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88/114

88 暗躍 11

売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。

そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。

長い旅の末、二人は数々の仲間とともに封印の地へ到着した。

だがそこへノブの兄弟子を名乗る老魔術師・マスタージェイドが現れ、魔人と化して一行を襲う。

レイシェル達は辛くもそれを撃退した――。

 暗雲の下に、煤け、ひび割れ、穴の開いた尖塔がある。戦いによって無残に砕かれた尖塔が。

 尖塔だけではない。砦全体が同じような有様だ。はた目には廃墟としか見えないだろう。

 これが以前はコノナ国最強と謳われたガデア魔法騎士団の砦だと、誰が信じるだろうか。


 だがこの砦には、まだ住人がいるのだ。

 騎士団を制圧した魔王軍が、新たな拠点として使っていたが故に。

 その住人達は動揺の直中にあった‥‥が、それも鎮火しつつあった。


 元はと言えば、無敵を誇る彼らの大隊長が軍勢を引き連れて出撃し、戻ってこない。それが原因だったのだ。

 隊長自身は気まぐれな所もあり、予定が変わるのは珍しくはない。

 だがそれならそれで遣いの者が戻って来る。

 何の音沙汰もないなどとはこれが始めてだった。


 大隊長下の親衛隊、彼らの反応は様々だった。

 砦で待機する者達がいる。不透明な状況に苛々する者もあれば、仕事をサボって遊び呆ける者もある。

 ゴブリンやオークなどの下級の魔物は、命令がこないままなので好き勝手にしている。

 寝て動かない物、倉庫の中を食べ漁る物。砦から勝手に出撃する物までいた。もちろん略奪のため人里へ行くのだが、半分ぐらいは防衛の兵に倒されて戻ってこない。


 砦は無法地帯となった。

 だがそれも終わりが近い。

 別に秩序が戻ったわけではなく‥‥単に住人が減り、活気が無くなったのである。


 待機していた者達も、流石に待ちくたびれて何らかの行動に出た。

 大隊長を探しに行くか、魔王軍本部へ戻った者達がいる。いずれも砦には戻らなかった。

 勝手に付近の村落を襲っていた下級の魔物達は、そのままどこかへ行って野盗となるか、返り討ちにあって命を落すかだ。

 元騎士団員達が捕らえられて下っ端の兵士になり下がっていたが、彼らもこの状況下で大半が脱走し、もはやほとんど残っていない。


 そんな中、マスタージェイドは独り帰還していた。

 彼に注意を払っている者などもはやほんとんどいないが。


 それは彼にとって非常に好都合な事だ。

 彼は酷く消耗し、乗機にも大きなダメージを受けていたからである。


 砦の格納庫、その奥――ケイオス・ウォリアーの整備や修理の設備を備え、他の区画とはシャッターで隔絶できる一画では、彼の機体が修理されていた。

 整備員のカスモドが、ぎくしゃく動く骸骨男(スケルトン)達に手伝わせながら、痛んだ部品を取り替えていく。その目は焦点があっておらず、口は半開きになったままヨダレを垂らしていた。彼のその足元にはポーションの空瓶が散乱していて――何らかの、あまりよろしくない薬品を飲みまくっている事は想像に難くない。


 一方、マスタージェイドーーその姿は老人に戻っている――は、一人で自室の隣にある暗い部屋にいた。隣にある部屋の、巨大な魔法陣の中心に。


 異様な光景だった。

 部屋のあちこちで、人の頭ほどの水晶玉が台座に置かれている。そこから透明な管が伸び、魔法陣の中央にいる老人の体に接続されているのだ。

 水晶玉は脈打つように明滅し、管の中を何か――気体なのか液体なのか定かではない――が通って老人の体に送り込まれている。


 魔法陣の中央で、全裸のまま水晶玉から送られる()()を受け続けるマスタージェイド。

 その体は干からびた老人の物ではなく、引き締まった筋肉で覆われた屈強な肉体である。

 あちこちに傷跡があったが、どれも塞がって血は出ておらず‥‥そして水晶玉から得体の知れないエネルギーが送られる度に、一つずつ奇麗に消えていった。


 奇怪な回復処置が続く中、薄暗い部屋の中に、羽ばたき飛来する物が現れた。

 窓も無いのに飛んできたそれは、目玉にコウモリの翼が生えた奇妙な魔物だった。


 それはマスタージェイドの眼前に来て、目の中にどこかの景色を映し出す。

 それを見る老人。目の中に映された、険しい岩山を鋭く睨みつける。


「我が師、トカマァク‥‥」

 その唇が微かに動き、黒い感情の籠った声が漏れた。


 そこで部屋の扉が開いた。

 光が漏れ、逆光の中に立つローブ姿の男が影となったシルエットを見せる。

「もう少し時間がかかるようだな?」


 ジェイドは彼へと振り向き「うむ‥‥」とだけ答えた。

 そこには肯定の意思がある。

 ローブ姿の影が笑ったようだった。


「任せておけ。人工進化の秘法を完成させんと自ら試しているお前のため‥‥私が手を貸してやるのでな」


 ジェイドは頷く。

 ローブ姿の影はまた笑った。

「とはいえ私も相手が手強い事は知っている。先ずはこちらの手の物を差し向け、二段構えでかかるつもりだ。ゆっくりしているがいい」

 そう言うと‥‥その姿が揺らめき、消えた。


 レイシェルとノブへの新たな刺客。

 ジェイドにはまだ協力者がいたのだ。

 戦いの旅はなおも続く・・・・!

設定解説


・Cオーウォー

元々は魔王軍海戦大隊の所有する、空水両用艦。

カツオノエボシを模して造られており、高い水中適応能力を有する。

リュウラが操艦を担当し、錬金術系魔法を応用した結果、武装が一部変わった。


基礎ステータス(強化改造や装備するアイテムにより、この数値は変化する)

HP:14000 EN:200 装甲:1200 運動:70 照準:145

射 ニードル砲           攻撃3500 射程2―7

射 ノクシャス・フューム(MAP) 攻撃3500 射程1―5・着弾指定直径3

格 触手              攻撃4300 射程P1―4 気力減少2LV(-10)

特殊能力:パーツ供給

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