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20 宿泊 5

年賀状を作るのを忘れていたので結局一日中寝てられなかった。

仕方なく会社関係の年賀状を即興で作成。

もうこんな時代なんだからメールかラインで「あけおめッス」と送ればいい事にならんのか。

因習に悩む現実はともかく、ノブとレイシェルの戦いは続く。

 倉庫から出たノブ達は、既に敵機のシルエットが肉眼で見える距離にいる事を知った。ここが射撃武器の射程内にはいるのも時間の問題だ。

 ノブとレイシェルは機体を隠してある所へ走り、ジルコニアはその頭上を飛んでついていく。


 魔王軍の増援部隊が倉庫に着いた時、中から兵士巨人Bソードアーミーが一機出て来た。無論、元ガデア魔法騎士団のグスタが乗っている物である。

 同時に、近くの林から二機のケイオス・ウォリアーが月光の下に現れた。ノブのEムーンシャドゥとレイシェルのSエストックナイトが。


 魔王軍の量産機達はノブ達へ殺到する。

 しかし……

「あいつ、後ろに下がったままだぜ」

 ジルコニアが言う通り、グスタのソードアーミーだけが近寄って来ない。

『どうしてかしら。グスタは自分から突撃するのが大好きな人でしたけれど……』

 レイシェルの呟きを聞き、ノブは敵軍を見渡す。

 数こそ多いが、兵士型や犬頭型など、ありふれた機体ばかりだ。

「この雑兵達で僕らを倒せると見積もったのか。魔法戦士ならもう少し頭がありそうな物だが」

『グスタは武器に属性を付与する魔法を数個習得していますけど、もっぱら両手剣で戦う人でしたわ』

 レイシェルが相手の情報を伝えると、ジルコニアはノブの肩で「はあ?」と呆れた声を出す。

「それ、魔法をちょっと使える戦士じゃねーか!」

「まぁ怪しい所がある。奥の手がまだある事を警戒した方がいいだろう」

 そう言ってノブはムーンシャドゥを敵へと、身構えながら歩かせた。


 対して、敵機の群れは全速力でムーンシャドゥとエストックナイトに迫る。

『【光熱の領域、第一の段位。輝きは熱の線となる。光は敵を灼く】――エナジーブラスト!』

 レイシェルの詠唱により、エストックナイトから熱線が放たれた。

 それは先頭にいた犬頭の巨人・Bダガーハウンドを捉えて焼く!

 だが構わず他の魔王軍機は押し寄せてくる。

 敵が間合いに入るや、ノブのムーンシャドゥは相手へと跳び込んだ。

 エルボートリガーの一撃! 魔王軍の機体が吹っ飛び、倒れる。

 激しい乱戦が始まった……!


 だが、レイシェルの前に初めて現れた時、ノブは雑兵の群れを一蹴しているのだ。

 そして今はあの時と違い、レイシェルの戦意も十分にある。

 魔王軍の雑兵達に勝ち目など無かった。


 装甲の厚い虫頭の砲撃機、Bカノンピルバグがムーンシャドゥのレッグトリガーで胸板を砕かれ、火花を吹いて倒れた。

 それが最後の敵機だ。

 後ろで眺めて戦いに加わらなかった、グスタの機体を除けば。


「後はお前だけだな」

 そう言ってグスタ機へ近寄るノブ。

 だが、グスタの声は笑っていた。

『いや……切り札がこっちにはいるぜ』


 その声が合図だったかのように周囲を振動が揺さぶる。

 地面が割れ、土中から巨大な影が現れた!


 身長18メートルのケイオス・ウォリアーより頭一つ大きい、20メートルを超える影。しかも前傾姿勢でその高さ――太い体と長い尾はそれ以上のボリュームを見せている。

 環形動物のような滑った肌の、所々にカビのような物が付着して斑模様になっている。ずんぐりした体型、太い腕と足、長い尾。首も長く、頭には目も鼻も無く、ミミズが胴体から生えているかのようだ。だが先端には環状の口があり、凶悪な牙が生えていた。


「怪獣!?」

 驚愕するレイシェル。

 通信機の向こうで、グスタは大笑いしていた。

『魔王軍の改造魔獣だ! レイシェル、やられる前に脱出するんだぜ!』


「なるほど。しかし一体か」

 ノブは落ち着いたものだ。

 だがグスタの勝ち誇った声は止まらない。

『そいつ一匹で十分だろう。お前、さっきの戦闘でEN(エネルギー)を使い果たしてないか?」


 レイシェルは慌ててムーンシャドゥのステータスを自機のモニターに表示させた。

(ENが……本当に尽き欠けている!?)

 レイシェルの機体は雑兵との戦闘で半分ほど消耗しているが、なぜかノブ機は遥かに消耗が激しいのだ。

(なぜ? どうして?)

 疑問に思いながらステータス各部の詳細を切り替え、武器性能を見たのだが――



格 エルボートリガー 攻撃3800 射程P1―2 EN20

射 サイコビーム   攻撃4000 射程1―6  EN30

格 レッグトリガー  攻撃4500 射程P1―2 EN40



『ちょっとノブ? その機体、最大EN200だそうですけど。一番消耗の少ない武器が20ですの? 普通、無消費とか消費10とか、消耗を抑えて戦うための武装が一つぐらいはありますわよね?』

 驚きを堪えて訊くレイシェル。

 ノブの方は落ち着いたものだ。

「この機体はDD式分類法でいう所の防御回避型だからな。性能は運動性と耐久関係を重視して組み立てられている。その上で火力も出そうと思えばエンジンの稼働率を常に高く調整しておくしかない。よって全武装がENを激しく消耗するのも仕方が無い事だ」


 全てにおいて高性能などという都合の良い機体を造るためには、どこかに皺寄せがあるのは当然なのだ。


『じゃあ何ですの? 弱りきった相手にもEN大消費しながら強力武器でブン殴るんですの!?』

 レイシェルはほとんど責めるような口調だ。

 グスタはいよいよ「ゲラゲラ」と品の無い笑い声をあげる。

『豪快なのは嫌いじゃねぇが! 魔王軍から与えられたこの改造魔獣をENカラッポで倒せるのかよ?』

設定解説


・グスタ=ボバン

元ガデア魔法騎士団ベヒモス隊隊長補佐。

両手武器使い揃いの同隊の若きエースで将来の団長候補だった。実家は貴族であるが、家に帰ると見合い話をもってきて鬱陶しいので、ここ数年は全く帰っていなかった。

部下や女を取り巻きとして連れ歩きよく街に繰り出す遊び好きな一面もあり。主な趣味は食べる事と筋トレ。嫌いな物は行儀作法、弱い雑魚、自分より強い奴。

レイシェルは取り巻き女に加わらなかったので、グスタからは「いけ好かない」と「無関心」の間ぐらいの感情を持たれていた。


・Bソードアーミー (グスタ用機)

魔王軍の機体から少しマシな物を選んで持ってきた物。よって厳密にはグスタ用の機体ではない。

小隊長用機で、HPが増量されている。

武装の追加は特に無い。【ハード・ブレード】は操縦者の魔法を機体を通じて使い、剣を強化して斬りかかる技。


基礎ステータス

HP:8000 EN:170/170 装甲:1300 運動:95 照準:145

格 ソード      攻撃2700 射程P1

射 ボウガン     攻撃2700 射程1-5

格 ハード・ブレード 攻撃3500 射程P1

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