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43/114

43 旧敵 5

売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。

そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。

敵の刺客となった元騎士団員達に何度も狙われながら、それを退ける二人。

勇者ドリルライガー、元魔王軍の武闘家オウキを仲間にし、二人の旅は続く――。

 係留された艦からレイシェル達はケイオス・ウォリアーで出撃し、ドックの外へ。

 山の斜面を登って来る魔王軍の機体を発見する。

 斜面を駆け上がって来るのは狼男のような狗頭の機体、Bダガーハウンド。

 それらの後ろには異形の巨体が一体、輝きを放っていた。


 ごつごつした結晶の塊から、苔に覆われた八本の節足が生えている。

 水晶の原石を体にしたザトウムシのようだ。


『ふむ。また奇怪な怪獣を連れて来たな。今度はどんな能力で攻めてくるのか‥‥』

 ノブの呟きを聞き、ドリル戦車形態のライガーが返信する。

『自分が先ず敵を食い止めて様子を見ます』

 そう言って人間型に変形すると、ノブとレイシェルの機体より前に出た。


 ドリルライガーの後ろで身構えながら、レイシェルはふと気づく。

「ねえ、あの怪物‥‥体の中に何か入れてませんこと?」

 透き通った体の前面――その中で金属の光が見える。


 モニターをアップにすれば、金属の人形が腕組みしているかのようなオブジェに見えた。

 ただ頭部は弾丸を直立させたような、のっぺらぼうではあるが‥‥。


 ノブも同様にモニターで拡大していたが『む!』と唸る。

『ファティマンか!』

 首を傾げるレイシェル。

「何ですの? それ」

『強化パーツの一種だ。運動性と移動力と射程、いくつもの能力が同時に上がる最高級品の一つ。大昔から最も貴重な強化パーツとして知られている。こんな物を持ってきたのか』

 ノブの説明だとかなりレアな物という事になる。


 それを聞きつけて入って来る通信があった。

『魔王軍の大隊長が、好きな物を適当に持って行けというから貰って来た。何を貰うかは報告してないけど』

「リュウラ!?」

 声の主がどこにいるか、レイシェルは機体の目で周囲を見渡す。

 魔王軍部隊の一番奥に、岩場の影から合流する機体があった。

 これまでの元騎士団員が乗っていたのと同じ、巨人兵士Bソードアーミーの強化型であった。


 地上での移動力に優れたダガーハウンド達が殺到する。

 それをドリルライガーとノブのEムーンシャドゥが食い止めた。

 激しく激突する両軍。


 そこへ怪獣も近づき、結晶のような体から光線を撃ちだす!

 撃ち抜かれるドリルライガー。だが大きなダメージを食らいながらも、反撃のマシンガンを撃ち込んだ。


 しかし――怪獣の体は弾を受けて欠けると、徐々に結晶が再構成されて元に戻っていく!

『む? この怪獣、再生能力を持っています!』

 ドリルライガーが叫んだ。


 食いついて来るダガーハウンドをエルボートリガーで叩きのめしながら、ノブはライガーの交戦記録から敵のデータを作成する。

『能力が判明したぞ。こいつは‥‥』


 怪獣・フラッシュハーベスタ。

 そこに映し出された能力は‥‥HP回復(小)、さらに武器欄に周囲攻撃型のMAP兵器!


 しかしノブは動じない。

『再生能力とMAP兵器持ちか。だがHP回復は小だから押し切る事はできるだろう』


 しかし、リュウラからの通信が割り込んできた。

『その前に一つ教える。その怪獣フラッシュハーベスタはHP50%以下で撤退するようにしてあるから』

「え!? それは、こっちが助かりませんこと?」

 驚くレイシェル。

 彼女らには無理に敵を倒す必要は無いわけだが――


 しかしリュウラは言った。

『撤退させると強化パーツは取り損ねるから』


『なるほど。迂闊にダメージを与えられず、回復能力のせいでHP調節もし難い。かといってもたもたしているとMAP兵器で一掃されるというわけか。なかなか厄介だな』

 ノブも納得したようだ。


「え? いや、アイテムなんか気にせず追い払えばいいだけじゃ‥‥」

 レイシェルにしてみれば、レアアイテムが手に入らなくても別に大きな問題ではない。

 だがリュウラは納得しないようだ。

『獲りにいくでしょ? 普通』

「いや、そう言われても‥‥」

 困るレイシェル。

『諦めたらそっちの負けだから』

「え? なんで?」

 謎のルールを押し付けてくるリュウラに、レイシェルはますます混乱するばかりだ。


 なおレイシェルが聞いた事がなくても、世の中にはレアアイテムを取り逃がしてはいけないというルールで生きている人はいる。

 もちろん強制力は無い。

 よってレイシェルには知った事ではない、のだが――


『話は聞かせてもらった。苦戦しているようだな。だが()()もここからは戦わせてもらおう』

 通信が入る。その声はオウキ。

 そして郊外ドックの天井が開き、クラゲ艦が空へ舞い上がった!


『Cオーウォーが動いております!』

 驚くドリルライガー。

『レイシェル! あたし達も手を貸すよ!』

 さらに通信に割り込む声は、エルフとオーガのハーフ娘・エリカだ。

 それに続いてエルフ作業員達の荒々しくも陽気な叫びが続く。

『いくぜぇ!』『ヤるぜぇ!』『ヒャッハー!』


「エリカ? エルフの皆さんも‥‥」

 意外な助っ人に驚くレイシェル。

『貴族の娘だからって、アンタにアヤつけるようなマネしちゃったからさ。あたしらにも手伝わせてくれよな!』

 そう応えるエリカの声は、少し照れが混じっているようで、しかし嬉しそうな響きがあった。


 クラゲ艦・Cオーウォーは戦場へ乗り込む。

 ノブ機ムーンシャドゥ、レイシェル機エストックナイト、そしてドリルライガーの三機により、魔王軍のダガーハウンド達は既に数を半分ほどに減らしていた。

 そこへ漂い流れ着くと、クラゲ艦はその長い触腕を勢いよく振り回す。

 だが力任せに振るっているのではない。腕に覚えのある者が見ればわかろう、それは拳法による打撃なのだ!


 鞭打たれたダガーハウンドが吹っ飛び、山肌に叩きつけられる。

 拳の鋭さと巨大な質量があわさり、侮る事のできない威力を有していた。


『‥‥うっざ。邪魔』

 形勢が明らかに不利になり、リュウラの声に苛立ちが混じる。

 対してオウキの声は余裕の笑みを含んでいた。

『フッ。最低限の整備はしてもらった。艦を満足に動かすだけの人員もいる。流れは‥‥こちらにあるようだな!』

設定解説


・フラッシュハーベスタ

この世界のモンスター・ザトーイチボームシの亜種。

体が結晶状になっており、とても生物には見えないが、魔法やスキルで能力を調べると「虫系」と表示されるので虫系モンスター。

例によって魔王軍活動後に発見された種であり、魔王軍の生体兵器としてしか目撃されていないので、やはり品種改良された物だと思われる。

結晶状の体から熱光線を撃ち、敵を攻撃する。これ以外の攻撃方法は持たないのだが、収束させた「光線」として単体を撃つ事も、自分を中心とした「熱波」として周囲を焼き払う事もできる。


基礎ステータス(強化改造や装備するアイテムにより、この数値は変化する)

HP:20000 EN:200 装甲:1500 運動:90 照準:150

射 高熱波(MAP)  攻撃3000 射程・自機中心1―4

射 破壊光線     攻撃4000 射程1―6

HP回復(小)

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