14 我家 6
売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。
そんな彼女の前に最強を自負する霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。
レイシェルが旅立つ前夜、卑怯な裏切り者が彼女を襲う。
明日の土曜日は仕事が襲う。メリークルシミマスふざけろしばくぞ。
数日前から止まっている30を再開できるのはいつだ……。
「んじゃノブ。そろそろ遊ぶのやめて決めちまえ」
肩でニタニタ笑うジルコニアに、ノブは「やれやれ」と溜息をつく。
「遊んだ覚えはない。敵が一体だから逆に罠でもあるかと警戒しただけだ。だがまぁ、様子見はもういいだろう」
そして、Eムーンシャドゥが一撃!
まともに受けて、ソードアーミーが上体をのけ反らせる。
下からの肘打ちが頭部を打ったのだ。肘から出た鉤爪状の突起が装甲を吹き飛ばす。
一撃! また一撃!
縦と横、肘打ちと後ろ回し蹴りがソードアーミーを打ちのめす。ムーンシャドゥの肘と踵から出た鉤爪が容赦なく装甲を引き裂き、モニターに表示されるアーミーの残りHPは既に赤い危険領域だ。
『奴の攻撃についていけない!?』
驚愕する騎士ドーネル。
彼にはシャドゥが放つ攻撃がほとんど見えない。どこが死角なのか相手が見通しているようだ。
いや、見通しているのだろう。【超能力スキル】が事実ならば。
ニマニマと笑みが止まらないジルコニア。
「付け加えるなら、元々、この機体は上等品なんだよ。お前の安物とは違わぁな」
『馬鹿な……この機体とて強化している。白銀級機相手でもこうまで一方的な筈が……』
ドーネルのか細い声に、ジルコニアは笑い続けた。
「腕前も違うっての。こいつ――聖勇士だぞ。確認してみたらどうよ?」
「なんだと……」
ドーネルはモニターを操作し、ノブのステータスを映し出した。
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ノブヒコ=アキカゲ
レベル16
格闘181 射撃181 技量207 防御148 回避126 命中125 SP87
特殊スキル
ケイオス5 超能力5 SP回復 精神耐性
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『ケイオス! 異界流のレベルが3以上……。確かに召喚された異界の人間!』
驚愕するドーネル。
「ジル。さっきから喋り過ぎだ。敵に情報を与えても良い事は無いぞ」
ノブはため息混じりだ。
『クッ……お、おのれぇ!』
捨鉢になって叫ぶドーネル。そのソードアーミーが盾の先にある砲身を向けた。そこから熱線が撃たれ、ムーンシャドゥを狙う!
だがムーンシャドゥはソードアーミーへと飛びかかった。
熱線と跳び後ろ回し蹴りが交錯する!
熱線は城の尖塔を撃ち抜いた。
蹴りはアーミーの頭を叩き潰し、吹き飛ばし、城壁へと叩きつけた。
着地するムーンシャドゥの前で、頭を失ったソードアーミーは音を立てて地面に倒れた。
――戦いは終わった。ノブはバルコニーへ戻る――
謀反に加わらなかった家人達が解放され、Bソードアーミーの残骸から騎士ドーネルは引っ張り出された。
それをバルコニーで見ながらレイシェルは呟く。
「聖勇士だったのね、ノブは」
レイシェルの横で頷くノブ。
「ああ。それも話そうとは思っていたが、神蒼玉に比べれば大した事ではないからな」
「それも既に、スイデン国には有った……黄金級機もいずれは造られる。これでは私達が神蒼玉を手に入れても……」
そう言ってうつむくレイシェル。視線が下に落ちる。
だがノブは腕組みして夜空を、上を見ていた。
「その時には、黄金級機が2機並び立つな。そしてその1機に乗るのはクイン家の子女で若き魔法戦士だ」
レイシェルが顔を上げた。
思わぬ言葉に。それに驚いたのもあって。
ノブは夜空に輝く月を見ながら続ける。
「いずれ時期を見て話すつもりだったが、こうなれば今言おう。設計図を用意するアテは最初からあった。これは黄金級機の材料を取ってくるというクエストではないんだ。黄金級機を得るというのがこのクエストのゴールなんだ」
そこで横を――レイシェルを見た。
「取り戻しに行かないのか? 君の家の栄光を」
二人の視線が交わる。
そしてレイシェルは小さく頷いた。
「行きますわ。私の希望に私が向かわないなんてありえませんもの」
「地上最強の霊能者がお供つかまつる」
くいくいとメガネを弄りながら、その奥のノブの瞳は真っすぐレイシェルを映していた。
改めて話は決まった。
ノブは中庭を見下ろす。そこには彼が捕えた謀反人達が集められていた。
「ところで彼らはどうする? 普通に考えれば斬首か磔だろうが」
「……母様に任せるけど、死罪にはしないよう頼みますわ。多分どこかへの島流しあたりかと……」
寂しそうに言うレイシェル。
「甘くねぇかなー?」
ふわふわと飛びながらジルコニアはつまらなさそうに言った。
それを見上げ、レイシェルは笑顔を見せた。
「ノブが助けてくれたおかげで、大きな被害はありませんでしたもの。これからもお願いしますわね」
言われて頷くノブ。
「無論だ。しかし君の体調管理まではできかねる。風邪をひく前に、ベッドに戻るか着替えるかした方がいい」
慌ただしい中、透けた薄いネグリジェを着替える暇もなかった。夜がまだ明けず暗いとはいえ、裸の一つ手前のような恰好だ。
今更ながら慌て、レイシェルは胸を両手で隠す。
「正論ですわね……どちらにしろ、部屋からは出てくださる?」
恥ずかしさに俯きながら、そう言うのが精一杯だった。
設定解説
・異界流/聖勇士
次元の力の切れ端みたいな物。世界に存在する物が持つ、物理的・霊的なエネルギー。
それが異界流。
異世界からの召喚者には、転移の際に元の世界のエネルギーを持ったまま、この世界に来る者がいる。
そうした者達はこの世界に存在する事で持つエネルギーに、元の世界から持ち込んだエネルギーを加えた強力な力の持ち主となり、目覚ましい能力を発揮した。
それら二重のエネルギーを持つ者を、いつしか聖勇士と呼ぶようになった。
この時代の異界人召喚魔法には、既に聖勇士となれる者を餞別する効果が組み込まれているため、召喚された勇者は力の差こそあれど全て聖勇士である。
彼らが持つ異界流の強さを数値化したものが「ケイオスレベル」であり、0~9の十段階で表示される。
この世界で生まれた者達にもケイオスレベルはあるが、0か1がほとんどで、2になれる者はまれ。3以上はいないとされている。
ケイオス・ウォリアーの操縦にも異界流は必要であるが、ケイオスレベルにすれば0.5ぐらいなので、訓練すれば二人に一人ぐらいはケイオス・ウォリアーを操縦する事ができる。この場合「操縦できるほどにはあるが1に満たない」という者も多く、表示上はケイオスレベル0の操縦者となる。




