58 苦難 4
売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。
そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。
敵の刺客となった元騎士団員達に何度も狙われながら、それを退ける二人。
道中で数々の仲間を加える二人だが、そのうち一人はレイシェルの兄の仇であった――!
戦いは終わった。
戦利品の回収班が戦場跡に飛び出し、各機体が艦に戻ろうと引き返してくる。
倒れ伏し、夥しい血の中に沈むメタルアントライオン。
それを見下ろし、ノブは呟いた。
『勝ったな』
「私が後ろにいても、ノブとライガーならなんとかしてしまったでしょうけれど‥‥」
興奮の鎮まったレイシェルはそう呟く。
だがノブは言った。
『ああ。戦闘はそうだろう。だが僕が勝ったと言ったのは君の事だ』
「え?」
思いがけない言葉に戸惑うレイシェル。
そんな彼女に、ノブの言葉が静かに‥‥しかし優しく届く。
『僕は地上最強の霊能者だ。だが僕だけではこの旅は絶対に成功しない。必要な人が君で良かった』
照れくささと気恥ずかしさから、操縦席でレイシェルは頬を染める。
「あ、う、そ、そうですの‥‥」
言葉もどもり、上手く出ない。
そんな彼女の背後で、ファティマンのシランガナーが銀色の頭で頷いていた。
だがそこに、クラゲ艦Cオーウォーからオーガーハーフエルフのエリカが緊迫した声を飛ばす。
『おい! レーダーに反応が‥‥敵の増援が一機!』
警報が響き、回収班が慌てて引き返してきた。
ノブの肩で舌打ちするジルコニア。
『一機? 今更か? 空気読めよ』
意外にも敵から返事がきた。
『そんなもん読んで何になる。俺が読むのは戦勝報告とエロ本ぐらいでな』
力強い中年男の声。
魔王軍機の残骸を踏み越え、戦場を吹き抜ける埃っぽい風の向こうから新たな機体が現れる。
その機体は黄金の甲冑を纏っていた。
並のケイオス・ウォリアーより頭一つ大きい。さらに重装甲がそれ以上のボリュームを感じさせる。
頭には湾曲した大きな角があり、まるで黄金の牡牛だ。
『このエネルギー反応は‥‥!?』
ドリルライガーが圧倒され、呻いて後ずさる。
そんな事はどこ吹く風、敵機は大股で歩いてきた。
『おう、初めて会うな。俺は魔王軍陸戦隊大隊長のジェネラル・ゴーズってもんだ。お前らの強さを認めて、俺直々に出て来たぜ』
通信機から届く声は、どこか楽しそうでさえあった。
『う、嘘だろ!? 黄金級機!』
モニターを見ながらエリカが悲鳴をあげる。
黄金級機のケイオス・ウォリアー‥‥それはこの世界における究極の兵器。
幾多の時代の最大の決戦において決定打となり、歴史を分岐させた最強の切り札。
ある時代では勇者の剣、またある時代では魔王の刃。
その力で滅ぼされた国など枚挙にいとまがない、絶対的な存在だった。
敵の機体がその黄金級機である事を、艦のモニターは告げている。
操縦者ジェネラルゴーズは楽しそうに笑った。
『スイデン国の者ならもう知ってたんじゃねぇのか。現魔王軍の大隊長は、みな黄金級機に乗ってる事をな。さあて‥‥いくか!』
その声と共に、黄金級機Gクエイクベヒモスが動いた!
一瞬、その両手がキラリと光を放つ。
次の瞬間、光弾がドリルライガーを貫いた!
『ぐわああぁ!』
吹っ飛んで地面に転がるドリルライガー。
「ドリルライガー!」
悲鳴同然の声でレイシェルが呼び掛けるも、ライガーは傷口をショートさせてまともに動けなかった。
敵の量産型機をたった一機で引き受け、辛くもであるが退けたのである。
ライガーにはもう余力など無かったのだ。
その上での、最強の敵からの一撃‥‥頑丈を誇るライガーであっても耐えられはしなかった。
『ノブ! 逃げないと!』
焦って叫ぶエリカ。
だが――ムーンシャドゥは魔王剣を手に、黄金級機のクエイクベヒモスへ向かう。
『逃げるにしても敵に隙を作らねばならない。ただ背中を向けただけでは確実に殺される』
静かに、だが力強く。ノブはそう応えたのだ。
『まぁな。こちらとしても逃がすと面倒だ。なら、艦を先に落とすか』
ジェネラルゴーズがそう言うと、クエイクベヒモスが再び歩き出す。
『させん!』
ノブの声が通信機から響くや、ムーンシャドゥは跳びかかった。
『魔王剣!』
ノブが叫ぶ。ムーンシャドゥが縦に一文字斬り!
『ストロンガーホーン!』
ジェネラルゴーズが叫ぶ。その両腕が輝き、前に突き出されると同時に閃光が爆発した!
輝きが収まった時――ムーンシャドゥは剣を振り下ろした姿勢で立っていた。
その全身から煙が立ち昇り、揺らめいている。
クエイクベヒモスも立っていた。黄金の装甲に袈裟斬りの傷が刻まれている。
こちらは敵を見据えたまま、悠然と立っていた。
「ノブ!」
堪らず呼びかけるレイシェル。
ノブは――
『‥‥!‥‥』
まともな声が出ない。
ムーンシャドゥが膝をついた。
それを前に、ゴーズは――笑った。
『いい威力だ。しっかり食いついてこいよ? でないと艦が落ちるぜ』
この状況を、明らかに楽しんでいる‥‥!
(おいおいおい! どうする、マジで!)
ジルコニアはノブの肩で狼狽えていた。
ノブにももう余力は無い。防御系のスピリットコマンドを使って、今の状況なのだ。
そしてノブのSPはもう枯渇している。先ほどの戦いで大量に消費し、既に残っていない。
シャドゥは三つの強化パーツを装備できるので、SP回復アイテムとEN回復アイテムを持ってはきた。だがそれらは全て、ほぼ単機でアントライオンを食い止めたため、使い切ってしまったのだ。
ノブには【SP回復】のスキルがある。だから時間さえおけばまたコマンドを使えはするが――そんな時間をこの損傷度で稼げるとは到底思えない。
そんなノブの苦境は、レイシェルにもだいたい予想がついた。
「させない!」
叫んで魔力を集中させる。無謀だろうが何だろうが、自分も戦うしかない。
レイシェル機を見て、ゴーズは機体をそちらへ向ける。受けて立つ気だ。
『お嬢ちゃん、脱出装置の準備はしておけよ』
だがそこへ割り込む通信が入った。
『その前に私の相手をしてもらうぞ』
クラゲ艦から飛び出す機体が一機。
量産型のソードアーミーである――武器は何も持っていないが。
ゴーズには声で誰が乗っているのかわかった。
『ほう? お前かよ、マスターウィンド』
設定解説
・ジェネラルゴーズ
召喚前は、神話の時代より神々が覇権を争い続ける世界で、神々の戦士として戦っていた男。
神話の時代よりの鎧を纏い、人間のもつ内的な宇宙パワーを発揮し、その拳は天を割り蹴りは大地を裂くと言われた最上位の戦士達の一人だった。
戦神に仕える暴闘士77人の中の最強を誇る7闘将の一人で、光速に達する剛拳を奮い数々の敵を屠っていた。
戦女神の信徒たる黄金の闘士達との戦いの中、致命傷を負って崖下へ転落した所をインタセクシルへ召喚される。
魔王軍に拾われ、帰る術が無い事を知ると「まぁいいや」と開き直ってそのまま軍に入った。無敵の力で数々の敵を倒し、ほとんど真っすぐ陸戦大隊長の座へつく。
レベル36
格闘244 射撃224 技量245 防御207 回避177 命中234 SP195
スキル:ケイオス9 底力6 気力限界突破3 アタッカー




