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半分です!

「何処ですか! 何処にあるんですか!」


 勇気は嬉々として船の外が見える大きな窓に手を当てながらユーノに聞く。


「後五分くらいしたら見えるようになる」


 勇気が攫われて五年、今日は地球が見えるくらい近くを通る日だ。

 部屋の外に出れるようになって四年が経ち勇気は一人でいる事にも慣れて、外に出るのも余裕でできるようになっていた。

 まだ怖い宇宙人はいるが、勇気の近くにはいないのでそこまで問題ではない。


「勇気一ヶ月ずっと楽しみにしてたんだもんね」


「そうです! 待ち切れないですよ!」


 ヤージュの言葉に勇気は元気よく反応する。


 楽しみで仕方がない。一ヶ月前に言われた時から待ち続けてようやく今日見れるのだ。


 勇気のテンションの上がりように、周りにいる宇宙人はみなニコニコとしている。

 ここにいる宇宙人は皆、勇気のことを可愛がっている者達だ。

 勇気も行けばお菓子を貰えるので、直ぐに心を開き、仲良くなった。


「お、勇気、そろそろ見えるぞ!」


「本当ですか!」


 少しするとユーノは勇気に伝える。

 そう言われた勇気は窓にほっぺをくっつけて見えるのを待つ。

 十秒ほどすると、少し遠くに地球が姿を現す。


「有りました! 有りましたよユーノさん!」


「ふっ、そうだな」


「すごく綺麗ですよ!」


「ああ、綺麗だ」


 勇気の笑顔がユーノには少し嬉しく、地球ももちろん見ているが、ほとんどは勇気を見ながら答えている。


 他の宇宙人達もチラチラと勇気の方を見ている。

 最初の頃の不安定な勇気を知っている者にとって、勇気が今笑顔である事は望ましいことだった。

 そして勇気と仲良くなった事で、勇気を攫った者を悪い印象で捉える者も増え始めているらしい。


「あ、もう見えなくなりました」


 少ししょんぼりと勇気言う。見れたのは大体三十秒ほど、直ぐ見えなくなった地球に勇気は悲しくなった。


 ですが、初めて見れました。


 満足とは言えないが、少し見れただけでも嬉しく思う。

 直ぐに悲しい感情を振り払い、ユーノの方に走っていく。

 だが、そんなすぐに振り払える事は出来なかった。


「ユーノさん! 帰りましょう!」


 そう笑顔で言う勇気の目には涙が溜まり始めている。


「その前に勇気、どうだった?」


 帰ってきた勇気を見て、ユーノは優しい笑顔で聞く。


「まず綺麗でした。テレビで見るような、丸くて、青い地球がありました。

 けど、お母さんやお父さんもあそこにいます。……それで、久しぶりに強く帰りたい気持ちに、なりました。けど、後悔はしていません。ほ、本当に嬉しかったです」


「そうか」


 勇気は涙を流しながらユーノの手を握る。早く地球に帰りたいたい気持ちだった。あと半分も待ちたくない。宇宙も楽しいけど、やっぱり帰りたい。


「ああああ! 帰りたいです! 今、お母さんと、お父さんに会いたいです!」


 途端に耐えられなくなった。勇気は握るのは辞めて、ユーノに抱きつく。

 久しぶりに泣いたと思う。ここ三年は帰りたいとは思っていたがそこまで考えていなかった。

 だが今さっき地球を見ると無性に帰りたくなった。


「ごめん」


 ユーノは一言そう言うとユウキが泣いているのを見守っている。


「ほ、ほら早く部屋に戻って落ち着こうよ! ね?」


 ヤージュは慌ててそう促す。今ここにいる宇宙人全員が、怒りの感情を我慢していた。

 勇気をこんなに泣かせるようなことをした奴らに。この中には攫うのに賛成していた奴もいるだろう。そんな宇宙人は自分にムカついていた。


 ヤージュの言葉でユーノは歩いて部屋に戻り始める。


「勇気、落ち着いたか?」


「はい、すいません」


 十分ほどで落ち着いた勇気は少し、テンションを低くして、答える。


「取り敢えず通信を書きます。お母さんとお父さんに今日地球を見たことを伝えないといけません」


「分かった」


 そして机に向かい、週に一度の手紙を書き始める。

 その文章には、本当のことを書いているのだろうが、今の勇気が書いているにしては明るく、楽しそうな印象があった。



♢♢



 地球を見て次の日、勇気はヤージュが部屋に入ってきて大事な話があると真面目な顔で言われ、話す為に椅子に座る。


「で、なんなんですか?」


 勇気は緊張して聞く。


「えっとね、私、明日船を出て、地球の日本で調査をする事になってるんだよね。だから、明日からしばらくお別れなんだ」


「え? 明日……」


 急な話だった。この船で二番目に仲良くなった人が地球に入って会えなくなるらしい。


 これは五年以上前から決まっていた事らしく、五年間地球のことを勉強していたようだ。

 だから最初から日本語に慣れていたのだ。


「なんで、もっと早く言わなかったんですか?」


 少し怒っている。今言われたって心の整理なんて出来るわけがない。

 勇気は泣きながら悲しみと、怒りの感情をヤージュに向ける。


「ごめん」


 ナージャは返す言葉が見つからずに、下を向く。


「ごめんじゃないです! 当たり前にいた人が急に消えるんですよ! 決まってたならせめて、せめて一ヶ月前くらいには言って欲しかったです!」


 一ヶ月前ならまだ、覚悟できたかもしれないのに。


 すると、ヤージュがプルプルと震え出す。

 そして、ヤージュも泣き始めてしまう。


「私も、言おうと思ってたんだよ! だけど、言えないよ! 勇気絶対泣いちゃうし、勇気は地球に帰れないのに私が行ったら、変に思われちゃうかもって、思ったからぁ」


「……」


 初めてヤージュの涙を見た。いつもヘラヘラしていて、楽しそうなのに。


「最近勇気は楽しそうだから! 悲しませたくなかったの! 自分のせいで勇気がまた泣いちゃったら。申し訳ない」


 大量の涙を流してヤージュは泣いている。

 そんなヤージュを怒る気には慣れなかった。


「ごめんね勇気、もうちょっと前に言うべきだったんだ!」


「もう怒ってませんから! 泣き止みましょう」


「ごめんね勇気ぃ!」


 ヤージュは勇気に抱きつく。

 そこからは本当に大変で、ユーノが帰ってからも泣き続け、大体一時間ほど抱きついて泣いていただろう。



♢♢



「実はな、一年くらい前から相談は受けてたんだ」


 ヤージュが泣き疲れて寝ている横で、ユーノは話し始める。


「リノコと話す時はヘラヘラしているが、俺に相談してる時は結構焦っていたよ」


「そうなんですか」


 よく考えればそうだ、言えなかったと言う事はそれ相応の理由があったのだろう。

 少し申し訳ないことをしたかもしれないと勇気は思う。


「まあ、今日は一緒に過ごすといい、ヤージュも結構悲しんでるんだ。て言ってももう寝るぐらいしかないかもだが」


「はい」


 そうして、勇気はヤージュが寝ている自分のベットで、一緒に寝る事にする。


 勇気が目を覚ますと、ヤージュがこちらをニッコリと見ていた。


「おはよう、勇気」


「おはようございます」


 目を覚まして直ぐだが、泣いてしまう。今日ヤージュとお別れなのだから。


「ふふ、勇気、泣かないでよ、勇気が地球に帰ったら、空いた時間で会いにいくから」


「それでも、寂しくて」


「そうだね」


 ヤージュは泣き止むまで待ち、ベットから起き上がる。


「じゃあ、私はもう行かないとだ。別に来てもいいけど、怖い人も来るから、勇気は来ない方がいい」


「……嫌です! 行きます!」


 少し迷うが、もうしばらく会えないのだ、どんだけ怖くても勇気は行きたかった。


「リノコ、本当に大丈夫か?」


「大丈夫です!」


 ユーノも心配してくれるが、もう決めたのだ。絶対に会える最後の瞬間まで目に収めたい。


「そうか、じゃあ行こう」


 そう言うと、ユーノは部屋の扉を開け、歩き始める。

 その後ろを緊張しながらついていく。



♢♢



「ちょっと話してくるね」


 ヤージュは小型の宇宙船のある場所まで行くと、集まっている知人と話に行く。

 今日来れない人たちとはここにくる前に寄って話している。


「ユーノさん、近くにいてくださいね」


「ああ、分かっている」


 勇気の視界が捉えているのは攫われた時に最初に居た宇宙人の一人、この船の幹部である宇宙人だ。


 見るだけでも怖いのに、時折こちらを何故か睨んでくる。

 理由は最近指示をするものが減っていてその原因が勇気だからだ。

 勇気と会った者は殆どが勇気可哀想となり、攫う提案をした幹部を嫌いになる。

 だが、その理由を勇気は知らないので、何故睨まれているかが分からない。


 そして、ユーノにくっついてビクビクしていると、ヤージュが帰って来る。


「じゃあ勇気、これでさよならだ。何か言っておく事はる?」


「有ります!」


 怖い気持ちを我慢して、ユーノから離れ、ヤージュの前に行き、話し始める。


「短くいきます。最初の頃、一人の時一緒に居てくれたり、無理やりですけど外に連れ出してくれたり、色々、有難うございます! 楽しかったです」


 ここ三日は涙がよく出る。そしてどちらも悲しい事だ。


「はははっ、私も楽しかった。勇気、次は日本で会おう」


「はい!」


 ヤージュも少し涙目になっている。


「ユーノは結構会えないかもしれないけど、元気でね」


「分かってるよ。けどちょっと、いや、結構寂しくなるな」


「そう言ってくれると嬉しくなるな。じゃあ、またね」


 最後に勇気とユーノに向けてそう言うと、ヤージュは宇宙船の方に歩いていく。


 そして、最後にこちらに手を振って、小型の宇宙船の中に入っていった。

 少しすると、小型の宇宙船は出発した。


「勇気、帰ろう」


「はい」


 少し虚しい気持ちになった。さっきまで一緒に居たのに、もう会えないのだ。

  部屋に戻ると、二枚の紙が置いてあった。

 そこには勇気へ、ユーノへと書かれている。


「あいつ、手紙を残してくれたらしいな、ほら、こっちが勇気のだ」


「有難うございます」


 そして、勇気はその手紙を読む。


――――


 勇気、言うのが遅くなってごめんね。余計悲しませたかもしれない。

 私は日本で教師をするんだよね。忙しいかもしれないけど、行けそうなら必ず会いに行く。

 楽しみしていてくれ、私も楽しみに勇気が日本に来るのを待っているよ。


            ヤージュより


――――


「ふふふ、もっと帰りたくなっちゃいました」

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