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もうそろそろ慣れてきました!

「ユーノさーん!!」


 そう勇気は勢いよくユーノに抱きつく。


「っ! だからあまり急には抱きつくなよ」


「はい!」


「はぁ、この会話何回したっけ」


 勇気が攫われて半年が経った。勇気は攫われて三ヶ月ほど経った時に、ユーノといる時だけだがだんだんテンションが上がっていき、そこから一ヶ月が経ったらこの調子である。


 ユーノとしては少しだけ嫌な部分もあるが、勇気が元気になったと考えると良かったと思っている。


 最初の頃は、泣いたり怯えたりしていたが、今ではよく笑う子である。

 こっちが本当の勇気なのだ。


「今日は何します?」


 抱きついたまま楽しそうにユーノに聞く。


 だがユーノは少し言いにくそうに口を開く。


「あー、ごめん今日は用事があってだな、少しお留守番をしてもらう事になるが、大丈夫か?」


「…………はい」


「……嘘つくなよ」


 誰が見てもわかるほど、勇気は落ち込み、すぐに涙目になってしまう。


 ユーノには慣れたと言え、やはり一緒にいないと怖いようで、まだ一人にさせると布団にくるまって泣いてしまうのだ。


 なのでユーノはいつも通りの提案をする事にする。


「安心しろ、今日もヤージュが来てくれる」


「そ、そうですか」


 勇気はほっとした表情をしている。


 あれからヤージュは時間が空いたら勇気に会いに来ていていた。

 最初の頃は勇気も怯えていたのだが、ヤージュの強引さとおやつの効果もあってか、一ヶ月ほどで、勇気は抵抗感がなくなっていた。

 ヤージュは勇気が二番目に慣れた宇宙人である。


 数分ほどしてヤージュが部屋に入ってきたら、ユーノは安心して部屋を出た。



♢♢



「あの! ヤージュさん!」


「ん? なに?」


 ヤージュと遊んでいると勇気は急に真剣な顔になる。

 そして、ヤージュが聞いてくると、勇気は喋り出す。


「私、もうそろそろ一人でお留守番くらい出来ないといけないと思うんです! なので、手伝ってくれませんか!」


 勇気はここ最近いつも考えていた。

 ユーノも時々この部屋を出ないといけない時がある。その時にいつまでもヤージュを呼ぶのも申し訳ない。ヤージュも仕事があるだろうし。

 そろそろ一人でお留守番くらいしないといけないと思っていた。

 

「お! 偉いじゃないか、いいよ、私が力になろう!」


 ヤージュはそう言うと勇気を撫でる。


「はい! 特訓です!」


 撫でられた勇気は嬉しそうに元気よく返事をする。


「ところで何やるか考えてるの?」


「はい! 最初は5分ほどヤージュさんに出ていってもらって、それに耐えます!」


 最初から長い時間やろうとしてもなので、勇気は徐々に慣れていく作戦を立てていた。


「そっか、じゃあ早速出ていくね!」


「ち、ちょっと待ってください! まだ心の準備が出来てません!」


「じゃ、ドアの後ろにいるから、がんばってー」


 プシュー


 勇気は止めるがヤージュは話を聞かず、ドアを開けて部屋から出ていく。


「え、えぇ、酷いですよ!」


 だが、言ってしまったものは仕方がない、勇気はこの部屋の外に出ることが怖くてできない為確認もできないのだ。


 ご、五分くらい私だってできますよ!


 少しもう怖くなっているが、それは想定済みである。この怖さを取るのが特訓なのだ。


 しかし、勇気の想定どうりにはならなかった。

 ヤージュが帰って来ないのだ。


「あ、あ、あれ? も、もう5分は余裕で過ぎてますよ」


 勇気は手元のタイマーを見ながらオドオドと言う。

 タイマーはいま8分を迎えているのだ。

 最初は少し遅れることもあるかなと思っていたのだが、3分も遅れることなんてないだろう。

 そもそもドアの近くにいると言っていたのだから遅れる方がおかしいのだ。


「も、もしかひっ、もしかして、何かあったんですか」


 だが、確認したいが、怖くてできない。


「と、トイレですよね、きっとそうです! あ、後1分くらいで帰ってきますよね?」


 そう自分に言い聞かせ、なんとか心を保たせる。

 だが、それもすぐに限界が来る。

 ヤージュは15分経っても帰ってこなかった。


「ふぅー、ふぅー」


 先ほどから何回深呼吸をしているだろうか、もう勇気は限界寸前である。

 目元は少し涙が溜まっており、体も震えている。


「か、確認、して見ますか」


 勇気はヤージュが本当にいるのか、ドアを開けて確認しようとするが、なかなか出来ない。

 だが、ここでずっとウジウジしているわけにもいかないのだ。

 分かっているのだが、それでも開けることを躊躇している。


「なんで、なんで帰って来ないんですかぁ」


 歯を食いしばり、なんとか涙を堪えている。


「ずっと閉じ籠るわけにはいかないんです。いつかは出ないといけませんから、それが今なだけです。

 いつかは出ないとです!」


 そう言いながら勇気はドアのボタンに指を当てる。


「いなかったらすぐ閉めましょう。………………………………えい! ああ押しちゃいました!」


 ビビりながらも初めてボタンを押す事に成功し、この部屋に連れて来られた時以来の部屋の外を見る事が出来た。


「ああ、見ないと」


 勇気はゆっくりとドアをくぐり右を向くと、


「あ、来た来た! よくやったじゃないか!」


「え? なんで」


 ヤージュが嬉しそうに座っている。


 正直勇気はヤージュがどこかにいったと思っていた。

 5分と言ったのに15分もいなかったのだ。

 なんでかは分からなかったが、そう思っていた。

 だが、ヤージュはドアの近くにいたため、嬉しい気持ちがあるが、混乱が勝つ。


「ん? なんでかって? それは外に出れるかなって思ってさ、そりゃ泣いたら帰るつもりだったけどね……て、あれ? 泣いちゃった」


 ヤージュが笑いながらいっていると、安心した勇気は泣いてしまう。だが、少し違う感情もあった。


「酷いです、5分って言ったのにぃ」


 勇気はちょっとだけ不貞ている。

 十分もこなっかたのだ、それにもし、勇気が部屋を出なかった場合、あと何分も帰ってこなかっただろう。


「ご、ごめん、せめて十分にするとかにした方が良かったね。外に出るは早すぎたかも」


 ヤージュは反省して、勇気の頭を撫でながら謝る。

 これが一番効く勇気を落ち着させる方法なのだ。


「本当ですよぉ! ひっく、ヤージュさんはスパルタです!」


「いやー、ごめんね」


 そして、勇気は三分ほど経つと、落ち着いたようで泣くのをやめる。


「は、早く入りましょう」


 泣き止んでから勇気は部屋の外にいると言う事を思い出し安心できなくなり、帰ろうとヤージュを引っ張る。

 だが、ヤージュはこっちには来ない。それどころか、勇気を後ろから抱き抱える。


「ちょ、ちょっと何するんですか!」


「せっかく部屋から出れたんだから、ちょっとだけ探検しよ!」


「無理です!」


 何言ってるんですかヤージュさんは! 私はもう限界なんですよ!


 勇気は精神的にもう限界なのだ。

 早く部屋に入って早く落ち着きたい。


「けど今戻ったら次外に出れるのはまだまだ先になると思うよ? 今出れたんだから、このチャンスを利用するべきだ」


「でもぉ……」


 そう言われて悩むが、やっぱり帰りたい。


「まあ連れてくけどね! もう捕まえてるから逃げれないし」


 そう言うとヤージュは勇気を抱き抱えたまま歩き始める。 


「ああ! ちょっと待ってください。心の準備だけさせてくだい! お願いします!」


「ダメダメ、どうせできないんだから」


「本当に待ってください! あ、あそこに宇宙人の方もいますし、待ってください!」


 そう必死に主張するも、ヤージュは止まる事なく、部屋から進んで少し先にある、外を見れる大きな窓の前まで来る。

 ここには他の宇宙人達も何人かいて、皆騒いでいる勇気を見ている。


「あ……」


 宇宙人達に見られているのに気づいた勇気はすぐに口を閉じる。


「――――」


「っ!」


 な、何か喋りかけられてます! どうしましょう!


 喋りかけられても勇気には宇宙人の喋る言語はわからないそして、普通に怖いので、どうすべきかがわからない。


「――――」


 勇気がテンパっていると、ヤージュが宇宙人と話し始める。


 よ、良かった。私に話しかけられたわけじゃないようですね。


 どうやら宇宙人はヤージュに話しかけていたようで、ヤージュと話し始める。


「――――」


「へ?」


 すると、急にヤージュと話している宇宙人がこちらを向いて、何か袋を勇気の前に出す。


 な、なんですか、これは?


 宇宙人の方も何もしない勇気に少し混乱しているようで、チラチラヤージュを見ている。


「あ、そうだった、勇気は言葉とかわからないよね。

 えっとね勇気、この人は勇気に食べ物をあげようとしてるんだよ」


「え? あ、そ、そうなんですか?」


「うん、だから受け取りなよ」


 どうやらこの宇宙人は勇気に食べ物を渡そうとしていたようだ。


「えっと、有難うございます」


 お礼を言いながら勇気は袋を受け取る。

 勇気が袋を受け取ると、宇宙人は手を振りながらこの空間から出ていく。


「優しいですね」


 勇気は宇宙人が出ていくとそう呟く。


「そんなもんだよ、怖い人もいるけど、大体はそこまで怖くないよ」


「そうだったんですか」


 正直宇宙人は怖いものだと思っていた。

 それは最初にあった宇宙人が怖かったり、勇気の勝手な印象だったりがあるが、ここにいる宇宙人はそこまで怖くないようだ。

 なので、勇気は少し考えを改めることにする。


「でも、これは出て良かったかもしれません」


 結果ヤージュの強引さが勇気を部屋から引き出し、恐怖を和らげてくれたのだ。

 ちょっと思うところもあるが、感謝する事にする。


「そっか! それなら良かったよ。

 あ、ほら、他の皆んなもこっちに来てるよ」


「え?」


 ヤージュに言われた勇気が前を向くと、さっきまでチラチラとこちらを見ていた宇宙人達が勇気の方に集まりだしていた。


「通訳はなんとなく私がするから、話してみようよ」


「はい」


 そして、この日はユーノが帰ってきて異常に気がつくまで、勇気は部屋の外にいることになった。

 宇宙人達は話すごとに食べ物が入っている袋をくれる為、勇気は十日分ほどのおやつを手に入れることが出来た。


 因みにヤージュは勇気が部屋に戻った後に、ユーノに結構叱られていた。

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