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第4話 ポップでチャーミングな髑髏型

「それにしてもみんな流石だねぇ!新人とは思えないや!」


 道すがら、ぱちぱちと拍手をすると、新人全員に睨まられる。

 褒めただけじゃん、怖いって。


 あれからしばらく探索をしているが、その道中でも数回魔物に襲われている。

 だが、これといったピンチもなく、今のところかなり順調に任務をこなせていると言ってもいいだろう。


「当然です。俺たちは全員、上位種から進化しました。一般的な魔物など相手になりません」


 なるほど、こいつら全員上位種あがりなのか。


 上位種というのは、魔物の中でも特に力がある種のことだ。

 レベルでは劣っていても、下位種と比べれば、上位種の方が総合能力値で勝ることは珍しくない。


 ちなみに俺は下位種あがりである、とほほ……。


「じゃあ何も心配ないね。俺は引き続き後ろから見てるから」

「……この任務であなたが付いてきている意義を疑いますね」

「だって俺お目付け役だもん」


 その言葉に、またもや数人の新人がため息をついた。


 その時――


「シッ……来ます!」


 リングが即座に声を落とす。


「左斜め前、岩陰。速い!」


 次の瞬間、小さな影が目の前を横切る。

 速すぎて、輪郭すら曖昧だったが、その特徴的なシルエットは捉えることができた。


 「おお、猫ちゃんだ!これって……」

 「捕獲対象発見、総員、追走班と拘束班に分かれろ!当初の計画通り、逃げ道を塞ぎ必ず確保する!」


 俺が何か言う前にリングがしっかり指示出しをする。

 ってか当初の計画って何?知らん。


「拘束班、位置に付きました!」

「追走班、いつでも追い込み可能です!」

「よし!各班それぞれの役目を全うしろ!」

「「「了解!」」」


 俊敏性が高い標的を捕獲するには、数で勝負するのが一番単純だし、効率が良い。

 俺もそれが一番良い手だとは思うし、俺だって数が揃っていればそうする。

 ただ、彼らの計画には一つ足りない点があった。


「≪ランパード≫!逃げ道を塞いだ!次はそっち追い込んでくれ!」

「≪バインド≫!く、逃げられた!」

「だ、だめだ!狭い隙間でもこいつ器用に避けやがる!」


 追走班がスキルを使用し、猫型魔物を追い込み、それを拘束班は捕らえようとするのだが……華麗な身のこなしで見事に回避されてしまう。

 新人の一人が捕縛用のスキルを放つが、軽く地面を蹴っただけで躱される。

 消えた、と思った瞬間には、もう別の岩の上にいる。

 対象が速すぎて追走班が追い込んでも拘束班が捕らえられないのだ。


 上位種の魔物から進化したエリート魔族が、一匹の猫に翻弄されている。

 見てる分には面白いなこの絵面。


「落ち着け!俺がやる、≪ランパード≫」


 その様子を見かねたリングがスキルを発動すると、地面が盛り上がり、猫型魔物と俺たちを囲むように四メートルほどの岩壁が出現する。

 そしてその後、空からの逃げ場もなくすように屋根も作成。

 完全に暗転しないよう、光が入り込む隙間も計算されており、匠の技術が光る、まさしく職人技だ。


 先ほど新人が使ったスキルと同じスキルではあるが、規模、構築速度ともに格が違う。

 ≪ランパード≫は一般的な範囲防御の魔法スキルであるが、この精度で放てる者はそういない。

 魔王軍でも上から数えた方早いレベルの精度であろう。


 これをこの若さで放ったというのだ、ああ才能って恐ろしい。


 猫型魔物は突如現れた岩壁にビクッ!と反応した後、苛立ったように壁に爪を立てたり、壁を殴りつけたりしている。


「これが噂の猫パンチ!」

「あなたは黙っていてください。さあ、これで動きはかなり制限できた、逃げ場もない!想定通り非力だ、当初の計画通りこの籠に入れる!」


 だから当初の計画って何よ……


 リングが持っている籠は、虚無鉄(ネザライト)という鉱石でできているようだった。

 虚無鉄(ネザライト)は、硬度はあまり高くないが、魔力を通しにくい為、魔法が得意な犯罪者などの手錠によく用いられる。

 今この状況に最も適した素材であろう。


「フシャアアアア!」

 

 リングの持っている籠を一見した猫型魔物は、野生の本能でその危険性に気づいたのか、一層警戒態勢を強める。


 対する新人たちも下手に動かず相手の出方を窺う。

 嫌な緊張感が漂う中、先に動いたのは猫型魔物だった。


 「!今までにない溜め!跳躍に注意しろ!」


 リングがそう発言した瞬間、猫型魔物は音を置き去るスピードで跳躍。

 あっという間に天井に張り付いた。

 そして、光を差し込ませるために開けた、僅かな隙間にぐいぐい体を押し付けている。


 「そんな小さな隙間から逃げられるわけがない!総員、少しのダメージは許容範囲だ!威力の低いスキルで撃ち落とせ!」


 リングの指示と同時に威力の低い≪カノン≫や、捕縛用スキルの≪バインド≫が、天井の猫型魔物に向かって一直線に放たれる。


 今にもその数々のスキルが猫型魔物に届くかと思われたその瞬間、


 ――ぬるんっ


「は?」


 どう考えても猫型魔物が通れる大きさではない小さな小さな隙間、それを目の疑うような身体の柔らかさでぬるんと抜けた。


 これが猫が液体と呼ばれる所以かぁ。


「あれなら大怪盗目指せそうだよね」

「うるさいっ!くそっ!」


 すかさずリングが≪ランパード≫を解く。

 うわっ、解くスピードも速ぇ……


 だが状況は初期に戻っただけ。

 見守ってるだけもいいけど、うーん。


「しょうがないにゃあ、俺が手伝ってしんぜよう」

「は?この状況であなたに何が…」


 指先に魔力を集め、スキル名を唱える。


「≪カノン≫」


 魔力が透明な液体に変換、収束され、基本魔法スキルである≪カノン≫が構築される。

 スキルの得とくが魔法タイプのものであれば、必ずといっていいほど所持しているこのスキル。

 ただ、俺の≪カノン≫は一般的な≪カノン≫とは一味違う。


「な、なんですか、そのふざけた形は」


 そう、俺の指先にある≪カノン≫は……やけにポップな髑髏型をしていた。

 丸っこくチャーミングな、デフォルメされた髑髏、それがふよふよと浮かんでいる。

 クロハくん特製の、女子受け抜群≪カノン≫である。


「かあいーでしょー!」

「それに一体なんの意味が…」

「え?君って可愛さに理由を求めるタイプ?」

「……」


 無言つらっ


「そ、それともかっこいいほうが良かった?かっこいいのも作れるよ、ほら。」

「それで何をするつもりですか?≪カノン≫ではあいつの動きについていけないですよ。」


 せっかくリアル寄りの髑髏に直してあげたのに完全にスルーされてしまった。

 これだから最近の若い子は……


「これをねー、えいっ!」

「ちょっ、その方向は!」


 俺が放った≪カノン≫は、威力もなく、のろのろと上下に揺れながら、岩場の奥に向かって進んでいく。


「君の案とてもいいと思うよ、やっぱり速い相手には数。これに限るよね。ただまあ、ちょーっと数が少なかったかも。だからさ……」


 そして、≪カノン≫が向かった先、地面が蠢いた。


「――ッ!?な、何をしているんですか!」


 リングの怒声と同時に、岩場の奥から魔物が溢れ出し、こちらに向かってくる。

 その数およそ三十体。

 

「増やしてみたよ、数。これで足りるでしょ」

「余計なことをおおおおおおおおおおおおおおお!」

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