12 我家 4
売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。
そんな彼女の前に最強を自負する霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。
それを受け入れ、旅立ちの前に実家で最後の休息をとるレイシェル。
彼女を裏切り者達の魔手が襲うが、そこにノブが駆け付けた――。
「逃げろと言われてもな。僕はここに君を助けに来たのだが」
家人達の後ろから、メガネをくいくいと弄りつつ、胴着とマントに身を包んだノブが姿を現した。
呆気にとられるレイシェルの傍へ、何事もないかのように歩くノブ。周囲の誰もそれを止めようとはしない。驚きに目を見開くが、妨害は一切しなかった。
それはレイシェルを捕まえている下男も同じだ。その傍へ来ると、ノブは無造作に下男を引きはがした。下男は一切抵抗せずに床へ倒れる。
レイシェルはよろめき、ベッドに腰掛けた。ノブを見上げて力なく訊く。
「……これは?」
倒れた男を冷たい目で見下ろすノブ。
「【ナーバスホールド】――神経系統に働きかけ、身動きできなくする超能力系呪文を使った。ご両親の所で狼藉を働こうとしていた者達も既に対処してきた。さて、同じようにするか」
そう言うと裏切り者達の上着をはぎ取り、それで本人達を縛り上げていった。
「ち、チクショウ!」「きゃあ、やめて!」「おのれ……」
彼らは――特に女性は――悲鳴をあげたものの、体は全く動かず、抵抗のしようが無かった。
「なぜ夜襲がわかったんだ。こちらに裏切り者がいたのか?」
縛られた執事が狼狽えながら訊く。
フンと鼻を鳴らすノブ。
「己が卑怯な裏切りをするがゆえ、先ずそこから疑うわけか。別に誰に教えてもらう必要も僕にはない」
「どういう事ですの?」
再び訊くレイシェル。
その前でノブは片手を小さくふる。
青い輝きが粉のように舞ったかと思うと、ガラスのような球体が宙に生じた。その中にはクイン家の城が映っている。壁が半透明で、中で動く住人達も見える映像が。
「【ウィザードアイ】――周辺状況を映像として見る超能力系呪文。一種の透視だな。本来はダンジョンの罠や奇襲を見破るための魔法だが。僕の技量ならば、この城の全てを映す事も、その一部を自由に拡大する事もできる」
言葉と共に一部が膨れ上がり、レイシェルの部屋が拡大された。ベッドに腰掛けてノブと向かい合う彼女の背中がはっきりと見える。
ニマニマと笑うジルコニア。
「風呂も便所も、男と女の夜のファイトも覗き放題だよ。まともな霊能者が修業場に山中や荒野を選ぶ理由もわかるだろ」
「最低……」
女中の一人が顔をしかめる。
その小さな声を聞き洩らさず、女へと振り返るノブ。
「そちらの方がよほど人間の質は低いと思うが。確かめてみようか? 超能力系呪文には心を読む呪文【マインドリード】もある。君がどんな生き方をしてきたのか、やましい所は無いのか、家族友人恋愛などの関係がどうなっているのか、探らせてもらってもいいのだが。幻影系の呪文でその映像も造ってみようか?」
途端に泣きそうな顔で叫ぶ女中。
「ごめんなさい! お許しを!」
それを見下ろしたジルコニア、「クシシシ……」といやらしく笑う。
「そんな態度だと逆に興味がわくね。男相手の夜の撃墜数はいかほどかな~? エースボーナス込みで赤裸々に調べたい所だね~」
「ひっ!」
顔を引き攣らせる女中。
肩を竦めるノブ。
「僕は全然だが。首謀者がドーネルとかいう騎士だという事は、ライラ夫人の方を襲った奴の心を読んで知っているしな」
部屋が静まり返った。
リーダーの名を簡単に出され、裏切り者達は言葉を無くしたのだ。
遅れてレイシェルが声を上げる。
「そんな!? ドーネルは次期副団長とも目されている、有能で誠実な騎士ですわ!」
その声が消えやらぬ間に。
部屋を微かな振動が襲った。中庭から大きく硬質な足音が響く。
動揺する家人達の中、驚いた様子もなく呟くノブ。
「失敗を察した時は、彼がケイオス・ウォリアーでレイシェル殿を捕える手筈だそうだが。早くも来たな……」
設定解説
・Sエストックナイト
レイシェルの乗機。実家のクイン家がお抱えの技師達に造らせた特注品。
外見的には白銀の甲冑を纏った騎士である。
だが操縦者レイシェルの能力を完全に発揮できるよう、運動性を重視し、魔法の増幅器で操縦者の呪文を拡大・発射して戦う。
そのため敵の攻撃を回避しながらの中距離以遠での戦闘が得意。
基礎ステータス(強化改造や装備するアイテムにより、この数値は変化する)
HP:5500 EN:200/200 装甲:1600 運動:120 照準:145
格 シルバーエストック 攻撃3000 射程P1―2
射 エナジーブラスト 攻撃3500 射程1―5
射 ディープフリーズ 攻撃4500 射程2―6




