↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼絵巻 〜恋ぞつもりて 鬼巡る〜  作者: 星野アキト
第十章 想いと執着

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

356/401

夢幻の休息

 治癒の術を施している鬼兎火は表面ではなく、内部に受けたダメージが大きいようだ。その証拠に白い鬼兎火の肌の至る所が浅黒く変色している。内部出血しているのだ。

(どんな衝撃を与えたんやろ?)

 鬼兎火の近くに横たわっている椿鬼も似たような状況だ。

 魑衛だけは内部出血ではなく、全身を刀で斬りつけられており、来ていた着物も肌も全てが赤く染まっている。三人の状態で桜鬼による攻撃の威力が相当なものである事が分かる。

 そしてその攻撃力の高さに蓮条は、思わず固唾を呑んでしまった。

 まさかこんなに一方的に鬼兎火たちが倒されてしまうとは、全く思っていなかった。むしろ蓮条は、数の多さで桜鬼たちを圧倒できるとさえ思っていた。

 魄月花が魅殊と菖蒲からの援助を受けて、桜鬼と交戦している。

 棍棒と刀の異様な衝突が振動と大きな音を立てている。魄月花は防御術を駆使しながら桜鬼にぶつかっていき、桜鬼は術式を駆使して魄月花を押していく。

 そして桜鬼が術式を詠唱し、飛廉を呼び出した。

 主の呼び出しに飛廉が答え、桜鬼が軽い身のこなしで飛廉に跨る。

 魄月花も跳躍して追うも、自由自在に空を動き回れる桜鬼とでは分が悪くなっていた。

「まぁ、身を粉してお仲間を守るなんて……殊勝なことですね」

 夜鷹の言葉に蓮条は、ハッとする。

 治癒と魄月花と桜鬼の戦いに集中していた蓮条は、自分の身に迫っていた危険に気づいていなかった。自分たちに更なる攻撃を与えようと夜鷹たちが術式による攻撃を仕掛けてきたのだ。

 そしてその術式を儚が結界を張り、防いでくれていた。

「儚っ、一人で二人を相手にするのは無茶や! 俺もっ!」

「気にせんで。ウチはさっきまで守られてばっかりやったんやから。このくらいせんと。それに蓮条は一刻も早く鬼兎火たちを治してあげて」

 治癒を中断させようとした蓮条を儚が言葉で止めてきた。

 蓮条は少しの間、考えた。治癒を中断して、二人で夜鷹や穂乃果の攻撃を防いだ方が良いのではないか? と。けれど蓮条はすぐに内心で頭を振った。

「ーー分かった。儚、もう少し、もう少しだけ耐えはって。絶対に鬼兎火を治す。それで儚と一緒に奴らと戦うから。だからそれまで頼むな」

 蓮条が儚にそう言うと、儚が笑顔で頷いてきた。

「おっけい。任せて」

 蓮条は先程よりも集中して、鬼兎火の治療に専念した。それは魑衛を治す瑠璃嬢も、椿鬼を治す桔梗も同様だ。

 この危険な状況を脱却するために、誰しもが集中して各々の事に臨んでいた。

 だがしかし……。

「魄月花め。貴様は本当に食えぬ奴じゃ。先程の奇策といい、腹の中が解せぬ。じゃが、妾もずっと貴様と遊んでいるわけには行かぬ」

 飛廉に跨り空中にいる自分へ向かってきた魄月花を桜鬼が刀を振るい、言葉と共に地面へ唾棄する。

 地面へと叩き落される魄月花も桜鬼に負けじと身を捻り、体制を整えている。

 しかしそんな魄月花へと桜鬼が刀身を真っ赤に染め上げた刀から強烈な斬撃を放った。

 自由落下してしまっている魄月花では、避けられない。

 いや魄月花でなくとも避けられない。桜鬼が放った一閃はとても巨大で、地上にいる蓮条たちにも被害が及ぶレベルだ。

 飛翔する斬撃は高速だ。強固で広範囲の結界を展開するための術式を詠唱している暇がない。

 そのため魄月花は自身の身を守るのよりも、蓮条たちを守る事を優先させた。

 無論、主である菖蒲もそれを見過ごすはずない。

 魄月花の身体強化及び結界を展開する。けれど桜鬼の斬撃は速い。菖蒲の術式が展開するよりも速く、魄月花を桜鬼の斬撃が切り裂いていく。

 宙に魄月花の体から溢れた血飛沫が辺りに散乱する。

 その光景は頭上を見ていた蓮条たちに大きなショックを与えた。その衝撃は蓮条たちを攻撃していた夜鷹や穂乃果にまで与えている。

 とはいえ、その血飛沫など意にも介さず動いた者が一人いた。

「えっ、何っ!?」

 驚愕の声を上げたのは、夜鷹たちの術式を食い止めていた儚だ。その儚の足元が白く光始めたのだ。

「儚っ!」

 反射的に蓮条が儚の腕を掴むために動く。

 けれど蓮条の手が儚の腕を掴む前に、儚が光の中に包みこまれていく。

 残ったのは儚の手を掴むことができず、宙を切った蓮条の手だけだ。

「これで、僕たちの目的は達成だ。ちゃんとこちらの陽動に掛かってくれてありがとう。その御礼代わりに、君たちには夢幻の休息を」

 思わず呆然としていた蓮条たちに、紫陽が温和な口調でそう言うと一枚の護符を投擲してきた。投擲された護符の術式がすぐに展開され、その場にいた蓮条たちを飲み込んでくる。

「あかんっ!」

 術式が展開された瞬間に叫んだのは菖蒲だ。

 そして菖蒲が高速で術式を唱え始め、それと同時に少し離れた場所に倒れている魄月花へ一枚の護符を投擲する。

 そして菖蒲がその護符を投擲したのと同時に、蓮条たちは紫陽の術式に飲み込まれた。

 真っ暗闇が蓮条たちの視界を覆いつくしてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポイントを頂けると、とても嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。