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あけましておめでとうございます。

新年もこの物語におつきあいいただければ幸いです。


だが世間がいかにめでたくともノブとレイシェルの戦いは続く。

 Eムーンシャドゥが抜いたのは、一振りの剣だった。

 金のグリップに金のナックルガード。半ば透きとおった深紅の刃。


「魔王剣……!」

 操縦席でノブが剣の名を言い放つ。

 ノブの戦意(モラール)が130まで高まる事で使える、ムーンシャドゥ最強の武器。

 それは遠い昔の魔王が使っていた剣を模して作成された物なのだ。


 剣はムーンシャドゥから膨大なエネルギーを吸い上げる。その量に比例し、剣にパワーが満ち、妖しい輝きを放ちながら切れ味を増した。

 剣に渡すだけのエネルギーは今のシャドゥには十分にある。操縦者がノブである以上、定期的に補充されて尽きる事は無い。戦闘の最中(さなか)であろうとも。


 ENを回復させるスピリットコマンド。

 それによる戦意(モラール)の低下を補うスピリットコマンド。

 それらの激しいSP消費を時間と共に回復させるスキル【SP回復】。

 伝説の大賢者の最新の弟子は、最強の霊能者(サイオニック)となるべく鍛えに鍛えられた精神力により、それら全てを身に着けた、おそらく地上で唯一人の男なのだ。


 剣を握り、シャドゥは怪獣アシッドワームへ跳んだ。

 振り下ろされた刃は、怪獣の皮膚を容易く深々と切り裂いて食い込む!


 怪獣は苦し紛れに尻尾を振り回した。

 だがシャドゥは機敏に刃を引き抜き、怪獣の攻撃を避けるや、再び剣を振るって敵の身を断つ!

 斬れた肉が塞がろうとするが、深い傷を埋めきれず、次の斬撃でより傷つく。

 それでも怪獣はなんとか太い腕でシャドゥを掴み、抑え込もうとした。


 が、逆にそれが命取りだった。

 密着した状態で、魔王剣はその体に深々と突き刺され――怪獣を貫き、背から刃が飛び出したのだ。


 大きな断末魔をあげ、アシッドワームは仰け反り、そして倒れた。

 夜の草原に絶命した怪獣の血が黒々と広がる。


『あ、ああ……』

 恐れ慄くグスタ。

 彼へと向き直り、ノブは断言した。

「僕は地上最強の霊能者(サイオニック)だ」


『く、クソォ!』

 最早ヤケクソ。グスタは己の乗る兵士巨人Bソードアーミーを突っ込ませる。

 目標は……レイシェル。

 この状況で、彼女を捕える事ができると思ったのか。


 当然、ノブはそれを阻むため動こうとした。

 しかし――

『いえ。私が戦いますわ』

 レイシェルはそう言うと、自機Sエストックナイトでグスタ機を迎え撃つ。


『俺は! 騎士団の! エースだったんだぞ!』

 叫ぶグスタの脳裏に浮かぶ、過去の思い出。



 肩で風をきって歩き、後ろには彼を慕う舎弟が常に数人。同年代の騎士達は大概が道を開けた。

 たいした用事も無いのに、媚びる笑顔を向ける数人のガールフレンド。遊ぶ相手はその日の気分で変えた。誰を選ぶもグスタの勝手だった。

 (いくさ)に出て剛剣をふるえば、ゴブリンやオークが何匹も血祭にあがる。ケイオス・ウォリアーに乗れば敵の量産機が爆発。

 また手柄が増えた。彼の自慢の種である。


 それを一撃で撃ち砕いた男。

 魔王軍陸戦大隊長……金色(こんじき)の野獣ジェネラル・ゴーズ。

 奴とは戦いにすらならなかった――敵の機体の両腕が光ったと見えた時、グスタは味方の騎士達と一緒に吹き飛ばされ、一蹴されたのである。

 一緒に倒された味方の半数は、脱出に失敗して命を落した。


 自分はこの世で有数の使い手だとさえ内心思っていた自負は、あの日、粉々に消し飛んだ。



 悲鳴のような叫び声をあげ、グスタはレイシェルの白銀騎士機へ突っ込む。

 そのレイシェル機の周囲に白い煌めきが舞った。呪文の詠唱が響く。 

『【水冷の領域、第五の段位。冷気は存在そのものを冷却する。凍結した敵は砕け散る】――ディープフリーズ!』


 グスタ機の周囲が輝いた。

 一瞬にして生まれた超低温の中を、氷の結晶が吹き荒れる!

 凍てつき、砕けてゆく装甲。

 現時点でのレイシェルの最大の攻撃魔法が、大きく増幅されて炸裂した。


 それでもグスタ機は、よろめきながら剣を振り上げ、エストックナイトへ斬りかかる。

 しかしその弱々しい剣をレイシェル機は造作も無く避け……反撃の剣で刺し貫いた。


 凍てついたグスタ機はその一撃に耐えられず、剣が抜かれると同時に倒れ、その衝撃でさらに亀裂を増やす。

 もはや抵抗できないその機体へ、レイシェルの機体が剣を構えて近づいた。


『や、やめろ……』

 か細い声で拒絶するグスタ。

 最早どうにもならない事は彼自身わかってはいる。


 が……


『降伏するのね。なら危害は加えませんわ。ガデア魔法騎士団は、そうだったでしょう? 私も……貴方も』

 そう言って、レイシェルの機体はグスタ機に背を向けた。

 グスタは……呆然と、それを見送るだけだった。


 ノブとレイシェル、二人の機体は並んで宿への帰路につく。

 ノブはレイシェルに通信を送った。

「今日はゆっくり寝るといい。警戒のための魔術は僕が張っておく」

『ええ。お言葉に甘えますわ』

 答えるレイシェルの声は、どこか沈んでいた。

設定解説


戦意モラール

操縦者の内的な精神パワー。気力的なもの。

ケイオス・ウォリアーの戦闘力は一体化した操縦者の影響をダイレクトに受けるので、それを数値化して表示する機能がケイオス・ウォリアーには標準装備として搭載されている。

出力や装甲の強度もこの戦意モラールによって増減し、強い武器や一部のスキルはモラールが上がらないと使えない。

通常は100から始り、戦闘行為で増減して50~150の間で勘定される。

ただし一部のスキルやアイテムで151以上にも上がるようになる。

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