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地獄の底の鬼嫁生活:人間を捨てた少女は、最凶の鬼に愛を知る  作者: 凪塩 未来


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外伝 第2話:透明な檻のなかで――由香の困惑と秘密の探索

外伝第2話をご覧いただきありがとうございます。

本編第6話の裏側、ガルドの城に連れてこられた直後の由香の視点にスポットを当てます。最強の鬼人に敗北し、「妻」として未知の城に放り込まれた彼女が、絶望と警戒心に満ちた日々の中で何を考え、どうやって城の秘密に迫っていったのかを描く緊迫の回です。

孤独なサバイバーの揺れ動く内面をお楽しみください。

「……ここが、お前の部屋だ」


冷徹な声とともに放り込まれたその部屋は、これまでの過酷な荒野とは打って変わって、異様なほどに静かで広かった。

黒曜石で造られた壁、冷たい石の床、そして窓の外に広がる赤黒く燻る空。


奴隷として首輪を繋がれるわけでもなく、薄汚い牢獄に押し込められるわけでもない。ただ、巨大な城の一角にぽつんと置かれたような、奇妙な空間だった。


扉が重い音を立てて閉まり、ガルドの気配が遠ざかるのを確認して、由香はゆっくりと床に膝をついた。

「……どういうつもりよ、一体……」


息を荒げながら、由香は自らの腕や胸元を探る。怪我はない。先ほどまで全身を縛っていた黒い魔力の鎖も、いつの間にか綺麗に消え失せていた。

現世の時も、地獄の荒野に出てからも、誰かに優しくされたり、理不尽な暴力を免れたりした経験など一度しかなかった。


優しさの裏には必ず悪意があり、微笑みの後には容赦ない裏切りが待っている。それが、底辺で泥水を啜ってきた由香の骨身に染み込んだ現実だった。だからこそ、この状況に戸惑い、警戒しないわけにはいなかった。


(私をここに閉じ込めて、何か別の残酷な拷問の準備でもしているの……? それとも、あの最強の鬼人の気まぐれな玩具として、飽きるまでここに放置する気?)


警戒心という名の鋭いトゲを全身に立て、由香は部屋の隅で丸くなった。

数日後、城の者が差し入れたのは、泥水ではなく、奇妙に澄んだ冷水と、荒野ではお目にかかれない奇妙な木の実だった。


おそるおそる口にしてみたが、毒などは仕込まれていない。むしろ、疲弊していた肉体をじわりと満たしていくような、確かな栄養が宿っていた。


「……こんなの、かえって気味が悪いっての」


誰もいない部屋で一人、由香は悪態をつく。

しかし、数日間閉じ込められ、誰にも襲われず、誰にも理不尽な暴力を振るわれない静寂が続くうちに、由香の内部で別の感情が頭をもたげていた。それは「退屈」と、そしてガルドという男の真意に対する抑えきれない「好奇心」だった。


ある日、ついに由香はじっとしていることに耐えかねて、静まり返った城の回廊へと足を踏み出した。

足音を極限まで消し、誰にも見つからないように黒曜石の影を縫って歩く。荒野の雑魚どもを狩っていた頃の戦闘勘が、今度は城の構造を把握するための探知機のように鋭く働く。


城の内部は迷宮のように入り組んでいたが、どこへ行っても衛兵の姿はなく、ただ冷たい風と重厚な気配だけが漂っている。

やがて、その奥まった一角で、かすかに光の漏れる重い扉を見つけた。

(……あそこは、何だ?)


そっと近づき、隙間から中を覗き見る。

そこは無数の古い石板や難解な地図が山積みにされた、広い書庫のような部屋だった。そして、その中央の机で一人、険しい顔で書類を睨みつけている男の姿があった。

ガルドだった。荒野で見せた、すべてを圧倒するような冷酷な覇気とは違い、その背中にはどこか底知れない疲労と、言い知れぬ孤独の影が張り付いていた。


(あいつ……一体、何を一人で背負っているっていうの?)


無意識に息を呑んだその瞬間、ガルドがふと顔を上げた。その赤い瞳が、正確に由香の隠れている扉の隙間を捉えた。

しまった、と由香の全身が反射的に緊張で硬直する。


ガルドは怒鳴り声を上げることも、武器を抜くこともせず、ただ低く静かな声でこう呟いたのだ。

「……そこにいるのだろう。勝手に動き回るなと言ったはずだ」


その声には殺気ではなく、どこか拍子抜けするような、そして奇妙な親近感のようなものが含まれていた。

その瞬間、由香の胸のなかで、ガルドに対するただの「恐怖の支配者」という認識が、音を立てて崩れ去り始めたのだった。

外伝第2話「透明な檻のなかで――由香の困惑と秘密の探索」をお読みいただき、ありがとうございました!


ガルドの城に連れてこられた由香が、最初は極度の警戒心と不信感を抱きながらも、ガルドの意外な一面や城の秘密に気づいていく裏側の様子を描きました。怯えていた少女が少しずつ自分の足で周囲を探り始める姿を感じていただけたら幸いです。

そして次回、外伝第3話では、二人が城の中で少しずつ言葉を交わし、不器用な距離を縮めていくさらなる知られざるエピソードを描きます……!


「由香ちゃんの警戒心がガリガリ削られていくの可愛い」「ガルドの隠し部屋を覗き見するシーン緊迫感あって良い」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや評価、いいねをよろしくお願いいたします!

それでは、外伝第3話でお会いしましょう!

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