35 敗者 4
売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。
そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。
敵の刺客となった元騎士団員達に何度も狙われながら、それを退ける二人。
ついに三人目の仲間・勇者ドリルライガーを得て、二人の旅は続く――。
「く、クソッ! 制御できなくなっちまっただろうが‥‥」
ジルドが床を眺めながら絶望して呻いた。
そこには砕けた指輪が転がっている。ジェネラル・ゴーズから借りた、怪獣を制御するためのアイテムが‥‥!
混乱した兵士に斬られた時に壊れたのだ。
狂暴な咆哮とともに、砦がさらに揺れた。壁が崩れて狂気に陥った兵士達を圧し潰し始める。
そこに至り、ノブ達にも何が暴れているのか大体理解できた。
「急いだ方が良さそうだ」
そう呟き、ノブはレイシェルの傷へ指先をかざす。青い光の粉が舞い――傷は見る間に塞がった。
【ヒール・ウーンズ】――専門の回復職ほどでは無いが、超能力系呪文にも負傷を癒す呪文はある。本来はさほど強力な回復力は無いが、それも術者の魔力が大きければ話は別だ。
「あらまぁ、ありがとう」
深手ではなかったとはいえ一瞬で治癒されたのを見て、驚きながらもレイシェルは礼を言う。
その一方、ジルコニアが呆れた眼差しで元魔法騎士のジルドを見下ろしていた。
「怪獣を外に置いて入ってきても、お前、ここでやられるだけじゃん」
ジルドは途方に暮れて呻く。
「そこらへんは細かく操作するつもりだったんだよ!」
「アホやこいつ」
ジルコニアは宙で肩を竦めた。
そうしている間にも建物は揺れ、ついに天井が崩落し始めた。
空が覗くほど大きい穴から、巨大な鳥の顔が見える。大きな球に埋もれるかのような顔が。喉を膨らませたグンカンドリのようだが、頭を大きな傘で覆っており、睨むような目以外は顔のほとんどが隠れている。
「ブサい鳥だな」
ジルコニアは顔をしかめつつ、落ちてくる天井を避けて飛んだ。
瓦礫は満足に動けない残りの魔王軍兵達を容赦なく圧し潰した。その中には――ジルドも含む。
「うわあぁぁ!」
断末魔をあげ、瓦礫に全身を打たれ、ジルドは動かなくなった。
だが部屋の中でいくら逃げても限界がある。ノブ達はなんとか部屋を出ようとした。
しかし揺れる建物、落ちてくる瓦礫の中ではなかなか上手くいかない。だからといって時間とともに事態は悪化するだけだ。
そんな中、揺れは急に止まった。
逆に外の化け物鳥からの咆哮は激しさを増す。
何が起こったのか、ノブ達にはすぐにわかった。
『やらせんぞ!』
勇ましい声とともに弾を撃つ音。強く叩く音。
怪獣と戦っている勇者の姿が崩れた壁の穴からちらと見えた。
「ドリルライガー!」
歓声にも似た声をレイシェルはあげた。
しかしドリルライガーは上空からの攻撃を受け、防戦気味になる。
化け物鳥は喉を大きく膨らませると、上空から衝撃波を吐いた。
さらに飛行タイプの量産型ケイオス・ウォリアーまで数機おり、ライガーを弓矢で射る! ジルドが連れて来た兵士は砦の中に入ってきた者が全てでは無かったのだ。
上空からの射撃に持ち前の装甲で耐えるライガー。
だが空へは格闘武器の威力は半減する。ライガーに飛行能力は無い。短時間なら跳躍と推進力を組み合わせて空中戦ができなくは無いが、格闘武器の精度はやはり落ちる。
そしてライガーは格闘戦の方が得意‥‥言い換えれば射撃は不得手なのだ。両腕に内臓したマシンガンで対抗はしているものの、やはり圧されている。
「いかん。不利だ」
「私達も機体へ戻りませんと!」
ノブとレイシェルは今のうちにと部屋を飛び出した。
酔っ払いも二人と同時に飛び出し、そして呼びかける。
「戦う気ならこちらへ来い」
そう言うと返事も待たずに通路の奥へ走り出した。
ノブとレイシェルは顔を見合わせるが――
「ああ言うなら、何か考えがあるんじゃないかしら」
レイシェルの言葉にノブは「うむ」と頷く。
二人は酔っ払いの後を追った。
――砦の外で苦戦するライガーは――
カラス獣人型の量産型機・Bボウクロウからの矢を叩き落とすライガー。
彼は背後に振動を感じ、身を守りながら後ろを見た。
砦の一部――そこに開口部があった――が開き、中から巨大な物が出てくる。
『おお? なんだありゃあ』
驚くライガーの前で、巨大な薄青いバルーンが空に浮いた。下に複数のブロックと長い触手を垂らして。
よく見れば人造の装甲版であちこちが補強されている。これはカツオノエボシ型の浮遊艦なのだ。
奇怪な艦から通信が入った。
『ドリルライガー! 防戦しながら着いて来てくれ』
『ノブか! 了解!』
事態は把握できないが、仲間からの指示なら信用できる。そうライガーは判断し、マシンガンを空の敵へ撃ちながら後退する。浮遊感の後を追うように。
艦のブリッジでは酔っ払いが中央の座席に座り、天井から伸びる二本のレバーを握っていた。
「なにせ俺一人だから上手く動かせん。戦闘はそちらがケイオス・ウォリアーでやるしかない」
そう言いつつ、ノブとレイシェルの機体が隠されている場所まで艦を進める。
木陰に立たされた二機を見つけると、レバーを握る手に気を籠めた。
艦の長い触手が二機の巨人を掴み、バルーンの下のブロックへ器用に収納する。
後は艦内の格納庫で乗り、出撃するだけだ。
走って戻り、敵の攻撃の中で乗り込む事を考えれば、早さも安全性も天地の差がある。
「十分ですわ。ありがとう、ええと‥‥お名前は‥‥」
礼を言うレイシェルに酔っ払いは名乗る。
「舞葬琉拳のオウキだ」
レイシェルは微笑み、頷いた。
「ではオウキ、危険ですから艦は下げていてくださいな」
ノブとレイシェルはブリッジから走り出る。
それを見送りつつ、酔っ払い――オウキは呟いた。
「下がれ、か。さて‥‥」
設定解説
・Bボウクロウ
青銅級の鳥空型ケイオス・ウィリアー。黒い鳥の頭と翼を持ち、弓を標準装備している。
当然のように飛行能力を有しており、目標地点まで迅速に移動し空中から飛び道具で攻める事ができる優秀な量産機。
だが軽量化のため装甲は薄く、武器もあまり大きくできないため、攻撃・耐久両面において性能は低め。強力な射撃武器の前には脆さを見せる。
また空中戦の得意なゴブリンやオークはあまりいないため中々操縦者の数を増やす事ができないという、機体が悪いわけではない短所もある。
基礎ステータス(強化改造や装備するアイテムにより、この数値は変化する)
HP:4000 EN:170 装甲:1200 運動:95 照準:145
格 ダガー 攻撃2500 射程P1―1
射 ロングボウ 攻撃2600 射程1―5




