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『先生の仮面』  作者: 物語の保管庫


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第三十八章 歪んだ正義

「生徒を守る」


教師なら、誰もが一度は考えることなのかもしれない。


間違ったことをした生徒を止める。

危険から遠ざける。

正しい道へ導く。


――それだけで、本当に生徒を守れるのだろうか?


大切なものを失って初めて、人は変わる。


そう信じた男は、

二度と生徒を失わないために、恐怖を与え、支配する道を選んだ。


それは、本当に「守る」ということなのか。


それでは、どうぞ!!

女子生徒「……でも。」

「どうして、そこまでして――」

「私たちを変えようとしたの……?」

――高橋は、しばらく黙っていた。

そして――

ゆっくりと生徒たちを見渡す。

高橋「……お前たちは。」

「教師という存在を、どう思っている?」

――突然の問いに、生徒たちは戸惑う。

女子生徒「……どうって。」

「私たちを教えてくれる人……?」

高橋「そうだ。」

「教師は、生徒を導く。」

「間違った道に進めば止める。」

「危険があれば守る。」

「それが――」

「教師の役目だ。」

――高橋は、水野を見る。

高橋「だが。」

「本当に、それだけで生徒を守れると思うか?」

水野「……何?」

高橋「お前たちも見ただろう。」

「誰かが傷つくまで、誰も動かない。」

「問題が起きてから、ようやく考える。」

「そして――」

「大切なものを失ってから、後悔する。」

――高橋の声が、少しずつ強くなる。

高橋「俺は、それを何度も見てきた。」

「だから思った。」

「それなら――」

「最初から、恐怖を与えておけばいい。」

女子生徒「……恐怖?」

高橋「あぁ。」

「危険なことをすれば、どうなるのか。」

「ルールを破れば、どんな結果になるのか。」

「それを、身体に刻み込む。」

――生徒たちは黙って聞いている。

高橋「恐怖は――」

「人間を動かす。」

「綺麗事だけでは、人間は自分を律することができない。」

水野「だから……」

「生徒たちを恐怖で支配することが、守ることだと思ったのか?」

高橋「あぁ。」

「俺はそう考えた。」

「そのためには――」

「お前たちの考え方そのものを変える必要があった。」

「教師とは、恐ろしい存在だ。」

「逆らってはいけない。」

「危険に近づいてはいけない。」

「その恐怖を――」

「記憶の中に植え付ける。」

――女子生徒は、怒りを抑えながら問いかける。

女子生徒「……それが。」

「先生の言う『生徒を守る』なの?」

高橋「そうだ。」

「俺には、それしか方法がないと思った。」

――水野は、高橋を見つめる。

水野「……違う。」

高橋「…………。」

水野「それは、生徒を守っているんじゃない。」

「生徒から――」

「考えることを奪っているだけだ。」

――高橋の表情が、僅かに曇る。

水野「恐怖で従わせれば。」

「確かに、危険なことをしなくなるかもしれない。」

「だが――」

「それは、生徒自身が考えて選んだ結果じゃない。」

「ただ、怖いから従っているだけだ。」

――しばらくの沈黙。

高橋「……それでも。」

「俺は――」

「それでいいと思った。」

「生徒が自分で考えて、その結果、誰かが傷つくくらいなら――」

「俺が、考え方そのものを変えてやればいい。」

「それが――」

「俺にできる、生徒を守る方法だった。」

――女子生徒は、高橋を見つめる。

そこに浮かんでいたのは――

怒りだけではなかった。

ほんの僅かな、悲しみ。

女子生徒「……先生。」

「それじゃあ――」

「私たちは、先生に守られてるんじゃない。」

「先生に――」

「支配されてるだけだよ。」

――高橋は、何も答えなかった。

ただ――

静かに目を伏せた。


38章、読んでいただきありがとうございました。


なぜ、ここまで歪んだ考えになってしまったのか。


「生徒を守りたい」という気持ちそのものは、決して嘘ではありません。


ただ、そのために恐怖を与え、自由を奪い、支配する。


それはもう、「守る」ではなく「支配する」ことなのかもしれません。


生徒たち、そして水野からそのことを突きつけられる。


そして…

最後に静かに目を伏せた彼が、何を思ったのか。


次章もよろしくお願いします。

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