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魔法使いの看病

 頭痛え。体だるい。やばい、これ完全に風邪引いた。

 昨日遊園地で遊んだ疲れ……ってわけでも無いだろうけど。最近シフト増やしすぎてたのがまずかったかなあ。海ちゃん達の食い扶持稼ぐためとはいえ、さすがにちょっと無理がたたったのかも知れん。

 しっかりと日干しされた布団の上で、ぼんやりとそんなことを思った。

 夜十時過ぎ、ようやくバイトが終わり、何とか我が家に帰り着くなり、情けないことにふらふらと倒れ込んでしまった俺は、海ちゃんに引きずられ床に着かされている次第だ。

 そして気になるのは台所の様子だが…………。

「お兄さん、おかゆ作ったんだけど、食べられる?」

 ぼーっ寝そべっていると、海ちゃんが小さい土鍋を持ってやってきた。俺が冬場に一人鍋で使ってるやつだ。

 正直あまり食欲は無いけど、そんなことは言ってられないかな。

「うん、ありがとう。いただくよ」

 よいしょと上体を起こし、土鍋の乗ったお膳を受け取ろうと手を伸ばす。

 …………。

 なんでこっちに渡してくれないのか。

「あの、海ちゃん?」

「お兄さん、大丈夫? あーんしてあげようか?」

 いや、体調悪くて辛いとはいえ、さすがにそれはちょっと。

 けっして嫌なわけではないんだが。

「気持ちは嬉しいけど、平気だよ。ちゃんと自分で食べるから」

「そう? ならいいんだけど。本当にきついときは、遠慮無く言ってね」

 なんて言うか、ちょっと大人びてるんだよな、こういうところ。一人前の気の使い方したり、言葉の選び方したり。

 まあ、お膳を受け取ったこっちが食べ始めるのをじっと見てたりするのは年相応なんだけど。

「そのときはちゃんと甘えさせてもらうよ。……いただきます」

 手を合わせて、鍋の中身を一口。

 …………うまい。

 風邪で味覚がよく分からなくなってはいるけど、手間かけて作ってくれてるのはよく分かる。

「おいしいよ、海ちゃん。ありがとう。それと、ごめんな」

「え? ありがとうは分かるけど、どうして謝るの?」

「台所見れば分かるよ。今日、料理がんばってくれてたんだろ? それなのにわざわざ病人食なんて作り直させちゃって」

「……もう、お兄さんはそんなこと気にしないでゆっくり休んで。具合が良くなったら、また作るから」   

「そっか。ありがとうな、期待してるよ」

「うん、だから早く良くなってね」

 病気の時に誰か居てくれるってのは、こんなに心強いことだったんだなと久しぶりに思った


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