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45/114

45 旧敵 7

売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。

そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。

敵の刺客となった元騎士団員達に何度も狙われながら、それを退ける二人。

勇者ドリルライガー、元魔王軍の武闘家オウキを仲間にし、二人の旅は続く――。

 クラゲ艦には着陸する機能は無いが、乗員が乗り降りするための昇降装置を下ろす事はできる。

 戦闘が終わり、エルフ達は斜面を降りて来た。

 その中にはオーガハーフエルフの娘・エリカの姿もある。


「今日はありがとう。おかげで助かりましたわ」

 レイシェルも機体から降りて礼を言った。

 エリカが笑いながら頭を掻く。

「へへ、照れるな」


 二人がそんなやりとりをしている間にも、エルフ達は戦場跡を漁っていた。

「おーい、アイテムを回収してきたぞ」

 複数の大八車に資材を積んで戻って来るエルフ達。


 彼らと共にノブも戻って来た――機体を降りて、マイリヤカーを牽いて。怪獣が燃えていた地点から。

 リヤカーには当然資材が積まれている。


(あれだけ爆発して燃えたのに、まだ使えますの?)

 戸惑うレイシェルの前にノブは来た。

「ファティマンだ」

 そう言ってリヤカーを指さす。

 資材の中に腕組みして正座している人影があった。


 全身銀色の全裸。筋骨隆々とした逞しい体だが、性別を表す特徴は無い。

 頭は楕円形のフードを被り、巨大な弾頭のようだ。

 人影は「ウス」と呟き、頭を下げた。


「‥‥これが強化パーツ?」

 しばらく固まっていたレイシェルは、絞り出すような声で訊く。

 頷くノブ。

「ああ。ファティマンは演算や伝達、各種コントロールを補助するために造られた人造人間だ。ケイオス・ウォリアーの制御回路に接続する。それにより運動性・照準値・移動力・射程と多岐に渡って補強される、最高峰の強化パーツだ」



「強化パーツといえば【ブレイブドライバー】もだ。よくあんな強力な物を持っていたな」

 ノブはエリカに話しかけた。彼女は「へへ」と得意げに笑う。

「フォンバシの街を出る時、やっぱ不安だったからさ。勇気だけは忘れないようにって、皆で造ったんだ」

「皆?」

 聞き返すレイシェルに、答えたのは大八車を牽いてきたモヒカンエルフの一人だった。

「オレら、店ごと街を出たんだよ。店長はエリカを引き取った両親だぜ」

 艦の修繕を頼んだ業者は、エリカの両親が経営する店だったのだ。

 実は従業員の大半も親族なのである。


 そこへ緑色のローブを纏った、長身痩躯のエルフの美青年がやってきた。

 レイシェルの持つイメージ通りの“エルフ”である。

「性根まで魔物ならともかく、ウチの娘はそうではありませんからね。それを悪し様に言われて我慢するなら、店を移転させた方がいいと判断したんですよ」

 柔和に微笑みながら、そのエルフは言った。


 彼がエリカの養父で店長のようだ。

 彼の言葉に、レイシェルは故郷の母を思い出した。

「きっと‥‥その判断は正しいと、そう思いますわ」

 そんな言葉が出たのもそのせいかもしれない。


「なあ養父(とう)ちゃん。レイシェル達、艦を動かす人手が無くて困ってるみたいだ」

 エリカが――何かの期待をこめて――言う。

 店長は「ふむ」と呟き、レイシェルに話しかけた。

「レイシェルさん。艦を動かす人手が足りないなら、ウチの従業員を半分貸しましょうか?」


「ええ!? 危険な旅ですわよ?」

 驚くレイシェル。

 しかし父エルフは優しく笑う。

「今のご時世、本当に安全な所などありません。いつも仕事があるわけでもない。長期契約してもらえるなら店としても悪く無いのですよ。まぁ無理にとは言いませんが」


 それを聞き、エリカは大声をあげた。

「あたしは行きたい! レイシェル、雇ってくれ!」

 彼女はレイシェルの事を随分気に入ってしまったようだ。


 当のレイシェルはといえば、戸惑い困るばかり。

(私は、私の家のために危険をおして旅をしていますけど‥‥人手が欲しいからといって、民間の業者さんをつき合わせていいんですの?)


 その側で、ノブはメガネをくいくい弄りながら「ふむ」と呟く。

「あれほどのレアパーツを造る腕があるなら、技術力は確かだな。荒事にも慣れているようだ。資材回収も手伝ってもらえれば助かる」

『ノブさんだけで戦利品を回収していましたからね。知識と技術がある人が増えるのは悪い事ではありません』

 側で聞いていたドリルライガーも膝をついてそう言った。


 それでもレイシェルはためらっている。

「でも、魔王軍との戦いになるわけですし‥‥」

「わかった上で言ってるよ、あたしらは!」

 エリカは大声で食い下がった。


 その光景を前に、ドリルライガーが――どこか嬉しそうに――提案する。

『彼らの勇気を信頼してみてはどうでしょう?』


 まだしばらく、レイシェルは迷っていた。

 しかし期待をこめた目で真っすぐに自分を見つめるエリカを前に、やがて「ふう」と溜息をつく。

「わかりました。よろしくお願いしますね」


 エルフ達から歓声があがった。

「よーし、さっそくやるぞ! ファティマンをレイシェルの機体に装備だ」

 一番喜んでいるのは、もちろんそう叫んだエリカだ。

 リヤカーの上で腕組みしたままファティマンが頷く。

 レイシェルだけは、ちょっと困った顔をしていた。

設定解説


・ファティマン

ケイオス・ウォリアーの強化パーツ。

制御回路に接続し、演算、伝達、各種コントロールを補助する。

精密で機敏な動きを補助するためのアイテムへの需要と、多様な状況への判断力を共に求めた結果、「いっそそれ専用のサブパイロットがいればいいんじゃないか?」という事になり、それが発展して「その仕事をやるための野郎を人工的に作ろう」と考える変人が現れた。

変人なりに頑張ったので最高峰の強化パーツが完成。

高度な知能と物静かな性質を持ち、電力でエネルギーを供給するので食事は不要。

運動性・照準値+20、移動力・射程+1。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いや、確かに「マン」なら男でしょうが、「ン」1字でここまで印象が変わるとは……(笑)。
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