64 潜伏 3
売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。
そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。
道中で数々の仲間を加える二人だが、最強の敵、黄金級機が現れた上、敵同士の内輪もめまで始まった。
絶体絶命の危機から行方をなんとか脱出した一行。救助した元敵将軍の案内で次に行くのは――?
目指す倉庫は山と平地の境目の、大きな川の辺にあった。
その川面が盛り上がり、陽の光を反射してクリアな装甲が水の中から現れる。
波を立てて浮かび上がってきたのは、クラゲ艦Cオーウォーだった。
「水辺にある倉庫で助かったな」
躁艦しながら安堵する、オーガーハーフエルフのエリカ。
ここまでできるだけ潜水して来る事ができたので、敵には遭遇せず辿り着く事ができた。
「まぁ元は海戦大隊の倉庫だからな。陸戦大隊が貰ったはいいが、ちとゴタゴタがあって、物資を取りに来るのが後回しになってたんだわ」
腕組みしながら言うジェネラルゴーズ。
「ゴタゴタって、内輪揉めですの?」
レイシェルがそう訊いたのは、ゴーズがマスタージェイドに裏切られたのを目の前で見たからだ。
だがゴーズは首を横に振った。
「いんや。コノナ国を攻め滅ぼした、その戦争だ。お嬢ちゃんを捕まえれば神蒼玉が手に入るって情報が入っちまったら、まぁ倉庫の一つや二つは放置でも仕方ねぇよ」
狙われている本人の前で、平気な顔で言うゴーズ。
コノナ国にしてみればとばっちりで滅ぼされたわけだが、それを悪びれる様子など全く無い。
レイシェルの顔が引きつっているのも、気にしてないのか気づいていないのか。
「なんだ。レイシェルを追いかけ回すのに忙しくてほったらかしだったのか。ならレイシェルが貰ってもいいな!」
「ヒャッハー!」
ゴーズの言い分に少しイラッと来たのか、エリカがちょっぴり憤り混じりに口を挟む。そして嬉しそうにブリッジクルーのエルフ達が賛同の叫びをあげた。
「どういう理屈だ‥‥?」
ノブは理解しきれなかったようだが、だからといって止めようなどとはしなかった。
――クラゲ艦を接岸させ、一行は倉庫へ入る――
「本当に誰もいませんわね」
呟くレイシェル。
入り口や窓に鍵こそかかっていたものの、ノブが開錠の呪文を使うと容易く開いた。中には見張り、番人、罠。侵入者を防ぐための物は何一つ無かった。
無人の倉庫内は複数のブロックに分かれており、どの部屋にも数や大きさは別として複数の箱が置かれている。
「物資はあるな。なるほど。ではまず何があるか、急いで調べよう」
『お願いします』
ノブの言葉に応えるのはドリルライガー。
ケイオス・ウォリアーが歩けるギリギリのサイズで造られているので、彼が入る事に特に支障はないのだ。
一行は手分けして箱を開けていく。
インゴッドや宝飾品、武具が多かったが、ケイオス・ウォリアーの改修・整備に使える資材も十分にあった。
箱にはコンテナと呼ぶべき大きさの物もあったが、それはドリルライガーが運搬を担当する。
「ドリルライガーも手伝いますのね」
作業を見ながら呟くレイシェル。
入る事ができるからといって彼が屋内作業に携わるのは少し意外だった。
そんなレイシェルにライガーは頷く。
『ええ。自分の強化となれば、ただ待ってるわけにもいきません』
「え?」
思わぬ返事に戸惑うレイシェル。
その後ろを、大の男でも持ち上げるのは難しそうな板金を軽々と運びながら、エリカが言う。
「あれ? 言ってなかったか。ドリルライガーの強化装備を造るんだぞ」
「え? え?」
レイシェルにとっては初耳である。
ライガーは申し訳なさそうに言った。
『魔王軍の強敵には、今の自分では力不足を感じまして。整備員の方々に相談した所、武装を強化しようという事になったのです』
この話が出たのはミノー国に入る前――レイシェルが疲労困憊で眠っていた時なので、彼女の耳には入っていないのだ。
話を聞きつけ、ゴーズが声をかけてきた。
「ケイオス・ウォリアーやその武器なら俺も探すのに付き合うぜ。適当な機体が無いと戦う事もできん」
そんなゴーズにレイシェルは訊く。
「これからどうしますの? 魔王軍に戻る? 私達に味方します?」
この男が今後どう動くつもりなのか。敵に回せば手強いだけに、気にせざるを得ない。
ゴーズは肩を竦めた。
「さて、な。やられっぱなしで下向いてる気はねぇが、これ以上お慈悲をかけてもらうのも性に合わねぇ。となると俺単独でマスタージェイドの奴を仕留めて、後は流れで適当に‥‥かね」
「本当に適当ですわね。貴方、なぜ魔王軍にいたんですの?」
少し呆れるレイシェル。
そんな彼女に、ゴーズはのほほんと答える。
「戦ってりゃ飯と金が貰えたし、規則だの規律だのが緩くて楽チンだったし、気にいらん奴をブチのめしても勝ちさえすれば一切お咎めなしだからだ。この世界の善悪なんぞ知ったこっちゃ無かったしな」
「あ‥‥そうですの」
今度は完全に呆れ、レイシェルは話を終える事にした。
この話をこれ以上まともに聞いても無意味だ、と判断したからである。
そうしていると、通路の奥からノブが呼ぶ声が響いた。
「ドリルライガー、エリカ。思ぬ収穫があった。調整のため、こっちに来てくれ」
『了解です!』
言いながら部屋を出て行くライガー。手には大型のコンテナを持ちながら。
「よし、すぐ行くよ!」
言いながら部屋を出て行くエリカ。重い箱を山ほど台車に乗せ、それを軽々と押しながら。
「お前さん、明らかにオーガー分の方が濃いよな」
ジルコニアにそう言われながら。
レイシェルとゴーズも彼らについて行く事にした。
ノブが最奥の格納庫で見つけた物は――
「ドラゴン!?」
驚くレイシェル。
巨大な竜の屍が、防腐処理を施されて横たわっていたのである。
翼がなくずんぐりした、頭部に長い角をいただく、四足歩行の陸生型の竜。
「ほう。恐竜じゃねぇか。この世界じゃこれもドラゴンていうのかよ」
ゴーズが呟く。
「これは加工して使えるぞ」
ノブは屍を見上げて何やら考えていた。
ケイオス・ウォリアーには成体素材も多く使われている。巨大な魔物は、物によっては巨大兵器の材料の宝庫なのだ。
設定解説
・この世界じゃこれもドラゴンていうのかよ
コモドドラゴンというドラゴンさえいる迷宮があるのだ。恐竜がドラゴン系に分類されていてもなんら不思議は無い。
なおファンタジー世界のモンスターに恐竜がいるのは特に珍しい事ではないと、自分がプレイした数少ない洋ゲーRPGが証明している。なぜガイジンはティラノサウルスとゴリラが好きなのか。まぁ多分文化的な何かなんだろう。




