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37/114

37 敗者 6

売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。

そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。

敵の刺客となった元騎士団員達に何度も狙われながら、それを退ける二人。

ついに三人目の仲間・勇者ドリルライガーを得て、二人の旅は続く――。

 戦いは終わった。

 息絶えた怪獣や壊れた魔王軍の機体を尻目に、クラゲ艦は再び宙に浮く。


『なるほど。これで運んでもらえるならずいぶん楽になります』

 話を聞いたドリルライガーは艦を見上げて嬉しそうに言った。

 その横で、自機の中で頷くノブ。

「戦闘に制限はあっても、操縦できる事はできる。それは先ほど証明してもらったばかりだ。今後はこれを足にしよう。まぁこの艦に足は無いが」


 艦を浮かせて安定させると、オウキは降りて外に出た。

 ノブとレイシェルも機体から降りる。


「オウキと言ったわね。貴方もこれからは心を入れ替えて魔王軍と戦うんですのよ」

 レイシェルが言うと、オウキはため息混じりに肩をすくめた。

「俺を使うつもりか」

 宙に舞いながら彼を見下ろすジルコニア。

「嫌もおうも無いだろ。お前、魔王軍に戻ったら殺されるじゃねーか」


 オウキは‥‥自嘲気味に、笑った。

「だからといってお前達の役に立つかどうかは別だろう。俺は魔王軍で人間国家と散々戦った男だぞ」


「だからこそ、心を入れ替えて生き方を変えればいいじゃありませんの?」

 レイシェルのその言葉に、オウキは皮肉めいた笑みを浮かべ、他人事のように言った。

「己が殺されるのが嫌で掌を返す事を、心を入れ替えると言うのかな?」

 レイシェルはむっと眉を寄せる。

「だったらここで殺されるまで腐ってお酒浸りになってるつもりですの? 本当にそれが貴方の望み?」


 言われたオウキはうんざりした顔を見せた。

「俺がどれほど惨めに終わろうと、そちらの知った事でもあるまい。負け犬がくたばったら息ができなくなる呪いにかかって困っているのなら、少しは考えんでもないが」


 レイシェルは言葉に詰まった。

 しばらくの間、頭を掻いたり、歯軋りしたり、顔を真っ赤にしていきんだりしたものの‥‥やがて息を吐いて少しは落ち着く。


「苛々するんですの」

 何やら取り乱した割には静かな声で、レイシェルはそう告げた。

「他人に聖人君子たる事を求めるあんたが悪い」

 オウキはそう言い、面倒くさそうな視線をレイシェルへ向ける。

 彼女はキッときつい視線をオウキヘ返した。


「そんな物、求めてませんわ。私だって、この旅を始めた理由は私の家を没落から救うためです。完全に私情ですわ。でも、落ちる者は負けていなければならないなんて、そんな決まりはないですの。いえ、もしあっても従いません! 私の希望に私が手を伸ばさないなんてありませんわ」


 言われたオウキは呆けた顔を一瞬見せた。

 が、すぐにまじまじとレイシェルを見つめる。

「それで負けて酒に逃げている腰抜けを見ると腹が立つわけか。自分も諦めていればこんな物だったろう、と感じてな」

 そして笑い出した。最初は小さく――

「こんな勝手な話があるとは」

 そう言ってからは抑えようともせず、大声で。


 笑われながらも、レイシェルは訴えるように言う。

「ええ、勝手で我儘ですわ。確かにお馬鹿過ぎて通じるわけがない。口にして改めて無駄だとわかりましたけど、それでも‥‥言うだけ言わないと気が済みませんの!」


 そのすぐ後ろで、ドリルライガーが膝をついた。

『自分も勝手で言わせてもらいますが。始めた理由が私情だろうと、やる事が世のため人のためになるなら別にいいと思います。正しい事をやるのに必要な資格などこの世には無い、というのが自分の考えです」


 ノブもメガネをくいくい弄りながら口を開く。

「僕も勝手で言わせてもらおう。僕らは魔王軍に対抗するための黄金級機(ゴールドクラス)を得るべく、神蒼玉(ゴッドサファイア)探求の旅をしている。これに協力するという事は、あんたが将来生き延びる確率を上げる事に繋がると思うがな」


 オウキは――なぜか、妙に楽しそうだった。

「勝手の洪水だな。悪の軍勢と戦う勇者様方なら、大義だの道理だので自分の言い分を通そうと、そして従わせようとするのが普通ではないのか」

 宙で翅をはばたかせ、ジルコニアが訊く。

「そうだとして。それで、どうするよ?」


 オウキは笑うのをやめた。

 ゆっくりと一行を見渡す。

「大義だの道理だので理屈をこねるなら付き合う気は無かったが。お前らみたいな勝手な奴らが俺に来いというなら、俺にもなにがしかの使い道があるのだろう。気が向いている間は使われてみるか」

 そう言ってから、崩壊した砦へ目を向けた。

 もはや瓦礫の山と成り果て、全ては埋もれてしまっている。


「あのザマでは、どうせ酒も残っておらんだろうし‥‥な」

設定解説


・艦を浮かせて安定させると

移動しないなら、小さなエネルギー消費で長時間浮遊していられる設定。

この艦は着陸して地面を歩く機能は無いので、陸上で待機するなら浮いている必要がある。

地形適応は「空/水」で陸だけ無いタイプ。

間違って陸地で予備含めて全エネルギーが枯渇すると、長々と大地に伸びてその場で粗大ゴミと化す。

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― 新着の感想 ―
[一言] どう考えても艦載機はド□ーメ(ラ○ディーンの雑魚敵としてスパ□ボでも気合上げの良い材料になってくれるアレ)が似合いそうでしょうがない(笑)。
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