第9話:忍び寄る地獄の悪意
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ガルドとの間に深い絆が生まれ、凍りついた心が少しずつ溶けていった由香。しかし、理不尽な地獄のシステムと他の鬼族たちの嫉妬が、平和な城に再び不穏な影を落とし始めます。
甘い平穏の裏で忍び寄る、新たな波乱の予兆を描く第9話をお楽しみください!
ガルドの胸の中で涙を流したあの日から、由香の心境には確かな変化が訪れていた。
相変わらず口は悪く、素直に甘えることはできないものの、ガルドに向ける瞳の奥にあった警戒心やトゲはすっかり消え失せていた。最強の鬼人の妻として過ごす城での日課は、いつしか孤独な戦いではなく、温かな時間を分かち合うものへと変わっていた。
だが、弱肉強食が絶対のルールであるこの地獄において、その「平穏」は周囲の者たちにとって面白いはずがなかった。
「……ねえ、聞いたか?」
城の周囲を取り囲む荒野の片隅で、下級の鬼人や、ガルドの支配権を密かに狙う者たちが集まり、不気味なざわめきを上げていた。
「深層の王であるガルドが、人間界から落ちてきたばかりのクソガキを『妻』として囲い、大事に扱っているらしい」
「ふざけた話だ。人間ごときが、この地獄の頂点に並び立つなど許されるものか。それに、あいつを屈服させれば、ガルドの弱点を握ったも同然だ……」
彼らのねじ曲がった嫉妬と悪意は、日に日に膨れ上がっていった。
かつて由香が人間界で味わったものと全く同じ、弱者を妬み、強者の足を引っ張ろうとする醜い怨嗟の渦。それは、地獄という底なし沼の特権階級に巣食う者たちの、底知れぬドロドロとした欲望そのものだった。
その日、ガルドは城を離れ、深層の統治に関する別の荒野の視察へと向かっていた。
いつもなら数日で戻るはずの単独行。しかし、その不在を狙い澄ましたかのように、城の周囲の空気が異様に重く澱み始めた。
広間の窓から外を眺めていた由香は、遠くの荒野の地平線に無数の禍々しい黒い気配がうごめいているのに気づいた。
ピクリと、由香のなかに眠っていた戦闘勘が鋭く目を覚ます。
「……やっぱり、甘い夢なんて長く続かないってことね」
由香は自嘲するように呟くと、部屋の隅に置かれていた、かつてガルドから与えられた魔力の刃を手に取った。
怯えはない。かつてはただ「奪うため」に振るっていたその刃は、いまや大切な居場所と、自分に初めて温もりを教えてくれた存在を守るための牙へと変わり始めていた。
黒い悪意の波が、城の門へと静かに、しかし確実に迫り来る。
地獄の底の平穏を切り裂く、激しい嵐の足音が聞こえていた。
第9話「忍び寄る地وردの悪意」をお読みいただき、ありがとうございます!
ガルドと心を通わせ、穏やかな日々を取り戻した由香に迫る新たな脅威を描きました。他の鬼族たちの嫉妬と悪意が、いよいよ城へと牙を剥きます。
そして次回、第10話では、不在のガルドを狙って急襲してきた敵対勢力に対し、由香が単身で立ち向かう展開に突入します……!
「由香ちゃんが守る側に回るの熱い」「次回のバトル展開がめちゃくちゃ気になる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや評価、いいねをよろしくお願いいたします!
それでは、第10話でお会いしましょう!




