喧嘩です
勇気が地球に帰ってきて二ヶ月が経った。
その間流石にスキンシップは多少多いが、あまり無理やりな行動には出なくなった。
これには夏、春、ユージもニッコリで、揃って勇気を褒めた。
最初こそ少しぎこちなかった勇気だが、最近はそんなこともなくなり気をつけなくても、グイグイ行きすぎる事は無くなった。
因みにほとんど毎日、日乃理と遊んでいる。
今では親同士も会っているらしい。
「日乃理兄ちゃん強すぎるよー」
「そうです! 少しぐらい手加減してくれてもいいでしょう!」
「けど手加減したら手加減するなって言うよね?」
「ぐぬぬぬぬ」
今は勇気と有事、そして日乃理でリビングでゲームをしている。
有事は直ぐに優しい日乃理に懐いた。だから日乃理が家に来る時は有事が居たら三人で遊んでいる。
だが勇気は少し日乃理に妬いている。
「……なんでですか」
誰にも聞こえない声で勇気は呟く。
なんで有事は日乃理君にはくっつくんですか!
そう、有事は日乃理には積極的に抱きついたりする。
今だって胡座をかいている日乃理の右太ももに悔しそうに有事は頭を正面から乗っけている。
ずるいずるい! 私だってされてみたいです! 有事の方から私に来て欲しいです!
日乃理にはくっつくくせに勇気には一度も自分から言ったことはない、全て勇気からである。
そして最近は勇気が気をつけ始めたため嫌がっているのに無理に行くことは無くなった。
勇気は日乃理の方を羨ましく見つめている。
そして日乃理は、二人で居る時は勇気の不安を聞いているので、勇気がどう思っているかを知っている。なので少し気まずい。
も、もうこうなったら!
「有事! お姉ちゃんの太ももも、空いてますよ!」
そう胡座から正座に変えて、勇気は期待の眼差しで呼びかける。
抱きつかないよりはマシですよね、これなら何も言われないです。お願いです、来てください有事!
だが、
「やだに決まってるよ!」
有事はそう言い放つ。
うう、そうですよね。け、けどこっちなら。
「なら、もう少し近くにいてくださいよ! いっつも日乃理君の方ばっかによだてるんですから!」
代案をだすが、有事にとってはそう言うことではない。
「嫌だ!」
「ひどい! 私だって有事と一緒がいいです! お姉ちゃんなんですよ!」
耐えてきたが、やっぱり日乃理よりは近くにいたい。
「だから嫌なの!」
有事は勇気が元男だと知っているが、初めて会った時は女なので口調と相まって男とは見れなかった。
「嫌だ嫌だばっかりうるさいです! 私だって日乃理君ばっかりくっつかれるのは嫌です!」
勇気は転がり仰向けで泣き出してしまう、自分だって有事に触りたい、日乃理よりも自分に来て欲しいと。
「なんで泣くの! 小さい子じゃないんだから!」
九歳の弟に勇気は言われてしまう。
「ちょっと勇気、嫌なのはわかるけど、泣くんじゃないよ」
日乃理は慰めようと近くに来てくれるが、
「日乃理君じゃだめです! 有事がいいです!」
日乃理なんていっつも近くにいるのだ、満足なんてできない。
「どうするかなぁ」
日乃理も勇気が泣くのは最初会った時だけしか見たことが無く、どうすればいいかと考える。
「じゃあ有事君、ちょっとでいいから勇気に近づかない? それでいいよね? 勇気」
「はい」
日乃理の提案に勇気は渋々同意する。
本当は日乃理のように有事にくっつかれたいのだが、今は仕方がない、勇気はこれで我慢することにする。
だが、
「嫌だ!」
有事も意地になり、そっぽを向いてしまう。
その言葉は勇気を更に泣かせる。
「なんでなんでぇ!! 少し近くでいいっていってますよねぇ!」
「それでも日乃理兄ちゃんの方が良いよーだ!」
少し煽る間で有事は言う。
すると、転んでいる勇気の目に、更に多く涙が溜まり、流れ出す。
「うわーーん!! 有事が酷いです! いじめてきます!」
勇気はジタバタと床で泣きじゃくる。
なんでですか! なんでですか! 日乃理君ばっかり、ずるいです! ずるいです!!!!
「勇気、もう今日は諦めるべきだって」
有事を見てもう無理だと判断した日乃理が勇気に言う。
日乃理は勇気が暴走寸前だと分かっている。
勇気が少し慣れてきているとしても、まだ今の状況で我慢はできないと日乃理は思っていた。
そして嫌な予感は当たることになる。
「じゃあもいいですー! もう有事には日乃理君は貸しません! ずっと私の隣にいてもらいます!」
日乃理のお腹に抱きつき、有事の方を向いて言う。
「ちょ、ちょっと勇気! 離れて! あ、あと俺勇気のものじゃない」
急に抱きつかれた日乃理が少し顔を赤くして勇気を話そうとするが、離れることはない。
「違いますぅ! 日乃理君は私のものです! なので有事には貸しません!」
勇気は日乃理に抱きつく力を強め顔を日乃理の腹に蹲る。
そのため、日乃理も更に照れてあたふたし出す。
「姉ちゃん、わがまま言うんじゃないよ!」
「わがままじゃないです! 私のです!!!!」
「なんで俺は姉弟喧嘩に巻き込まれてるんだよ」
勇気に抱きつかれながら、日乃理はため息をつく。
そしてそのあとも状況は変わらず、勇気は泣き、有事は嫌嫌言い、日乃理は抱きつかれながなんとかしようと頑張ったが、状況が良くなることはなく、結局買い物に行っている夏が帰ってくるまで続くことになる。
それでも結局仲直りは出来た。
♢♢
「ごめんなさい、やっちゃいました、最近良かったんですけど。」
夜になると勇気は日乃理に向かって通話で謝る。
勇気は日乃理が、帰るまでずっと抱きつきながら泣いていたため、夏に叱られて落ち着き、寝る前の今、謝ることにした。
「本当に大変だったよ」
二人を落ち着かせようとした日乃理が一番の被害者であり、一向に言うことを聞かない二人に、振り回されていたので、思い出してため息を吐く。
「ごめんなさい」
勇気も当然そのことは恥ずかしく思っている。
ちょっと溜まってましたかね。
日乃理とは結構近くによることもあるが、有事はその前に離れられてしまう。
それが続いたことで、止められなくなってしまったのだろう。
「別に良いけど次から抱きつくのは辞めてね」
日乃理は女の子に抱きつかれたことなんて当然無く、近づかれる事はもう慣れたが抱きつかれると照れてしまう。
「はい」
勇気はしょぼくれながら言う。
少しの間静かな時間が流れる。
そんな気まずい空気を断ち切るように日乃理が喋り出す。
「そういえば学校はどうするの? そろそろ決めないとじゃない?」
「それも、今週中には言う予定です」
日乃理は勇気が行きたいと言っている学校のことについて話すことにする。
前々から勇気は学校に行きたいと日乃理に言っており、いつ親に言うかを話し合っていた。
「ふぅ」
すると、不自然に勇気が大きく深呼吸をする。
そして、覚悟を決めて次の言葉に繋げる。
「明日も、私の家に来てください、伝えたい話が有ります」
いずれ伝えないといけない話ですからね。
同じ学校を目指すなら、言わないといけないこと、自分がサイボーグだと言わないといけない。
もし、学校を目指す途中でバレて、怖がられてしまい、合わなくなり結局学校に行くのを辞めるみたいなことにはなりたくはない。
それなら今言って砕ける方が良い思った。
なので学校に行きたいと言う前に言っておきたかった。
「今じゃダメなの?」
「はい、見せた方が早いですから」
それにここで言っても普通信じないでしょうから。
当たり前だ、友達にサイボーグと言われても普通見ないと信じるはずがない。
「そう、なら明日も行くよ」
「ありがとうございます。じゃあ今日もう終わりにしましょう。じゃあ、今日はすいませんでした。でわ」
「うんまた明日」
そして、通話が終わる。
「はぁ、はぁ、言っちゃいました! どうしましょう」
心拍数がおかしいくらいに早い、当然だろう、明日で、自分と日乃理の関係が終わってしまうかもしれないのだ。
そう思うと怖くて仕方がない。でも逃げるわけにはいかない。
言わない方が長く友達でいれるのかもしれない。
だが、勇気はそれが嫌だった。
「大丈夫、私なら言えます。やってやります! ああああ! 怖いです!」
落ち着けようとしても落ち着かない、まだ何も計画はしていない、何を言うかも、どのタイミングで言うかも。
元から受験を絶対受けると決めてから話そうと思っていた。なので夏に言う前のこのタイミングしかないと思って思い切って言ったのだ。
もし出願申請まで黙ってそれから言ってしまうと、もし失敗してしまった場合が有る。
「今から考えないといけませんよね。ああ、どうしましょう! いや、落ち着くんです。えーと、メモメモ」
メモを取り出し、勇気は明日の計画を立てていく。
そして、三時間ほど経つと、書き終えて、勇気は寝ようとベットに転ぶが、明日のことを考えて中々寝付けず、二時間ほどしか寝れなかった。




