第10話:牙を剥く脅威
第10話をご覧いただきありがとうございます。
ガルドの不在を狙い、城へと迫り来る敵対勢力の悪意。平和な日常が切り裂かれ、由香が自分の居場所と大切な存在を守るために再び牙を剥く、緊迫のバトル回です。
強敵との激突と、由香の覚醒を描く第10話をお楽しみください!
城を囲む重苦しい空気は、次第にはっきとした殺気へと変わっていった。
遠くの荒野から押し寄せるのは、ガルドの支配をよく思わない深層の反逆者たち、そして下級から這い上がってきた飢えた鬼人たちの群れだ。その数は数十に及び、それぞれが狂気に満ちた赤い目をギラギラと光らせている。
「ガルドがいない今こそ、あの人間めいた雌を引っこ抜いてやる!」
「深層の王の弱点を握れば、この地獄の覇権は我らのものだ!」
醜悪な歓声を上げながら、彼らは城の頑丈な黒曜石の門へと殺到した。
ドォンッ! と、巨大な衝撃が城全体を揺るがす。門の表面に無数の亀裂が走り、いつ破られてもおかしくないほどの猛攻が叩きつけられていた。
広間の窓からその様子を見下ろしながら、由香は静かに息を整えた。
恐怖や動揺は微塵もない。現世にいた頃、不条理な暴力に怯えてただうずくまっていた自分はもういない。
あの冷たくて暗い地獄の底でガルドに出会い、凍りついた心を溶かしてもらった。ここは、もう自分が逃げる場所ではなく、命をかけて守るべき「自分の城」なのだから。
「……勝手に人の家を荒らさないでよ」
由香の唇から、冷徹で美しい呟きが漏れた。
彼女は手に持った魔力の刃をぎゅっと握りしめ、城の正面玄関へと足を進める。
ゴウンッ!
ついに正面の門が内側へと派手に砕け散り、泥と血にまみれた敵の先陣がなだれ込んできた。飛び込んできたのは、醜悪な巨体を誇る最上級の反逆鬼人だ。その手には巨大な鉄塊のような武器が握られている。
「ほう、ガルドの妻とやらか。人間のガキが一人で出迎えるとはいい度胸だ!」
鬼人の男が不敵な笑みを浮かべ、容赦なく由香めがけて武器を振り下ろした。
だが、由香の動きはその巨体が滑稽に見えるほどに鋭く、洗練されていた。
――遅い。
相手の踏み込みの甘さ、力の軌道、そのすべてが由香の脳内でスローモーションのように鮮明に透けて見える。ガルドと過ごす日々の中で培われた戦闘勘は、かつての荒野の狩りよりも遥かに研ぎ澄まされていた。
ヒュッ!
由香の小さな体が紙一重で鉄塊をかわし、相手の懐へと滑り込む。
手にした魔力の刃が鮮やかな軌跡を描き、鬼人の頑丈な装甲を紙のように切り裂いた。
「ぐあ……っ!?」
巨体が崩れ落ち、驚愕に満ちた絶命の瞳が由香を見上げる。
一撃。雑魚どもとは違う、それなりの手練れを一瞬で葬り去った由香の姿を見て、背後に控えていた他の敵の群れが一斉に息を呑んだ。
「なんだこいつ……ただの人間じゃねえぞ!」
「やれ! 囲んで押し潰せ!」
怯みかけたのも束の間、欲望に狂った群れが一斉に牙を剥いて襲いかかってくる。
多勢に無勢。しかし、由香の瞳の奥にある炎は消えるどころか、ますます激しい光を帯びて燃え上がっていた。
(私を救ってくれたあの人の場所を、この世界を、誰にも渡さない……!)
血飛沫が舞い、地獄の底の城で激しい防衛戦の火蓋が切って落とされた。
第10話「牙を剥く脅威」をお読みいただき、ありがとうございます!
ガルドの不在を狙った敵対勢力の急襲に対し、由香が単身で立ち向かうバトル展開を描きました。かつてはただ生き残るために「奪う」戦いをしていた由香が、大切なものを「守る」ために圧倒的な敵を迎え撃つ姿に熱くなっていただけたら幸いです。
そして次回、第11話では、激しい戦いの最中に由香の体にさらなる重大な変化(新しい命の宿り)が発覚し、物語は最大の転換点を迎えます……!
「由香ちゃんが無双しててかっこいい!」「次回の展開が気になりすぎる!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや評価、いいねをよろしくお願いいたします!
それでは、第11話でお会いしましょう!




