59 苦難 5
売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。
そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。
敵の刺客となった元騎士団員達に何度も狙われながら、それを退ける二人。
道中で数々の仲間を加える二人だが、ついに彼らの前に最強の敵、黄金級機が現れた――!
オウキのBソードアーミーがクラゲ艦Cオーウォーから降り立つ。
黄金級機・Gクエイクベヒモスの前に出て、恐れる事なく拳法の構えをとった。
ジェネラルゴーズが笑う。
『そんな量産機でわざわざ出てきたって事は、何か策でもあるんだな? しっかり出せよ・・・・通じなかったらその場でご臨終だぜ?』
その笑い声も消えぬうちに、オウキのアーミーが跳んだ!
『舞葬琉拳奥義! 流星落翔!』
ゴーズのクエイクベヒモスはその場から動かず、両腕から閃光を放ち迎え撃つ!
『ストロンガーホーン!』
アーミーの踏み込みは速かった。異常なまでに、目にも止まらぬと以外言えぬ程に。
だがその突風のごとき速度を、ベヒモスの光の一撃は迎え撃って捉えたのだ。
ベヒモスまであと半歩という至近距離で、野牛の両角がごとき閃光の双撃はアーミーを打ち、首が千切れかけるほどの、左腕が吹き飛ぶほどのダメージを叩き込んだ。
やはり二機には絶対的な力の差があったのだ。
しかし――首がおぞましい方向に曲がりながらも、アーミーはすぐそこにいたベヒモスを掴む。
レイシェルはモニターで見た。
アーミーを示すアイコンが真っ赤に染まり、3カウントが始まるのを。
「これは、まさか――!」
『ハッ! まさかと思ったが、マジで自爆か!』
アーミーに掴まれるベヒモスの中、ゴーズの笑いに呆れが混じった。
『多少の見当はついていたらしいな』
オウキのその言葉を聞き、今度は嘲りが混じる。
『まぁ良くある手だからな。しかし魔王軍にいたような奴だから、やっぱ無いだろうと思ったが。そこまでするとは、妙な術でもかけられたのか?』
『かもしれん。まぁ惑わされた後の方がマシなのは確かだ!』
オウキがそう叫んだ途端。
アーミーが大爆発を起こした‥‥!
「オウキ!」
思わず叫ぶレイシェル。
だが立ち昇る炎と煙の向こうから応える声は無い‥‥。
いや、声は返ってきた。
『あの程度じゃ俺とこの機体は倒せねぇよ』
そう嘯きながら、力強く前進し炎の中から出てくる、黄金の甲冑が‥‥。
装甲に亀裂は走っている。
欠けた部品もあちこちにある。
だが黄金級機は前進してくる。
『損傷はしたが、だから勝てるとか思うんじゃねえぞ』
皆はモニターで見た。
黄金級機Gクエイクベヒモス、そのHP――最大、実に60000。
ノブとの戦いと、オウキの自爆とで減ってはいるが‥‥残りは約49000。
そしてさらに告げる。
『黄金級機には回復能力があってな。この程度はすぐに修復する。別に意味はなかったな』
特殊能力欄には【HP回復(小)】と、確かに表示されていた。
終わった。
誰もがそう思った。
ただ一人を除いて。
その唯一の例外の声が通信機越しに響く。
『いやいや、大きくあるとも』
老人の枯れた声。それはマスタージェイドだった‥‥!
その声を合図にしたか、クエイクベヒモスが後ろから掴まれ、締めあげられる。
息絶えた筈のメタルアントライオンが、生ける屍のごとく起き上がって組み付いたのだ!
組み付かれてなお、ゴーズには余裕があった。
『ほう? まだ生きてやがったか。だがこいつで今さら何をする気だ?』
ゴーズが言うや、クエイクベヒモスはアントライオンの首を片手で締めた。
大人と子供ほどの体格差がありながら、アントライオンは完全に力負けしてねじ伏せられる。
そこでマスタージェイドが叫んだ。
『やれ!』
通信機から獣の悶えるような声が響いた。
アントライオンの中から‥‥マスターナイトの、レイシェルの元婚約者の声である。
各機のモニターに表示される怪獣のHPが一気に回復した!
それがマスタージェイドの施したなんらかの――強制的に、何かのタガを外す類の――措置である事を、その場にいる者達は察する。
その証拠に‥‥怪獣のアイコンの上で3カウントが始まったのだ。
それは先ほどの、オウキのアーミーと全く同じ!
アントライオンが爆発した!
膨れ上がった火の玉が、黄金級機を包んで呑み込む。
それを見届けたからか、戦場の片隅に霧が立ち込め、そこから一機のケイオス・ウォリアーが姿を現した。
直立した亀――蜥蜴男ならぬ亀男とでも言うべきか。
その機体からマスタージェイドの声が届く。
『そやつの自爆が、今の儂の用意できる最大威力じゃ。だがそれだけではゴーズを倒せん。邪魔する部下がいてもいけない』
そして膝をつくノブのムーンシャドゥへと首を巡らせる。
『部下どもを全て始末し、ゴーズの黄金級機を倒せる所までダメージを与える。それができるかどうか、正直疑問じゃったが。駄目だったなら、次の機会を待つ長い雌伏の時になっていただろうが。ノブよ、よくぞ今日ここでやってくれた!』
だが炎が収まった時。
そこには黄金級機が立っていた!
確かに深く傷ついてはいる。破損はさらに広がり、時おり各所から放電が漏れる。
だがクエイクベヒモスから、未だ余裕を無くさないゴーズの声が‥‥。
『ふん。やってくれるじゃねぇか』
『な‥‥あの自爆の威力は防御無視の30000ダメージだぞ!?』
エリカが慄く。
だが眼前のモニターにはクエイクベヒモスの残りHPが19000以上あると表示されていた。
ケタ外れの耐久力は、怪獣が吹き飛ぶ爆発にも耐え抜いたのだ。
だがしかし。
そこに不気味な笑い声が響く‥‥。
『ククク‥‥50000から30000を引けば残り20000。儂がそれぐらいの計算をできんとでも?』
マスタージェイドがそう言った時――
まだクエイクベヒモスを取り巻く、硝煙と砂煙の帳。
それを突き破るかのように、メタルアントライオンが再びクエイクベヒモスに組み付いたのだ!
『こいつ!? さっき自爆したじゃねぇか!?』
流石にこれはゴーズも予想外だった。
その声には驚愕が隠せない。
メタルアントライオンは無傷だった。だが先ほどより遥かに小柄――以前現れた時と同じ大きさだった。
この怪獣がどこから出現したのか?
爆発した怪獣の中からだ。
巨大化していたアントライオンは、以前のアントライオンを治療・回復させ、その上に追加装甲‥‥オーバーボディを纏わせていた姿だったのである!
勝利を確信して叫ぶマスタージェイド。
『撃墜されても外部装甲をパージして仕切り直せるタイプの機体! それと自爆の合わせ技! 今や忘れ去られた古代の闘法よ!』
その言葉とともに、再びメタルアントライオンが爆発した。
再度生み出された炎の球にクエイクベヒモスが呑まれる。
ジェネラルゴーズの、怒りの叫びが、爆音の中であがったようであった。
かき消されてほとんど聞こえなかったが。
炎が鎮まった時、レイシェル達は見た。
今度こそバラバラになったメタルアントライオンの焼け焦げた残骸を。
その中心で倒れ、煙をあげ、装甲があらかた剥がれた無残な黄金級機の残骸を。
勝ち誇ったマスタージェイドの哄笑が、通信機から響いていた。
設定解説
・Gクエイクベヒモス
猛獣型の黄金級ケイオス・ウォリアー。
魔獣ベヒモスをモチーフにした黄金の鎧に身を包むその威容は、野牛のようでもあり、サイのようでもあり、カバのようでもある。
エンジンに使われた「激振」の神蒼玉により、一定の振動を無限に発生させる事が可能。これを利用した発電機構を搭載しているため、事実上「無からのエネルギー補給」を常時行っている。これにより無尽蔵の再生・回復能力を有する。
同アイテムの力により周囲の大地・大気・エーテルを揺さぶり範囲内の物質を粉砕する武器が「ビッグバンウェーブ」。しかしゴーズは自身の必殺技をトレースさせて撃つ事を好むため、滅多に使わない。
よって攻撃はもっぱら己の内的宇宙エネルギーで両腕から繰り出す光速拳「ストロンガーホーン」で行う。
基礎ステータス(強化改造や装備するアイテムにより、この数値は変化する)
HP:60000 EN:300 装甲:2500 運動:100 照準:180
射 ビッグバンウェーブ(MAP) 攻撃3000 射程・自機中心1―5
格 光弾 攻撃4000 射程1―7
格 ストロンガーホーン 攻撃5000 射程P1―3




