29 悩むわたしと、赤裸々すぎる彼
たくさんある作品の中から、拾って読んでくださってありがとうございました。
誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂けたこと幸いでございます。
完結までよろしくお願い致します
「え。いやなの? やっぱりアレ? 『この人のことは嫌いじゃないし、勢いで男女の関係になってしまったけど、よく見ればわたしの好みじゃないし、王配にするなら別の有能な男がいい』……とか?」
いきなりしょんぼりされたので。
「そ、そういうことじゃありません! それに、余りにも有能で野心がある人間が王配になると、それはそれで……」
ああ、わたしはどうしてこういう言い方をしてしまうんでしょう。
「それって、有能で野心ない男ならいいってことだよね!? オレって無能で野心がないし、敵にすれば相手にならず味方にしても頼りないじゃん!」
ですが、ジャガルだって、わたしの本心ならあの夜確かめたはずです!
それなのに、こんなことを言いだすなんて!
「あなたくらい王配に向いてる方はいないんです! 権力欲がなく、常識をわきまえていて、自分の無能さをよく自覚し、しかも才能がある人間に嫉妬しないっていうのは最高なんです!」
ちがいます。こういうことを言いたいんじゃないんです。
それに微妙に無能というのともちがうんです!
ほんとうに言いたいのは……。
わたしはハーブティをひとくち飲んでから、
「わっ、わたしは……ジャガル、あなたがいいんです。あなただけが……」
「それなら何も問題はないんじゃない? オレだって結婚するならマリアがいい、というか、マリアしかいないもん。昔からずっとそう思ってた!」
あの婚約破棄の夜。彼はわたしに言ったのです。
『キミみたいな人が奥さんだったらさー、オレだったら、毎日でも自慢しちゃうね! うちの奥さんはすごい! うちの奥さんはきれい! うちの奥さんさいこーって!』
思い出すと、すごいセリフです。
それに、彼はわたしを諦め、他の女と結ばれないためだけに、断種までしようとした人なのです。
ですが……。
「今でもわたしが……最高だと思いますか? ……わたしの全てを見たのに……」
黒髪一重の黒目で、隠しきれないソバカスが散った地味な女。
鼻だって平凡です。
黒髪は長いけどごわごわですし。
しかも女にしては背が高く、ジャガルと大して変わりません。
腕も脚も太め。
裸になってしまえば、その辺にいる程度の女なのに。
「うん! だって、マリアはマリアだし。そりゃ、ここに通ってくれるようになってからいろいろ知ったけど。どんどん好きになるばっかりだったし!」
「え……」
「オレのために淹れてくれるハーブティはすごくおいしいし! たまーに見せる笑顔はかわいいし! 慣れない大工仕事だとか雑草取りだって、いつも真剣にやってて格好いいし! きっとさ侯爵令嬢じゃなかったとしても、マリアのことが好きになったと思うよ!」
頬がかぁっと熱くなります。
そんな風に見ていてもらっていたなんて!
「マリアが言ってた通り、まずい、このままじゃもっと好きになっちゃう! 離せなくなっちゃう! って思ってたもの! 今だって、もっともっと知りたい!」
ですが、すっかりふっきれて遠慮がなさすぎです!
「……っ」
「うわー。マリア真っ赤だー」
「そっ、そういうジャガルだって、そのっ、ずいぶんと、すらっとして、前よりは全然かっかっこうよくなって……わたしが、色々手伝うつもりでっ、足を引っ張っても、すごく丁寧におっ、教えてくれるし、わたしがっ、困ってると、さりげなく助けようとしてくれるしっ……」
心がいっぱいになって、うまく言葉が出てきません。
「ええっ!? う、うれしいけどさー。すごくうれしいけど、かっ買い被りすぎでしょ!」
「そんなことありません!」
ジャガルは、顔を手で覆って、
「うわ……ちょっと、待って、その、顔が戻らない……」
彼は、もうわたしの前であの仮面をかぶっていません。
わたしを信じてくれて、好きでいてくるのです。
わたしは彼が好き、彼はわたしが好き。お互いもっと知りたいと感じている。
ですが、だからこそです。
「……今さらだって判ってますが……その……無理やりされた、とか、そういうわだかまりはないんですか……?」
いくら彼を知るための方便だったとしても、勝手に王配にしてしまったことが後ろめたいのです。
「うーん。どっちかというと、オレの方から強引に、迫っちゃったと思うけど」
「え……あっ」
また頬に血がのぼって熱くなってしまいます。
あの一夜のことを生々しく思い出してしまうじゃないですか!
彼に嫌われたんじゃないか、という哀しみと。
そうでなかったとわかった時の喜び。
結ばれた時の――
「そっ、そっ、そうではなくて!! 王配にされたことです!」
「? ないよー。だって、今のオレがマリアと結婚できるとしたらこれしかないじゃん!」
彼のほうは、とっくに覚悟が出来ていたようでした。
というか……。
「キミのパパも、そんな宣言をした以上、『結婚前に手を出すような奴と、娘は結婚させん!』とは言えないよね! よかったよかった!」
覚悟というよりは……浮かれてる?




