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11/114

11 我家 3

売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。

そんな彼女の前に最強を自負する霊能者・ノブが現れた。

彼はレイシェルを秘宝探索の旅へと誘う。

それに反対する母を押し切り、レイシェルは旅立ちを決意するのだが――。

 その夜……レイシェルはまた「前世」を夢に見た。

 いつものように、とりとめのない異世界の光景。

 何人もの「王子様」が、モニターの向こうにいる。彼らに熱い眼差しを向けてドキドキしている()()――



 そこで目を覚ました。

 ベッドの中で何度か瞬きし、窓を見る。

 夜空には星が瞬き、美しい三日月が輝いていた。


 自室の方へ視線を移す。

 するとどうだ、暗がりの中にいくつもの人影が蠢いているではないか……!


 ぎょっとして上体を起こしたレイシェル。

 今着ているのはシースルーのネグリジェのみ。武器もあろう筈がない。

 慌てて布団を胸元まで手繰り寄せ、体を隠した。

「な、なんですの!? 一体……」

 部屋の中の者達へ上ずった声をかけるレイシェル。


 自分の実家たるこの城で、何者が深夜に侵入してきたのか?

 暗闇に目が慣れると、彼らが城で働く家人達である事がわかった。

 執事や下男、女中……しかし彼らは一様に険しい顔で、手には棒なり刃物なりを握っている。

 先頭に立つ執事が、冷たい目をレイシェルへ向けた。

「姫様。旅は諦めていただきます。貴女を高く買ってくださる方がいるのですよ」


(なぜ? 彼らについて来いなどと、危険を冒せなどと一度も言っていませんわ。私へ謀反を起こす理由は無い筈……)

 戸惑いながらもレイシェルはベッドから出た。

 そして急ぎ、呪文を唱えながら右手を上げる。

「『水冷の領域、第四の位。氷が針と破片となる。冷気と鋭さは敵を撃つ』――【アイスボール】!」

 詠唱が完成すると、右手のさらに上に氷の刃が渦巻いた。凍気が敵を切り刻む攻撃呪文である。

 それを放たずに維持し、レイシェルは家人達へ告げた。

「武器は無くても、貴方達に敗れはしませんわ。誰にどう(そそのか)されたのか、お言いなさい!」


 怯む家人達一同。

 だが先頭の執事はやや早口ながらも落ち着いて言う。

「おやめください。ご両親がどうなってもよろしいので?」

 言葉の意味がわからず、一瞬戸惑うレイシェル。

 だがすぐに察した。


 彼女の所へ押しかけているのだ。父と母の所にも……そして今の父も、剣など握った事もない母も、武器を持った複数の相手から身を守る事ができるとは思えない。


「!……なんて恥知らずな……」

 怒りに震えながらも、レイシェルは維持していた魔法を消した。


 彼女を見て、執事は言い訳がましく呟く。

「何を言われる。今のクイン家に誇りや誉れなど有りはしません。もはや家の存続が望めない以上、できる限りのお金になっていただきます。私達にも食べさせる家族はいるのですから」

 家人達が武器を手にレイシェルを取り巻いた。下男の一人が刃物をちらつかせながらレイシェルの右手を捻じりあげる。

 苦痛に顔を歪めるレイシェル。月明りに照らされる彼女の体は、肌の透けて見える薄布しか纏っていない。

 その滑らかな肢体に下男が唾をのむ。

「しかし、まぁ……お育ちなされたな、レイシェル様……」


 下男が右手を離した。だが解放したわけではない。その汚らわしい手は、レイシェルの体をまさぐり始めたのだ。

 自分が仕えていた高貴な体を、いやらしく撫でまわすように這う掌。丸く柔らかい胸の双丘の、片方を薄布ごしに掴み、揉みしだく。掌からこぼれた肉を逃すまいと、指をどん欲にいっぱいに広げて。

「な、何を! 嫌!」

 悲鳴をあげるレイシェル。

 だがそれは下男の欲望を煽るだけだ。もはや無用と刃物を床に捨て、もう片方の手が臍の辺りに触れた。そのまま下へと、ぎゅっと閉じられた太腿の付け根の、その間へと――こんな男に許してはいけない場所へと向かう……!


 懐かしの我が家へ戻った時、安心感で涙が出かけた。

 それを堪えて旅立ちを両親に告げ、家のために決意を固めて、最後の安息として今夜は泊まったものを……

 見知った家臣たちに裏切られ、嬲られようとしている。


 どうして生きているというのはこんなに辛いものなのだろう。


「クッ、殺しなさい……!」

 潤んだ両目をぎゅっとつぶり、レイシェルは悲痛な声を漏らした。



 そんなレイシェルへ、さらに嘲笑うような声が。

「もう流行りは過ぎたと思うよ、それ」

 涙がこぼれないよう必死にこらえながら、レイシェルは顔をあげた。「クシシシ……」と宙で笑うのは――妖精ジルコニア?


「ジルコニア! 逃げるように、ノブに言いに行って! 早く!」

 レイシェルは必死に叫んだ。なぜジルコニアがここにいるのかはわからなかったが。

 そんな彼女へ落ち着いた声がかかる。

「逃げろと言われてもな。僕はここに君を助けに来たのだが」

 家人達の後ろから、メガネをくいくいと弄りつつ、胴着とマントに身を包んだノブが姿を現したのだ。


「味方増援、出現ひと~つ」

 ジルコニアはそう言って、へらへらと緊張感無く笑った。

設定解説


・レイシェル=クイン

クイン公爵家の子女。17歳。縦ロールの長い金髪に青い瞳の少女。

代々武勇に秀でたクイン家の人間らしく、彼女自身も腕の立つ魔法戦士である。

240年前に魔王を討った先祖をもつ公爵家を誇りに思っており、尊敬する人は父と二人の兄……だった。


女性故に膂力には優れないが敏捷で魔法の才あり、敵の攻撃を機敏に避けて魔法で打ち倒す戦闘スタイルが得意。

ガデア魔法騎士団でも上位に食い込む腕前を女だてらに誇っていた。


11話時点でのステータス

レベル11

格闘161 射撃169 技量192 防御135 回避110 命中110 SP80

スキル:ケイオス1 底力3 援護攻撃1

【スピリットコマンド】

エフォート:一度の戦闘で得られる経験値+100%。

コンセントレーション:短時間、命中率と回避率に+30%。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんな所にまで魔王軍の手が……。 しかし、第一部な比べて、随分と正統派のヒロインとヒーローなんですが(笑)。 にしても、確かに姫騎士のクッコロは旬をだいぶ過ぎてはいますな(笑)。 [一言…
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