第4話:圧倒的なる者
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地獄の荒野を深く進み、着実に貢献度を稼いでいく由香。順調かに見えたサバイバルですが、この世界の本当の恐ろしさを教える「絶望的な存在」とついに対峙する展開となります。
圧倒的な格上の暴力と、冷徹な少女の運命が交錯する第4話、ぜひお楽しみください!
数日間にわたる鬼人狩りにより、由香の「鬼族」としての猶予は十分に引き上げられていた。
脳内に響く残りの時間は、余裕の十数日を示している。スラム街のような最下層から這い上がり、下級の鬼人程度であればもはや一瞥するだけで的確に仕留められるだけの戦闘勘が身についていた。
しかし、進めば進むほど、周囲の景色は異様さを増していく。
赤黒く煮えたぎる大地のひび割れからは、触れただけで魂が焼き切れるような高熱の瘴気が噴き出し、空を覆う闇はますます濃くなっていた。それまでの雑魚どもが作り出す気配とは根本的に違う、底知れぬ圧力が重力となって由香の肩にのしかかる。
――ここから先は、格が違う。
本能的な警告音が由香の脳裏で鳴り響いた。だが、立ち止まる選択肢など彼女にはない。ここで歩みを止めれば、いつかまたあの這いずり回る奴隷に逆戻りだ。
その時、前方の濃い闇がゆっくりと裂けた。
「……ほう。こんなガキが、よくここまで這い上がってきたものだ」
低く、地獄の底を這うような美しい声が響く。
足音が聞こえたわけではない。気がつけば、由香の数歩先にその男は立っていた。
息を呑む。見上げるほどの長身に、漆黒の夜空を凝縮したような長い髪。その額には、ねじれた純白の角が宝石のように禍々しく輝いていた。そして何より、人間の形を保ちながらも理性を置き去りにするほどの「異形の美貌」が、見る者の魂を容赦なく奪っていく。
最上級の鬼人。下級の怪物どもとは次元が違う、この地獄の真の支配者階層の一角。
男が赤い瞳を細めると、周囲の空気そのものが凍りついたように重くなった。
「人間界の虫けらの魂か。そんな澱んだ目をして、何を必死に足掻いている」
「……黙れ」
由香は全身の総毛立つ皮膚を抑え込み、恐怖をねじ伏せるように持っていたナイフを構えた。
これまで培った殺意を込め、一気に男の懐へと踏み込む。狙うは心臓の一点。隙はない。完璧な速度と軌道だったはずだ。
だが――。
カキィンッ! と、乾いた甲高い音が荒野に響いた。
由香の目が見開かれる。男は武器すら抜いていない。ただ、軽く掲げた二本の指で、由香の渾身のナイフを挟み止めていたのだ。
「遅い。浅い。そして、飢えた犬のような殺気だ」
冷徹な呟きと共に、男が指先に微かに力を込める。
パキリ、と耳障りな音を立てて、地獄の冷気を纏っていたはずのナイフがガラス細工のように粉々へと砕け散った。
「がっ……!」
武器の破壊と同時に、圧倒的な衝撃波が由香の体を直撃した。
宙を舞い、地面に叩きつけられる小さな体。骨が軋む音を聞きながら、由香は地面に這いつくばった。立ち上がろうとしても、男が放つ圧倒的なプレッシャーが全身を押し潰し、指一本動かすことができない。
勝負にならない。
これまでのどんな獲物とも違う。神と虫けらほどの絶望的な実力差。
死を覚悟した由香の視界の端に、漆黒のブーツがゆっくりと近づいてくるのが見えた。
第4話「圧倒的なる者」をお読みいただき、ありがとうございます!
着実に力をつけてきた由香の前に立ち塞がった、圧倒的な強者――後の運命を共にする「鬼人」の登場回でした。指二本でナイフを粉砕するほどの絶望的な実力差を前に、由香がどう追い詰められていくのか。
そして次回、第5話では、いよいよ地獄の掟である「絶対服従の契り」と、運命の婚姻が突きつけられます……!
「この圧倒的な格上の相手との出会い最高」「由香ちゃんピンチだけど目が離せない!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや評価、いいねをよろしくお願いいたします!
それでは、第5話でお会いしましょう!




