攫われた最初の頃です
「……ううん……っ!」
勇気は起きると、ユーノに撫でられていて少し驚く。
直ぐに自分の部屋ではない事に気づき、何があったか思い出すと、直ぐにうるうるし始める。
「おち……ついて……ホントに」
やはり辿々しいがユーノは撫でる手を止めず少し焦って言う。
その手は妙に安心して勇気は少し冷静を取り戻す。涙は流し始めるが、パニックにはギリギリなっていない。
「オヤに……レンラク……出来、る。する、か?」
「し、します! ひっく、どうすればできますか!」
勇気は必死にユーノに言う、一刻も早く親と話したい。
「お……おち……ツケ……あそこの……ツクエノカミに書け……そしたら……ソノブンショウヲ……送る」
「直接ではないんですか?」
「そうだ……デンシキキ……ニカク……でも良いが……写真を……送ると……オヤガ……見て……ヘンジ……してくれる」
勇気は直接は話せないと分かり少ししょんぼりする、だが、親と会話出来るだけでも少しは楽になる筈だ。
「じゃあ……ペン……と……カミ……だ……これで……書け」
「ひっく、ありがとうございます」
そして、勇気は紙とペンを受け取り書こうとすると、少し止まる。
「あの、撫でててくれませんか?」
また息が荒くなり、震えが大きくなり始め、勇気がユーノの方を向いてお願いする。
寝ている間に撫でてもらっていたからか、勇気はユーノの近くにいると、特に触っていたりすると、少し精神的に安定するようだ。
なので今のユーノがちょっと遠くに居る状態では勇気は不安そうにしている。
「ワカッタ」
そして再びユーノに撫でられて少し落ち着いた勇気は親に向けての文章を書き始める。
やはり親に向けてだと、十年会えないと考えてしまい辛い。涙を堪えようと歯を食いしばり、それでも涙を流しながら、勇気は書き始める。
書き終わると、勇気はユーノに紙を渡す。
すると、
「トクベツ……に、イマノ、ジブン、の、シャシンを、とって、オクルのも、良い、ぞ」
「ありがとうございます」
勇気の言葉を聞くとユーノは勇気から離れて地球にはない形の、カメラなのだろうものをこちらに向ける。
「すこし、待ってくださいね」
勇気はイスから立ち上がり、できる限り涙を拭う、ユーノが離れたため震えが強くなる。
それを抑えて頑張って笑顔を作る。
パシャリ
撮られるとすぐにユーノのとこへ行き、精神的に安定してくると写真を見せてもらう。
写真での自分の姿で初めて自分の姿を見た気がする。
赤髪の可愛らしい幼女が、泣きながら、くしゃくしゃに笑っている。
これでは親に心配させてしまうと思ったが、今の自分にはこれが限界だと勇気は分かっている。
「ありがとう、ございます」
そして、それからはユーノと話すことになった。
♢♢
「ユーノさん、手を握っていてください」
「あ、アア」
幼い体だと、さっき寝たのに三時間ほど経つと眠たくなってくる。
勇気はユーノのおかげがここ三十分は泣いていない。
ユーノも寝る時間のようだ。
ユーノさんは私のお世話係なので、同じ部屋で寝るため、それなら近くにいてくれた方がいいと言うと一緒に寝てくれることになった。
そしてよりくっつくために手を握って欲しいと言ったのだ。
「ごめんなさい、やっぱりまだ怖くて」
「いや……アヤマル……ヒツヨウ、ハナイ、悪いのはワタシタチ……の方だ」
ユーノはそう言うが、この人が何も悪く無いことを勇気は知っている。
「そんな事ないですよ」
ユーノが居なかったらホントに一日中怖くて泣いていただろう。
「そう、か」
そして、勇気はすぐに眠りにつく。
数時間後、勇気が起きると目を開けているユーノが居てた。
ユーノはだいぶ前から起きているのにも関わらず、勇気の隣にずっといてくれたらしい。
♢♢
「もう慣れたか?」
宇宙に来てから一ヶ月がたった頃ユーノはだいぶ馴染んできた日本語でそう質問してみる。
「少しは、慣れたと思います」
相変わらずユーノが居ないと怖くなって泣いてしまうのは変わらないが、生活的な面では慣れてきたのかもしれない。
ユーノ以外の宇宙人はトラウマになっているようで、この部屋に別の宇宙人が来る時、いくら優しくてもても見た瞬間にユーノの後ろに隠れてしまう。
だがユーノはいつまでユーノが居ないと泣いてしまうのでは勇気も居心地が悪いだろうと思い、幹部の奴らに合わせるのも気が引けたため、二十分ほどお留守番をさせる事にする。
「ちょっと、今日は一人で、お留守番をできるか?」
「え?」
勇気はそう言われると、固まる。
出来る気がしません。けど、ユーノさんも期待してくれてるんですよね。
正直勇気はまだ無理だと思っている。ユーノがそばに居ないのは考えられなかった。
「わ、分かりました。がんばります」
大丈夫ですよ、最近は泣くことも減りましたし。大丈夫です。
「ありがとう、じゃあ行ってくる」
「は、早く帰ってきてくださいね!」
「ああ」
プシュー、シュー
ドアを開けてユーノは出て行ってしまう。
「大丈夫、大丈夫」
行ってすぐに少し自分の選択を後悔した、思った以上に体が震える。
勇気は気を紛らわすために、大丈夫と言いながら部屋を歩き回ってぐるぐるしている。
5分後、当然まだユーノは返ってこない、お留守番と言われたのだ下手すりゃ一時間以上の可能性もある。
せめて何分くらいで帰ってくるか聞いておくべきだったと思った。
何分後に返ってくるかもわからず待たないといけない、それは勇気をさらに不安にした。
一旦寝て見ようかと、勇気はベットに寝転んでみる。
だが、それがいけなかった。目を瞑ると、いろいろな事を考えてしまう。
ふと、考えてしまった。自分はあと、訳九年十一ヶ月、親と会えないのだと、
「っ!!」
そこで、勇気の我慢は崩壊する。涙が溢れ出し、まだまだ会えないと言う絶望感が勇気を襲った。
これはユーノが出てきてまだ五分の出来事だ。
「ユーノさん、ユーノさん! 早く返ってきてください!」
いっそ扉から出て行こうかと考えたが、怖くて踏み出すことなんて出来なかった。
宇宙人が襲ってくるかもと言う恐怖と、当分親に会えない絶望、それは本当に辛かった。
「お母さん、会いたいです」
もうパニックになっている。勇気は怖くなり、最初の時のように、ベットの下に小さく潜り、びくびく震えながら、泣き続ける。
「ああああ! あああああああ!!」
寝付けない、外にも出れない、勇気はただ待つことしか出来ない。
そこから更に5分ほどたった時。
プシュー、とドアが開いた。
「!?」
怯えながらも勇気はユーノが帰ってきたのかと希望を持って布団の下から外を覗いてみる。
だがそこに居たのはユーノではなく、宇宙人なのであろう白髪の女性だった。
当然勇気はまずは恐怖を覚えた。なので息を殺し、布団の中で隠れていた。
だが、
トットットッ
足跡がどんどん近づいてくる、
来ないでください!
勇気は願うことしか出来ない、後ろは壁なので逃げ場がない。見つかったら逃げられないだろう。
「っ!?」
「あ、見つけた! すごい可愛い子じゃん!」
この部屋には隠れれる場所なんて限られているため、勇気が隠れ切るのは無理な話だった。
すぐに見つかり布団を捲られ覗き込まれる。
バレてしまった勇気はできるだけ距離を取ろうと、布団を持って隅に寄り小さく布団にくるまる。
そして、大量の涙を流しながら、女性の方を見る。
「怯えなくても良いんだよ、私は別に何もしないからさ! あ、そうそう、私はヤージュって言うんだ! よろしく」
そう名前を言い、白髪の女性、ヤージュは近づいてくる。
勇気にとってそれはジリジリ近づいてくる恐怖でしかない。
「来ないでください!」
五十センチほどまで近づいてきた時、先ほどの倍くらい震えて、勇気は言い放つ。
「そっかぁ、うーん、あ! ちょっと待っててね!」
ヤージュは何かを思いついたようで、走り出してどこかに行ってしまう。
「ど、何処か隠れないといけません! えーと、えーと!」
そして、再び一人になった勇気は当たりをキョロキョロと見て机の下に隠れることにする。
「ユーノさんっ! 帰ってきて……」
ヤージュが再びこの部屋に来る前に、ユーノが帰ってくればと希望もあったが、そんな希望はすぐに打ち砕かれる。
次にドアが開き、帰ってきたのは笑顔で大きな袋を持ってきて帰ってきたヤージュであった。
「あれ? さっきの場所にいないな……あ! 見つけた!」
ヤージュは当たりを見回すと、直ぐに隠れている勇気と目が合い、ニコニコと近づいていく。
勇気はちょうど今の自分なら入りそうな袋に入れて連れ去られるのではないかと思い、更に震える。
涙に関しては先ほどよりも多く、滝のように流れている。
「来ないでください!」
更に避けようと出来るだけ角の方による。
「大丈夫大丈夫! 怯えないで、ほら、私の宇宙虫あげるよ!」
近づいて袋の中をガサゴソと何かを探し始めたと思うと、宇宙虫という宇宙人達の大好物を勇気の前にばっ! と出す。
「ひゃがやぁ!!!!?」
ゴンッ!
突然宇宙虫を出され、驚きすぎて机に思いっきり頭をぶつける。
勇気はこの虫が嫌いだった、見た目もキモいし、味も吐くほど美味しくない。
「え? あれ? 宇宙虫嫌いなの? 珍しいね」
反応的に分かったのか、直ぐに袋の中に詰める。
そして、うーん、それじゃあ、と、またガサゴソと袋を漁り出す。
「これならどう? 宇宙ヘビの肉!」
そういうと、袋の中から更に小さい袋を出して、そこから宇宙ヘビ(百メートルくらいのヘビのような生物)の、干し肉を取り出して勇気の前に出す。
これは勇気も美味しいと思っている。正直欲しい。
けれど食べるためには自分から近くに行かなければならない。
「ほら、ご飯だよー」
さながらペットに餌をあげるように、ヤージュは、甘い声を出す。
「……」
勇気は迷い始める。そろそろお腹も空いてきている。それにこの干し肉は結構美味しいのだ。
引っ込んでいる手が、干し肉に向かってゆっくり震えながら動き始める。
「お! これは良いんだ!」
「うひゃあ!!?」
近づいたところで喋られたため、驚いてせっかく干し肉に届きそうだったのにまたもとどうだ。
「あはは、ごめんごめん。ほら、今度は何もしないから」
三十秒ほど経つと、また勇気は干し肉に向けて手を動かし出す。
今度はヤージュも学んだようで、何も喋らずにじっと勇気が取るのを楽しそうにじっと待っている。
動かし始めて二十秒ほど経つととうとう勇気のでは干し肉に当たり、掴む。
触ってます、近いです! 早く獲らないと。
勇気の手とヤージュの手は十センチしかなく、少しでもヤージュが動けば勇気はまた驚いて手を引っ込めるだろう。
「っ!」
勇気は、ばっ! 、と干し肉を獲る。
そして、もぐもぐと直ぐに食べ始める。
「あ、やった! 成功だ! まだまだあるよ!」
ヤージュも勇気に食べ物をあげることができて嬉しいようだ。
勇気も警戒心が薄れてきて、今度はシュッと、干し肉を取り、また口に入れる。
「あはは、可愛いなぁ、ほら! もう一個!」
「っ!?」
ヤージュが三つ目を出した時、同時に頭を撫でてしまったからだろうか、勇気は干し肉を取り、撫でている手から逃れるため反対側の机の角まで素早く移動する。
「あ! 私のお菓子を貰っておいてそれはいけないなぁ」
勇気の行いにヤージュは机の中にその巨体(勇気にとっては、)では少し狭いなか、入って来て、手を角にいる勇気の勇気の右と左の壁に付けて逃げ場をなくす。
「ああ、ああああ!」
「じゃあちょっとグイグイ行くよ?」
♢♢
「はぁ、何をしてるんだ、てかなんでここに入ってるんだ」
ユーノは帰ってくるや否や、泣いている勇気に勇気に抱きつきながら顔を擦り付けている友人がいたため、直ぐにやめさせて、何をしているかを聞く。
「ははは、いやーこの部屋に来てこの子を見つけたらさ、遊んでたんだよね」
「元から泣いてたのか?」
「え、うん、そうだね、もうボロボロとね」
「そうか」
まだ勇気にはお留守番は早かったようだ。
「まあ気分転換になるかなって」
「結局泣かせてるけどな」
「あははは! それはごめんね! あ、じゃあそろそろ帰るよ!」
軽く謝ると、荷物をまとめ始める。
まとめ終わるとヤージュはユーノの後ろにいる、勇気の前に来て、しゃがみ、目線を合わせる。
「最後にこれあげるよ、じゃあね、勇気!」
ヤージュは勇気に干し肉を詰めた袋を持たせて、部屋のドアを開ける
「きょ、今日はありがとうございます。後この肉も」
これは言っておきたかった、確かにヤージュは怖かったが、あのまま泣き続けるよりはマシだったと思う。
「気分転換になってたなら良かったよ」
そしてドアが閉まる。
「まあ結果良かったのかもな、リノコの話し相手が増えたかもだし」
正直ユーノの見られる範囲も限られている。今日みたいに幹部の奴らに呼ばれたりしたときは、正直連れて行きたくはない。
「まだひょっと怖いへふけど」
そう、貰った干し肉を食べながら勇気は言う。




