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殿下は無能なので、婚約破棄すらまともにできない――と思っていたら様子がおかしい。  作者: マンムート


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29/32

29 悩むわたしと、赤裸々すぎる彼

たくさんある作品の中から、拾って読んでくださってありがとうございました。


誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂けたこと幸いでございます。


完結までよろしくお願い致します


「え。いやなの? やっぱりアレ? 『この人のことは嫌いじゃないし、勢いで男女の関係になってしまったけど、よく見ればわたしの好みじゃないし、王配にするなら別の有能な男がいい』……とか?」


 いきなりしょんぼりされたので。


「そ、そういうことじゃありません! それに、余りにも有能で野心がある人間が王配になると、それはそれで……」



 ああ、わたしはどうしてこういう言い方をしてしまうんでしょう。



「それって、有能で野心ない男ならいいってことだよね!? オレって無能で野心がないし、敵にすれば相手にならず味方にしても頼りないじゃん!」



 ですが、ジャガルだって、わたしの本心ならあの夜確かめたはずです!


 それなのに、こんなことを言いだすなんて!



「あなたくらい王配に向いてる方はいないんです! 権力欲がなく、常識をわきまえていて、自分の無能さをよく自覚し、しかも才能がある人間に嫉妬しないっていうのは最高なんです!」



 ちがいます。こういうことを言いたいんじゃないんです。


 それに微妙に無能というのともちがうんです!


 ほんとうに言いたいのは……。



 わたしはハーブティをひとくち飲んでから、


「わっ、わたしは……ジャガル、あなたがいいんです。あなただけが……」


「それなら何も問題はないんじゃない? オレだって結婚するならマリアがいい、というか、マリアしかいないもん。昔からずっとそう思ってた!」



 あの婚約破棄の夜。彼はわたしに言ったのです。


『キミみたいな人が奥さんだったらさー、オレだったら、毎日でも自慢しちゃうね! うちの奥さんはすごい! うちの奥さんはきれい! うちの奥さんさいこーって!』


 思い出すと、すごいセリフです。


 それに、彼はわたしを諦め、他の女と結ばれないためだけに、断種までしようとした人なのです。


 ですが……。



「今でもわたしが……最高だと思いますか? ……わたしの全てを見たのに……」



 黒髪一重の黒目で、隠しきれないソバカスが散った地味な女。


 鼻だって平凡です。


 黒髪は長いけどごわごわですし。


 しかも女にしては背が高く、ジャガルと大して変わりません。


 腕も脚も太め。


 裸になってしまえば、その辺にいる程度の女なのに。



「うん! だって、マリアはマリアだし。そりゃ、ここに通ってくれるようになってからいろいろ知ったけど。どんどん好きになるばっかりだったし!」


「え……」


「オレのために淹れてくれるハーブティはすごくおいしいし! たまーに見せる笑顔はかわいいし! 慣れない大工仕事だとか雑草取りだって、いつも真剣にやってて格好いいし! きっとさ侯爵令嬢じゃなかったとしても、マリアのことが好きになったと思うよ!」


 頬がかぁっと熱くなります。


 そんな風に見ていてもらっていたなんて!


「マリアが言ってた通り、まずい、このままじゃもっと好きになっちゃう! 離せなくなっちゃう! って思ってたもの! 今だって、もっともっと知りたい!」


 ですが、すっかりふっきれて遠慮がなさすぎです!


「……っ」


「うわー。マリア真っ赤だー」


「そっ、そういうジャガルだって、そのっ、ずいぶんと、すらっとして、前よりは全然かっかっこうよくなって……わたしが、色々手伝うつもりでっ、足を引っ張っても、すごく丁寧におっ、教えてくれるし、わたしがっ、困ってると、さりげなく助けようとしてくれるしっ……」


 心がいっぱいになって、うまく言葉が出てきません。


「ええっ!? う、うれしいけどさー。すごくうれしいけど、かっ買い被りすぎでしょ!」


「そんなことありません!」


 ジャガルは、顔を手で覆って、


「うわ……ちょっと、待って、その、顔が戻らない……」



 彼は、もうわたしの前であの仮面をかぶっていません。


 わたしを信じてくれて、好きでいてくるのです。



 わたしは彼が好き、彼はわたしが好き。お互いもっと知りたいと感じている。


 ですが、だからこそです。



「……今さらだって判ってますが……その……無理やりされた、とか、そういうわだかまりはないんですか……?」


 いくら彼を知るための方便だったとしても、勝手に王配にしてしまったことが後ろめたいのです。


「うーん。どっちかというと、オレの方から強引に、迫っちゃったと思うけど」


「え……あっ」



 また頬に血がのぼって熱くなってしまいます。


 あの一夜のことを生々しく思い出してしまうじゃないですか!


 彼に嫌われたんじゃないか、という哀しみと。


 そうでなかったとわかった時の喜び。


 結ばれた時の――



「そっ、そっ、そうではなくて!! 王配にされたことです!」


「? ないよー。だって、今のオレがマリアと結婚できるとしたらこれしかないじゃん!」



 彼のほうは、とっくに覚悟が出来ていたようでした。


 というか……。



「キミのパパも、そんな宣言をした以上、『結婚前に手を出すような奴と、娘は結婚させん!』とは言えないよね! よかったよかった!」



 覚悟というよりは……浮かれてる?



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このバカップルめ、爆発しろ(祝砲)
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