50 過去 4
売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。
そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。
敵の刺客となった元騎士団員達に何度も狙われながら、それを退ける二人。
勇者ドリルライガー、元魔王軍の武闘家オウキ、エルフの作業員達を仲間にし、二人の旅は続く――。
姿を現したオウキへ、蔑むような目を老人――マスタージェイドは向けた。
「お前か、マスターウィンド。処刑命令が出ている男がよくもしゃしゃり出て来たものよ」
ニィッ、と笑うオウキ。
「ならばお前の手で処刑してみるか?」
マスタージェイドは「ふん」と嘲る。
「吠えるでないわ。黄金級機の設計図を獲りあい、スイデン国と散々戦ったくせに、命惜しさにその国の貴族に拾われた奴が」
(なんですって!?)
驚愕するレイシェル。
その頭上でジルコニアが肩をすくめた。
「まぁ縁ぎりぎりとはいえ、スイデン国内の砦で拾った奴だからなー。今までスイデン国相手に戦ってたのも想像つくだろ」
「レイシェル‥‥君の故郷の敵だった男と手を組めても、ガデア魔法騎士団の事は、魔王軍に征服された地は知った事ではないと言うのか?」
そう言って恨みがましい目をレイシェルに向ける、元婚約者のフレディ。
だがその視線を遮るかのようにノブが立ちはだかる。
「助けてもらいたいなら、先に詫びるべきだろう。自分達がレイシェル殿を見捨てた事をな」
それを見て、マスタージェイドが苛立ちの混じる声をかけた。
「ノブよ。先ほどの話を聞いても儂らの敵であり続けるのか?」
はっきりと頷くノブ。
「そうだ。そして言っておく。これ以上いくら何を言っても、この答えは翻さない」
「話し合いを放棄したか」
マスタージェイドは深々と溜息をついた。
「レイシェル‥‥君もか?」
そう言うフレディの目は、あくまでレイシェルへ向けられている。
間にいるノブなど目に入らないかのように。
レイシェルは‥‥何も答えなかった。
頭が事態に追いつかず、何を言えばいいのか、どうすればいいのかわからないのだ。
だがフレディにはそんな心情など察する事ができない。
沈黙を前に叫んだ。
「そうなのかぁ!」
怒りと、憤りと、恨みとで。
地面が揺れた!
突然の地震に、好奇や嫌悪の目を向けていた通行人達が驚き叫ぶ。
地震は急速に激しくなり、転倒する者が次々とでた。
そして、広場の中央の地面が赤熱し、それを突き破って巨体が現れる!
「怪獣! 地下から!」
土煙の吹き荒れる中で叫ぶオーガハーフエルフのエリカ。
アリジゴクに手足が生えて直立したような姿だ。
だが全身は鈍色の装甲に覆われ、巨大な牙の間が時おり陽炎のように揺らめく。
そして、その肩の上にフレディが立っていた。彼は前傾姿勢の怪獣の、後ろ首筋へ回り――そこにあったハッチを開けて中へ入る。
怪獣の中へ乗り込んだのだ!
片腕の無い負傷兵らしき男が、怪獣を見上げて恐怖に叫んだ。
「あいつ! コノナ国のレジスタンスを潰して回ってた化け物じゃねぇか!」
恐慌をきたし、広場の人々が我先にと逃げ出す。
その中でレイシェルは叫んだ。
「お爺さん! 貴方がやらせてますの!?」
小馬鹿にしたような笑みを浮かべるマスタージェイド。
「命令を出しとるのは陸戦大隊長ジェネラル・ゴーズの奴じゃが。儂らの軍門に降り、命令を忠実に果たしておるのは奴の意思じゃよ。レジスタンス狩りで多くの手柄を立て、今では親衛隊の地位まで貰っとる」
怪獣がのし歩く。建物を突き崩し、踏み潰しながら。レイシェルの方へと。
レイシェルは、ただ呆然と、それを見上げるばかりだ。
「おい! 逃げなきゃ!」
彼女の肩を揺すってエリカが叫んだ。
はっと気を取り直し、レイシェルは逃げ出そうとした。
その時には、怪獣は目の前に迫っていたが。
その太い腕がレイシェルを捕えようと伸びる――
再び地面が揺れた!
だが今度の揺れは怪獣の動きを止める。操縦しているフレディにとっても、これは予想外の事だったが故に。
地表を貫く二本のドリル。
土中から現れたのはドリル戦車!
『チェインジ!』
かけ声勇ましく、人間型に変形する。
そのままの勢いで怪獣へ肩からぶつかる、勇者ドリルライガー!
怪獣はケイオス・ウォリアーより頭一つ以上大きい。
逆にドリルライガーは頭一つ以上小柄だ。
だが勢いとパワーで、怪獣は後ろへ倒れた!
「ドリルライガー! 来てくれたのか!」
喜び叫ぶエリカ。
ライガーは起き上がる怪獣の前に立ちはだかる。
『地中を移動する巨体を捉えましたので! 奴はなんとか街の外に誘きだします。皆さんはケイオス・ウォリアーをとってきて下さい』
自身が地中を移動できるが故に、ライガーのレーダーは地中を動く物を捉えたのである。
だが、その場に別の巨大な足音が響いた。
大通りを大股で歩いて来るケイオス・ウォリアーが一機。最もありふれた量産型機、巨人兵士Bソードアーミーである。
『まて。奴の相手は私がやろう。ライガー、お前はレイシェル達を艦へ運べ。その方が早い』
その声はオウキの物だった!
怪獣が地下から現れるや、オウキは近くに停めてあったこの機体を取りに走ったのである。
「その機体は?」
そう訊くレイシェルに、オウキはライガーと怪獣の間に割り込みながら答える。
『これからの足として、中古で一機買ってきた。それに手間取ってまだ街から出ていなかったがな』
だがエリカが焦りながら叫んだ。
「でもそれ、武器装備してないぞ!?」
そう、オウキのソードアーミーは素手だ。厳密には“ソード”アーミーでは無いのだ。
しかし、そう言われたオウキは――
『これは作業用だからな。戦闘用は高くて手持ちが足りなかった。だが‥‥機体そのものは戦闘用と同じだ。ならば徒手空拳で戦うのみ!』
そう言って拳法の構えをとる!
核の炎に包まれた世界で磨かれた殺人拳の構えを。
アーミーが跳んだ!
『舞葬琉拳・裂空円斬!』
叫びながら手刀を振り回す。恐るべき刃の風車。
カンフーアーミーと化したケイオス・ウォリアーの手刀が怪獣を打った!
怪獣は仰け反り、咆哮し、後ろによろめく。
だが金属装甲の外皮は硬く、さほどのダメージは無いようだ。すぐに踏ん張って立ち直った。
アーミーのパワーでは致命傷を与えるには足りないのだ。
『皆さん、急ぎましょう!』
ライガーはドリル戦車へ変形した。
彼に急かされ、ノブもエリカもレイシェルもそのコクピットへ跳び込む。
「待たんか!」
一同に制止をかける老人の声。
マスタージェイドだ。声とともに、その右手に魔力の輝きが宿る。
だが老人に金属の刃が飛来した。
マスタージェイドは左手をかざし、淡く輝く魔法の障壁を作り出す。
それに触れた刃はことごとく分解し、消滅した。
【マジック・スクリーン】――攻撃的な呪文を打ち消す魔法の障壁。実際に消せる威力は使用者の魔力により上下する。
だがその間に、ノブ達は皆がドリル戦車に乗り込んでいた。
「マスタージェイド。真偽は師匠に聞けばわかる事。お前の言葉は要らない」
そう言ってノブはドアを閉める。
同時にドリル戦車は地中へ潜った。
残された老人は‥‥ドリル戦車の消えた跡を一睨みすると、怪獣と巨人が戦う振動の中、魔力の輝きに包まれて姿を消した。
設定解説
・今までスイデン国相手に戦ってたのも想像つくだろ
考えれば想像はつくが、レイシェルは全然考えて無かった。
ノブはレイシェルが気にしていないようなので口を挟まなかった。
ジルコニアはノブが何も言わないので黙っていた。
ドリルライガーは正義の心に目覚めて改心したら不問だと考えて過去を問わなかった。
エリカにとっては自分より先にいた奴なので別に気にしなかった。
ただそれだけの事なのだ。




