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地獄の底の鬼嫁生活:人間を捨てた少女は、最凶の鬼に愛を知る  作者: 凪塩 未来


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外伝 第4話:忍び寄る闇の影――城を揺るがす前哨戦

外伝第4話をご覧いただきありがとうございます。

本編第9話・第10話の直前、ガルドの城の周囲に蠢いていた敵対勢力たちの動きと、それを察知したガルドと由香の知られざる前哨戦を描きます。平和な日常が崩れ去る前の緊迫した空気と、二人が初めて背中を預け合って戦う激闘の裏側をお楽しみください。

テラスでの会話以来、ガルドと由香の間には以前のようなトゲトゲしい緊張感は消え、代わりに奇妙な安定感のようなものが生まれていた。

相変わらず口喧嘩は絶えないものの、夕食の席を同じくし、時には書庫の片隅で言葉を交わす。


それは、かつて冷酷な孤独の王として君臨していたガルドにとっても、人間界の荒波で心をすり減らしていた由香にとっても、人生で初めて知る「温かな日常」だった。


だが、弱肉強食が絶対の理であるこの深層の世界において、平穏は常に悪意の標的にされる。


その日の夜、城の周囲を取り巻く赤黒い荒野の空気が、いつにも増して異様に澱んでいた。

執務室の窓辺で書類に目を通していたガルドが、ふと動きを止める。彼の鋭い赤い瞳が、夜闇の向こうに潜む無数の禍々しい気配を正確に捉えていた。


「……やはり、我慢の限界というわけか」

低く冷徹な呟きと共に、ガルドは机から立ち上がった。

時を同じくして、城の別の部屋で眠りについていた由香も、本能的な殺気に跳ね起きるように目を覚ましていた。

「……何よ、この気味の悪い空気は……」


布団から素早く起き上がり、部屋の隅に置いた魔力の刃を手に取る。由香の戦闘勘は、かつての荒野で味わったものよりも遥かに大規模な悪意のうねりが、この城へと迫っていることを警告していた。


廊下に出ると、ちょうど同じタイミングで執務室から出てきたガルドと鉢合わせる。二人は言葉を交わすまでもなく、お互いの表情だけで事態を完全に把握した。


「城の裏手、そして東側の黒曜石の門の外部に、深層の反逆者どもが集結している。下級の雑魚をかき集めただけの群れだが、数が多すぎる」

ガルドの声に動揺の色はない。


むしろ、自らの領土を荒らされようとしていることに対する静かな怒りの炎が、その赤い瞳の奥で揺らめいていた。

由香は手に持った刃を構え、ふっと不敵な笑みを浮かべる。

「ちょうどいいわ。最近、体を動かしてなかったから、少し鈍ってたところよ。……ねえ、ガルド。あんた一人に全部いいところを持たせる気なんてないんだからね」


その言葉に、ガルドの厳格な顔立ちがわずかに緩み、それから頼もしい笑みに変わった。

「いいだろう。我が妻の腕前、存分に見せてもらおうか。ただし、私の背後から離れるなよ」

「大きなお世話よ!」


二人が城の正面玄関へと足を踏み入れた瞬間、ガルドの城の頑丈な外壁を激しく叩く轟音が響き渡った。

ドォンッ! ドォンッ! と、無数の反逆者たちが放つ魔力の衝撃が城を揺らす。

「開けろ、ガルド! 人間の雌を囲い込んで王気取りの王よ、その首を差し出せ!」

外から聞こえてくるのは、醜悪な嫉妬と狂気に満ちた叫び声だった。ガルドの支配権を奪い、深層の覇権を握ろうとする者たちの、愚かで貪欲な悪意の群れ。


ガルドが冷酷に鼻で笑い、重厚な正面の門の鍵に手をかける。

「烏合の衆が。王の怒りがどういうものか、身をもって教えてやろう」

ガルドが扉を力任せに引き開けると、そこに広がっていたのは、赤黒い闇を背景に、無数の武器を掲げた鬼人たちの群れだった。血走った目が一斉にこちらを向く。


「殺せぇっ!」

鬨の声を上げながら、先陣を切った数体の巨漢の鬼人が一斉に襲いかかってくる。

だが、その迎撃の瞬間に、ガルドと由香の連携は完璧なまでに噛み合っていた。


ガルドが放った圧倒的な重力波が前方の敵の足を一瞬で地面に縫い付け、動けなくなった隙を突いて、由香の鋭い刃がその急所を容赦なく切り裂く。

ヒュッ! ぐしゃり、と肉を断つ音が夜闇に響き渡る。


「遅い! そんな踏み込みじゃ、私をかすりもしないわよ!」

由香が鮮やかなステップで敵の群れを翻弄し、次々と無力化していく。その後方では、ガルドが巨大な魔力の障壁と圧倒的な覇気で、後続の増援を一網打尽に押し潰していた。


背中合わせに立ち、お互いの死角を完全にカバーし合う二人。

かつては孤独に怯え、誰をも信じられずに一人で戦っていた者同士が、いまや同じ目的のために、信頼という最も強固な絆を背負って共闘している。敵の数こそ多いものの、その勢いは完全にガルドと由香の圧倒的な力量の前に押し返され始めていた。


「ほう、なかなかやるではないか、由香」

「当たり前でしょ! あんたの足手まといになるほど、やわな女じゃないわよ!」

敵の群れの中心で交わされる二人の軽口は、殺伐とした地獄の戦場にあって、あまりにも鮮やかで力強かった。


夜の闇の中で繰り広げられた前哨戦は、反逆者たちが思い描いていた「王の弱点をついた奇襲」という目論見を、ものの見事に粉砕し尽くしていくのだった。

外伝第4話「忍び寄る闇の影――城を揺るがす前哨戦」をお読みいただき、ありがとうございました!


本編第9話・第10話の直前に起きていた、ガルドと由香の知られざる共闘バトルを描きました。お互いの背中を預け合い、抜群のコンビネーションで敵を圧倒する二人の姿を楽しんでいただけたら幸いです。

そして次回、いよいよ外伝は最終話――第5話を迎えます!

激闘の裏でガルドが由香に伝えた秘めた想いと、二人が築き上げた愛の結晶の未来を描くエピローグを、どうぞお楽しみに!


「ガルドと由香の背中合わせ共闘シーンカッコよすぎる!」「二人で敵をなぎ倒すの爽快感あって最高」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや評価、いいねをよろしくお願いいたします!

それでは、外伝最終話でお会いしましょう!

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