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57 苦難 3

売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。

そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。

敵の刺客となった元騎士団員達に何度も狙われながら、それを退ける二人。

道中で数々の仲間を加える二人だが、そのうち一人はレイシェルの兄の仇であった――!

 ノブ達が出撃した時、魔王軍は視認できる距離まで既に近づいていた。

 巨人兵士Bソードアーミーを始めとする量産型機の群れ。

 その奥にいる巨体は、レイシェルの元婚約者・フレディ――今はマスターナイトと名乗る陸戦大隊親衛隊が乗る改造怪獣メタルアントライオンだった。

 しかし――


『前回と違う!? でかい!』

 明らかに大きくなっている怪獣を見て驚くドリルライガー。

 ノブは敵軍を窺いながら言った。

「体長30mオーバー、サイズは1Lか。それに加えて量産型機も連れてくる編成‥‥ここで決着をつける気らしいな」


 通信機ごしに敵の言葉が漏れ聞こえる。

『レイシェル‥‥今度こそ私の下に戻らせる』

「まだ言ってんのかアイツ。今のお前より下はいねーっつーの」

 ノブの肩でジルコニアが悪態をついた。


「ノブ、やはり私も‥‥」

 不安を隠せずレイシェルが言う。

『レイシェル殿。君に万が一があれば、全ては水泡に帰す。もう封印の地は目の前なんだ。無理はして欲しくない』

 ノブの返事は芳しくない。

「けれど!」

 レイシェルがさらに食い下がっても、ノブは態度を変えなかった。

『マスターナイトが、人間としてはともかく敵としては侮れない事は重々承知。その上で勝つための準備はしてある』


 話している間にも魔王軍は近づく。

 量産型機に混じり、メタルアントライオンも。


「おいおい、初手から突っ込んでくるぞコイツ!」

 呆れるジルコニア。

 ノブは敵を迎え撃つべく、自機Eムーンシャドゥを前進させた。

「レイシェル殿! 修理を重点的に頼む! ライガーは雑兵を食い止めてくれ!」

『了解!』

『わ、わかりましたわ!』

 二人の声が届く。



 アントライオンは真っすぐ突っ込んできた。

 真正面からぶつかるムーンシャドゥ。

 怪獣は前傾姿勢だが、それでもシャドゥより遥かに大きい。元の身長に1.5倍以上の違いがあるのだ。成人男性と六、七歳の幼児がごとき差である‥‥!


 両者の脇を通り過ぎるようにして、ドリルライガーは雑兵の群れへ挑んだ。

 斬りかかり撃ってくる敵へ、ドリルタックルとマシンガンで応戦する。

 後ろへは通すまい、と。


 その後ろにはクラゲ艦CオーウォーとレイシェルのSエストックナイトがいる。

 クラゲ艦はオーガーハーフエルフ・エリカが操艦するものの、なんとか動かせるという程度。

 レイシェルの方も、気力を表す戦意(モラール)が80と表示されていた――機体の足を引っ張る低調ぶりである。


 敵と戦えるのは、実質、ノブ機とライガーの二機だけなのだ。



 激しくぶつかりあう、シャドゥとアントライオン。

『レイシェルは私の物だ! 邪魔をするなあ!』

 怒り狂って吠えるマスターナイト。

 それに応えて大顎を振り回すアントライオンのパワーは、並の量産機など一撃で破壊してしまうだろう。

 その死の嵐の中、ノブは叫んだ。

『いや、お引き取り願おう。ジル! エリカ!』


 途端にアントライオンのパワーが目に見えて衰えた。

戦意(モラール)が、下がってゆく‥‥?」

 怪獣のデータをモニターで見ながら驚くレイシェル。


 一方、艦のブリッジでは。

『頑張ってくれよ、ノブ!』

 そう言いながらエリカが黒いポーションを両手に握っていた。

 それは精神力を回復させるアイテムなのだ。


『クヒヒ‥‥こんなにSP回復アイテムばっか作って、これ後で絶対に余るぞ』

 そう言って笑うジルコニア。

 彼女も同じドリンクを、小さな体で抱えるようにして持っている。


 マスターナイトの気力を低下させたのは彼女達だ。

 二人が敵の戦意(モラール)を低下させるスピリットコマンド【ウィークン】を習得した事を、ノブは確認済みだった。

 そして前回の戦いの後、SP(スピリットポイント)を回復させるアイテムを複数造っておいたのだ。

 敵のパワーを低下させ、上がるはしからまた下げる事ができるように。


『周回ボーナス分がまだあるからCOCPが後で不足する事は無い。なにより――()を惜しんで将来はない!』

 叫んでノブは最強の武器を呼んだ。

『魔王剣!』

 ムーンシャドゥが深紅の魔剣をマントの陰から引き抜く!


 刃が閃き、アントライオンの装甲を切り裂いた。

 大顎と剣が交錯する!

 モニターに両者のダメージとHPが表示されて――


 焦って叫ぶエリカ。

『クッ、ヤバい! 前より遥かにタフになってる!』

 アントライオンのHPは前回の1.5倍、30000に達していた!

 甚大なダメージを受けてなお顎を振り回すアントライオン。


 ムーンシャドゥのモニターに表示される予測被弾率は40%前後だが、これは全く被弾無しで戦える数値ではない。

 そして、下げられてもなおそのパワーは危険な域だった。致命傷だけは避けているものの、HPが危険な領域になる程度にはシャドゥは大顎を食らっていた。


『おいノブ、もっと防御コマンドを使えよ』

 笑い半分焦り半分で言うジルコニア。

 答えるノブの声は落ち着いてはいるが、緊迫もしている。

戦意(モラール)を上げるため、かなり消耗したからな。【SP回復】のスキルありでも常時使うというわけにはいかない』


『レ、イ、シェルウ! 私の!』

 怪獣の中でマスターナイトが吠えた。

 狂気の声で、獣のように。


 その声を前に――

「貴方の、では‥‥ありませんわ‥‥!」

 小さいが、はっきりと。レイシェルは言った。


『!』

 戦闘中でも、その声はマスターナイトに届いた。

 アントライオンの複眼にエストックナイトが映る。


 その凶暴な顔を、レイシェルは自機の中で睨んだ。

「フレディに嫁ぎ、ジュナン家の一員になり、コノナ国の民になろうと、そう誓った未来は‥‥もうありませんの。私は今、自分の家の未来のために進んでいますわ!」

 またも、はっきりと。今度は大きな声で。


『いらん事はやめろ! 私の所に戻れえ!』

 憤怒。マスターナイトが見苦しく荒々しく怒鳴る。

 それに対する返答は――


 レイシェル機が刺突剣を構える。

 力強い動きに、怯えも躊躇いも無い。

「私の未来を! 私がやらないで! 誰がやりますの!」


 剣が魔力を帯び、空気が渦巻く。

 竜巻を纏った剣を、敵に跳び込みながら、渾身の突きを見舞った!


 エストックナイトの新武装【スピンストーム】。

 操縦者の魔力で起動する魔法剣技の一種である。

 レイシェル機の剣がアントライオンの頑強な装甲を貫く!

 モニターが示すレイシェルの戦意(モラール)、最大の150!


 アントライオンが咆哮し、頭部を振り回す。


『なるほど。強化改造しながらエリカが何かいじっていたようだが、その武器か』

 感心しながらノブが魔王剣を構え直す。

『やるぞ!』

 呼びかけるノブ。

「やりますわ!」

 応えるレイシェル。


 二本の剣が怪獣の巨体に突き刺さった。

 装甲はそれを止める事などできず、刃が容赦なく体内まで、奥まで貫く。

 アントライオンは全身を白熱させ、敵を両方焼き払おうとしたが――なおも食い込む刃の前に、光と熱は失せた。

 そして、力を無くし、装甲で覆われた怪獣は、大きな音を立てて地に伏した。

設定解説


・スピンストーム

エストックナイトの新武装。操縦者の魔力で起動する魔法剣技の一種である。

竜巻を刀身に纏わせて貫通力を格段に上昇させ、敵の装甲を刺し貫く。

今に見ていろ邪悪な敵軍、全滅だ。


格 スピンストーム 必要戦意(モラール)120 消費EN40 射程P1-2 攻撃力4600 バリア貫通

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― 新着の感想 ―
[良い点] スピンストーム、秘密の兵器ですな!(笑)
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