリリアの話を聞きたがっていた。


「リリア様、お持ちくださったお菓子、本当に美味しかったです!」


「私もいただきました! あんなに美味しいお菓子、初めてです!」


「みんなで、『さすが公爵家の料理人だ』って話していたんですよ!」


口々にそう言われ、リリアは嬉しそうに微笑んだ。


「まあ。そう? 良かったわ。

エルヴィン様にも、皆さんが喜んでくださったとお伝えするわね」


あのお菓子は、父アンドレアスに母のことを尋ねたいと伝えた際、エルヴィンが厨房へ命じて持たせてくれたものだった。


「はいっ! どうぞよろしくお伝えください!」


「公爵様は、本当にお優しい方なのですね」


誰かがそう言うと、リリアは少し照れたように笑った。


「ええ……とても」


その一言に込められた想いを、誰もが微笑ましく受け取った。


皆の顔を見ていると、不思議なほど心が軽くなる。

公爵夫人として過ごす日々とはまた違う。


幼い頃から知っている人々に囲まれ、昔と変わらぬ温もりに包まれている。

心の奥までゆっくりと解けていくようだった。


――帰ってきたんだなぁ。


そんな実感が、静かに胸へ広がっていった。



楽しい時間は、いつだって早い。

やがて食事が終わる頃には、窓の外にはすっかり夜の帳が下りていた。


「はぁ……楽しかったな」


自室へ向かう廊下を、セシリアと並んで歩きながら、リリアは小さく呟いた。

こんなふうに笑ったのは、いつ以来だろう。


「ふふ。みんな、あなたのことが大好きなのよ」


「そう?」


「そうよ」


姉妹で笑い合う。

けれど、自室まであと少しというところで、セシリアがふいに足を止めた。

そして、そっとリリアの手を取る。


「リリア」


「はい?」


「少し、外の風に当たらない?」


その声は、いつもより静かだった。


「……え? お姉さま?」


セシリアは答えず、妹の手を引いてバルコニーへ向かった。

夜風が頬を撫でる。


空には淡い月が浮かび、庭園の木々が静かに揺れていた。


しばらく、二人は何も言わなかった。

やがてセシリアが、妹の手を包んだまま、静かに口を開く。


「……リリア。

私に隠していることがあるわね?」


リリアは、はっと息を呑んだ。


「……お姉さま」


セシリアはただ、妹を案じる姉の目で見つめている。


「ここへ来たときのリリアは、とても思い詰めた顔をしていたわ」


「……」


セシリアは、まっすぐに妹を見つめる。


「話して、リリア。お願い」


その真摯な声に、リリアはしばらく黙っていた。


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