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46 暗躍 6

売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。

そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。

敵の刺客となった元騎士団員達に何度も狙われながら、それを退ける二人。

勇者ドリルライガー、元魔王軍の武闘家オウキ、エルフの作業員達を仲間にし、二人の旅は続く――。

 暗雲の下に、煤け、ひび割れ、穴の開いた尖塔がある。戦いによって無残に砕かれた尖塔が。

 尖塔だけではない。砦全体が同じような有様だ。はた目には廃墟としか見えないだろう。

 これが以前はコノナ国最強と謳われたガデア魔法騎士団の砦だと、誰が信じるだろうか。


 だがこの砦には、まだ住人がいるのだ。

 叩きのめされた本来の住人達と、それの上に君臨する支配者達が。


 支配者の頂点に立つ男は中庭にいた。

 身の丈2m、黄金の鎧を纏った屈強な大男。

 歳の頃は三十前後か。乱れた灰色の髪と太く荒々しい眉が男の野蛮さを隠す事なく醸し出す。

 凶悪な笑みを浮かべる野獣のような顔の、左目は古傷で縦に切られて潰れていた。

 この男こそ魔王軍陸戦大隊長ジェネラル・ゴーズ。


 ゴーズはバーベルを肩に担ぎ、スクワットを繰り返してトレーニングに励んでいた。

 奇妙なバーベルである‥‥両側についているのがプレートではなく、半透明の結晶なのだ。

 そして庭の片隅には、怪獣・フラッシュハーベスタの残骸が積み上げられていた。

 

 ノブ達が集団で倒したこの怪物を、ゴーズは一人で屠ったのだ。

 自分の道具の部品にするため、ただそれだけのために‥‥。


 部下の老人――マスタージェイドが側にやってきた。

「リュウラとかいう小娘は失敗したようです」


 ゴーズはバーベルを無造作に投げ捨てる。

 それは地面に食い込んだ――いかほどの重量があればそうなるのか。

 ろくに汗もかいていないゴーズは、つまらなさそうに舌打ちする。

「またダメだったか。ま、万が一見かけたら適当に処刑しとけと部下どもに伝えろ」


 (こうべ)を垂れるマスタージェイド。

「そういたしましょう。次は誰を送り込むか、ですが‥‥奴らは魔王軍の艦も手に入れました。そろそろ侮ってばかりもいられないかと」

「ほう。なら、ここらで親衛隊でも使うか」

 そう言ってゴーズは誰を送り込むか考えた。


 そんな二人に近づく足音。

 そちらを見た二人は‥‥黙って足音の主が近づくに任せた。

 足音の主は、側まで来ると踵を合わせて報告する。

「マスターナイト、任務完了して戻りました」


 ゴーズは頷いた。

「で? レジスタンスを名乗っているコノナ国の残党ども、今回はどのぐらい捕まえた?」

 男は冷たい声で答える。

「全滅させました。投降する機会も一度与えましたが、その時に拒否したので」

 それを聞いてゴーズはおかしそうに笑った。

「相手が最後まで戦うってんじゃ、そうするしかねぇわな!」


 ひとしきり笑ってから、ゴーズはその男に訊く。

神蒼玉(ゴッドサファイア)を手に入れるため、レイシェルって女を捕まえなきゃならん。やってみるか?」

「‥‥了解です。やらせてください」

 男は、ほんの一瞬間をおいたものの、やはり冷たい声でそう答える。

 ゴーズは満足げに頷いた。

「殺すなよ。その娘でないと解けない封印が施された神蒼玉(ゴッドサファイア)が一つあるんだからな。もし殺したら――解ける者がいなくなった事を感知して、封印は神蒼玉(ゴッドサファイア)をどこかへ転移させちまうんだったな?」

 そう言ってマスタージェイドの方を見る。


 マスタージェイドは頷いた。

「封印した者としても、神蒼玉(ゴッドサファイア)が永遠に手に入らなくなる事はさけたかったのでしょうな。ただし転移先はその時に無作為に決められます。高山の頂上か、どこかの海の底か、はたまた砂漠の真ん中か。いずれは人の目につき手に触れる――そういう力を有していますので、神蒼玉(ゴッドサファイア)が失われる事はありませぬが。探し出す事は至難の業となるでしょう」


 ゴーズは男へ向き直った。

「そういうわけだ。レイシェルという女さえ生け捕りにすれば、俺達が封印をといて神蒼玉(ゴッドサファイア)を手に入れられる。お前がやるんだ」

「はっ!」

 男は騎士の作法に則った礼を返した。


 だがマスタージェイドは、一人胸の内で思う。

(奴らの戦力は随分強化されてしまった。向かう刺客がこやつ――マスターナイトでは不安がある。ここは一つ、ワシ自ら様子を見に行くか‥‥)



 かつてレイシェルと同じ騎士団、共に戦った味方だった者から、また刺客が一人。

 魔王軍から異形の魔獣を借り受け、再びレイシェルへ魔の手が伸びる……。

設定解説


・いずれは人の目につき手に触れる

神蒼玉(ゴッドサファイア)は7つ揃えて神の武具を召喚するためのアーティファクトなので、本来は一つでも欠けると困る。

よって神は因果律を操作し、決して破壊されずどんな所からでも誰かの手に渡る運命を神宝に与えた。

高山の頂上に持ち去られた事もあったが、5年後に土砂崩れが起きて麓で勇者が拾った。

海の底に投げ込まれた事もあったが、50年後にアンコウの腹から出てきて高司祭の手に渡った。

砂漠の真ん中に放り出された事もあったが、5日後に砂嵐に巻き上げられて50キロ離れた町の若奥さんに拾われた。

この世に邪悪が蔓延る時、必ずやどこかに現れるのである。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 掴もうぜ、ゴッドサファイア! [一言] マスターナイトの正体は、まさか……?
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