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36/114

36 敗者 5

売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。

そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。

敵の刺客となった元騎士団員達に何度も狙われながら、それを退ける二人。

ついに三人目の仲間・勇者ドリルライガーを得て、二人の旅は続く――。

 空中の敵を撃ち続けるドリルライガー。量産型機を1~2機仕留めたものの、敵の攻撃でダメージは蓄積されてゆく。

 だがそれ以上に深刻なのは、残弾が尽きそうな事だ。

(飛び跳ねてぶつかり続けるしかないのか? それでどこまでやれるか‥‥)

 懸念するライガー。


 だが空に浮くカツオノエボシから、EムーンシャドゥとSエストックナイトが跳び出してきた!

 二機はライガーのすぐ側に着地する。

「待たせてすまない。ここからは僕らも戦う」

 そう言ってノブは不可視の()を放った。それはライガーへと飛び、その機体に作用する。


 スピリットコマンド【サプライ】。

 機体のEN(エネルギー)と武器の残弾を最大まで回復させる効果がある。

 そしてこれは味方の機体に使う事も可能なのだ。


『助かりました! 空を飛ぶ敵はどうも苦手なんです』

 故郷では技の勇者(航空機ばかりが合体するチーム)が空中戦を担当していたのだ。

 ともかくライガーは改めて敵へ向き直った。


 三機は空へと攻撃を撃つ。

 ムーンシャドゥのビーム、エストックナイトの攻撃魔法、ライガーのマシンガン。

 空は飛べるが脆さのある敵機・Bボウクロウは三機の斉射で次々と撃墜されていった。


 しかし、怪鳥だけはその弾幕をものともせずに衝撃波を吐き続ける。

 攻撃しながらの飛行、その進路上にはエストックナイト。敵へ狙いをつけているため移動できない‥と思いきや。

 ドリルライガーが怪獣の進路に入った。当然、衝撃波の狙いはそちらが優先される。

 巨体からの衝撃波を食らい、全身に打撃を受けるライガー。

『ドリルライガー!?』

 叫ぶレイシェルの前でライガーが地面に叩きつけられる。


 だがライガーは立ち上がって来た。

『大丈夫ですよ、レイシェルさん。それより、今一番敵に打撃を与えられるのは貴方です。せめて攻撃は私が引き受けます』


 三機の中で最強の射撃武器は、エストックナイトの攻撃魔法・ディープフリーズである。

 各機のモニターに表示される、怪鳥‥‥バルーンフリゲーターのHPはこれまでの敵で最大の15000。撃破するには大きな火力が無くては厳しい相手だ。


 喉を丸く膨らませる怪鳥を見上げ、ノブが呟く。

「奴を地面に降ろせればな‥‥」

 そうなればムーンシャドゥとライガーの最強武器を叩き込めるのだが。


『やってみるか』

 その通信は、クラゲ型艦・Cオーウォーから入った。

『オウキ!?』

 機体を振り返らせたレイシェルは、ナイトの目でクラゲ型艦を見た。

 それのもつ触手が数本ずつ束ねられ、長い二本の腕となって奇怪な構えをとっているのも。


「ほう? カラテ‥‥いやケンポーか。触手で腕を再現するとは、かなりの使い手だな」

 ノブの言葉にオウキは『フッ』と笑う。

『私のいた地球は核の炎で文明が崩壊した暴力の荒野。乱世に試合の拳法など何の役にも立たん。力と成りうるは、千変万化に適応する戦場の拳!』

 その言葉には、酔っぱらっていた時とはまるで別人の力が漲っていた。

舞葬琉拳(まいそうりゅうけん)・落天乱鞭!』

 宙を浮き怪鳥へと前進するクラゲの触腕が、高々と振り上げられて振り回される!


 怪鳥は衝撃波を吐いた。

 艦は触腕を叩きつけた。

 互いが互いを撃ち、もつれあいながら、巨大な怪鳥とより大きなクラゲは地面へとゆっくり落ちる。


 地響きが周囲を揺らした。

 怪鳥は地面に尻餅をつき、クラゲ艦は傾いた状態で着地している。

 そして双方、結構なダメージを受けていた。


 オウキが言っていた通り、艦を一人で操作するのは無理がある。

 攻撃こそできたものの、防御も着地もこなせた物では無かったのだ。結果、怪鳥の攻撃をまともに受けながら地面に叩きつけられてしまった。


 だがそんな状態でも、クラゲ艦は怪鳥に触手を巻き付けて捕えている!

『大丈夫ですか?』

 案ずるライガーの声に、艦からオウキの返事がとぶ。

『お人好しの多い事だ。私の生き死により敵を討とうと思わんのか』

 そう言いながら、触手はますます怪鳥を締めあげていた。


 ムーンシャドゥが動いた。

「一理ある。やらせてもらおう‥‥魔王剣!」

 ノブの声と共にシャドゥが剣を抜く。

 深紅の刃を輝かせて跳ぶムーンシャドゥ。叩きつけるように振り下ろした剣は、バルーンフリゲーターの巨体を深々と切り裂いた!

 怪鳥が苦悶の声をあげる。


 ドリルライガーも走った。

『続きますよ! ドリルチャージッッ!』

 言って変形、ドリル戦車形態に一瞬で変わり、そのまま突進。

 二本のドリルを高速回転させ、巨大な錐と化して敵に突き刺さる!


 だがそれでも怪鳥は生きていた。咆哮しながら身を捩り、翼を羽ばたかせて暴れる。

 強烈な攻撃を二度も受けた反動で、その身を縛っていたクラゲ艦の触手がいくらか緩んでいた――それが幸いし、巨体がついに戒めから脱出する。

 怪鳥が再び空へ舞い上がった。


「ヤロウ、しぶといな」

 ノブの肩で悪態をつくジルコニア。

 そこへレイシェルの声が続く。

『ならばトドメですわ! 【水冷の領域、第五の段位。冷気は存在そのものを冷却する。凍結した敵は砕け散る】――ディープフリーズ!』

 渾身の水冷領域攻撃呪文を放つエストックナイト。氷嵐が渦となって敵を包み、全身を凍らせた。

 苦し気な呻き声をあげ、怪鳥は地面に落下する。

 大地に激突し、凍った体の各所が砕けた。

 そのまま大地に伏し、二度と動かなくなる。



――魔物を倒し、一行は艦へ近づいた――



『ちょっと、大丈夫ですの!?』

 艦のブリッジーー膨らんだ浮袋部分の中だ――へ呼び掛けるレイシェル。

『それは艦の事か。それとも私の事か』

 すぐに返事がきた。少し呆れたような、少し楽しそうな。

 オウキへと今度はノブが通信を送る。

「両方だな。艦もそれを動かす人員も欲しかったところだ」

設定解説


・バルーンフリゲーター

この世界のモンスター・ジャイアントグンカンドリの亜種。

笠にしか見えない鶏冠が特徴。例によって魔王軍活動後に発見された種であり、魔王軍の生体兵器としてしか目撃されていないので、やはり品種改良された物だと思われる。

鳴き声が変化したと思われる衝撃波を吐くが、最大の武器は肥えた体で敵を圧し潰す肉弾戦法。

一応肉は食用になるが、味も栄養価も安物の鶏肉よりさらに一ランク落ちる程度しかない。


基礎ステータス(強化改造や装備するアイテムにより、この数値は変化する)

HP:15000 EN:200 装甲:1400 運動:90 照準:150

射 衝撃波    攻撃3500 射程2―6

格 ボディプレス 攻撃4200 射程P1―1

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― 新着の感想 ―
[一言] 出身がそういう世界ですかい。 そりゃ拳法家でも絞め技もあれば、敵の飛び道具を受け流す技もありますわな。 ……実体弾なら触手で投げ返す技とかありそうな(笑)。
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