第3話:飢えたる鬼人狩り
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初撃ちを終え、さらに貢献度を稼ぐために荒野の奥へ進む由香。冷徹に、そして効率的に命を刈り取っていく彼女の前に、地獄の過酷さがさらに牙を剥きます。
血と泥にまみれたサバイバル描写と、由香の揺るぎない生存哲学をお楽しみください!
赤黒い荒野を歩き始めてから、どれほどの時間が経ったのか。この地獄には空がなく、太陽の動きもないため、時間を知る手がかりは脳内に刻まれた残り時間のカウントダウンだけだった。
『残り時間:7日と12時間』
先ほど狩った下級鬼人から剥ぎ取った貢献度のおかげで、猶予の時間はわずかに延びた。しかし、安心感など微塵もない。奥へ進むにつれて、周囲の景色はより険しく、空気は冷たく澱んでいく。漂う瘴気は肌を刺すように痛み、そこかしこに転がる骨の山が、この場所の恐ろしさを無言で物語っていた。
「……また来たか」
足元でうごめく気配を感じ、由香はピタリと足を止めた。
茂みから現れたのは、犬のような四足の巨体に、人間の醜く歪んだ顔を持った複眼の鬼人だった。通常の者よりも一回り大きく、口からは涎を垂らしている。飢えに狂った野良犬のようだ。
グアァァッ!と、威嚇の咆哮が地獄の大気を震わせる。
由香は微動だにせず、ただ冷めきった瞳でその怪物を見据えた。
現世の時もそうだった。
学校の裏庭で、すれ違う大人たちの冷ややかな目で、いつも自分はこの「獲物を狙う野獣」のような視線に晒されてきた。怯えれば食われる。逃げれば追われる。だから、戦う以外の選択肢など初めから存在しない。
怪物が跳ねる。巨体が放つ突進の風圧が由香の黒髪を揺らした。
直前、由香は地面すれすれに身をかわし、手に持った泥と血にまみれたナイフを怪物の脇腹へと深く突き立てる。
「ガァッ……!」
手応えは重い。しかし、一撃では致命傷に至らない。怪物は怒り狂い、強靭な尻尾で由香の体を薙ぎ払った。
衝撃で体が吹き飛び、由香の背中が尖った岩肌に激突する。喉元まで熱い血が込み上げたが、由香は表情一つ変えず、痛みをまるで他人のことのように無視して即座に体勢を立て直した。
「……痛い、けど、何だそれ」
由香の口元に、乾いた笑みが浮かぶ。
生きていた頃、虐げられ、傷つけられた心の痛みに比べれば、肉体の傷なんてただの雑音にすぎない。生きるために奪う。それの何が悪い。
由香は地面を蹴り、今度は自ら怪物へと肉薄した。
驚愕する怪物の懐に潜り込み、その剥き出しの急所へ、持てるすべての力を込めてナイフを突き立てる。泥臭く、美しくもない、泥まみれの殺し合い。しかし、それこそが由香の知る唯一の生きる術だった。
ぐにゃりと怪物の巨体が崩れ落ち、消えていく。
脳内に響くアナウンスと共に、貢献度の数値が跳ね上がった。
『残り時間:9日と4時間』
荒野に一人、由香は荒い息を整えながら立ち尽くす。
衣服は返り血と泥で汚れ、手足には無数の擦り傷が絶えない。それでも彼女の瞳の奥にある光は、泥を啜っていた頃よりも遥かに鋭く、狂気を孕んで輝いていた。
もっと上へ。もっと強い奴を。
この地獄の底で、私が一番強ければ、誰にも奪われずに済む。
冷酷な生存の連鎖に身を委ね、由香はさらに深く、地獄の奥地へと足を踏み出していく。その先に待つ運命の出会いも知らずに――
第3話「飢えたる鬼人狩り」をお読みいただき、ありがとうございました!
下級の鬼人たちを次々と冷徹に狩り、サバイバルを続ける由香を描きました。人間だった頃の心の傷が、彼女をこの地獄で生き抜くための「最強の武器」に変えているというのが、このキャラクターの切なくも恐ろしいところです。
そして次回、第4話「圧倒的なる者」では、さらに奥地へと進んだ由香の前に、物語の運命を大きく変える最強の鬼人がついに姿を現します……!
「由香の生き様に痺れる」「次の展開が気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、いいねをぜひよろしくお願いいたします!
それでは、第4話でお会いしましょう!




