連れ去られた日です
高校受験を成功させて数日経った時、勇気は昔のこと、宇宙にいた時のことをを考えていた。
「もう半年前なんですか」
宇宙に連れ去られた時、勇気は最初どうしようもなく不安で、怖かったのを覚えている。
今の勇気では想像もできないほどに、十年前の勇気は弱々しかった。
「本当に懐かしい記憶です」
♢♢
目が覚めると勇気は見知らぬ場所にいた。
「こ、ここは何処ですか? 夢?」
そう思ってしまうほど、勇気はありえない空間にいた、周りには機械が大量にあり、壁も金属でできている。
そして、一番に目を引くのは培養ポットだ。
「君の事……を観察……させて……ほしい……拒否権は……無い」
そう地球では見たことない生命体に完結に伝えられる。
当然勇気は恐怖で体を震わせている。
突然そんな事を言われても意味がわからない。
「ここは何処なんですか? あなた達は誰なんですか?」
背が小さい、声が高い、口調がおかしい、そんな事分かっている。
だが、そんな事よりもこのよくわからない部屋に人間では無い何かが目の前にいる状況が一番の恐怖である。
「ワタシ……タチ……ハ、キミカラ……ダトウチュウジン……二……アタル……ダロウ。タガ、アンシンスルン……ダ……チキュウヤオ……マエニキガイヲ……クワエルヨテイハナイ……ジュウネンカン……カンサツサセテホシイ……ノダ」
安心なんてできるはずがない、知っている人が誰もいない、知らない場所、怖いに決まっている。
勇気の頭は混乱し、パニックになっている。
「分かりません! 分かりませんよそんなこと言われても!」
「トリアエズ……ヘヤニ……イクンダ」
そうして、訳もわからないまま勇気は知らない部屋に連れられる。
「ココニ……イロ」
そして、勇気は柔らかいベットに寝転び、毛布の中に入る。
ベットは広く120センチにも満たない今の体の勇気には持て余すほど広く毛布も簡単に全身覆い被せられる。
「うう、ううううっ!」
涙が溢れ出る、もう親とは会えないのだろうか。
あの簡単な説明では今の混乱状態の勇気には何も理解できず、恐怖に泣き崩れるだけだった。
少しすると、地球の人に近い見た目の男が入ってくる。
男は申し訳なさそうに下を向きやる気が無いのか、少し嫌そうな顔をしている。
「コレカラ……私……は……君ノ……オセハをする……ユーノ……だ……よ……ろしく」
日本語を喋り慣れていないのかユーノと名乗る男は先ほどの生命体よりはマシだが、つまりつまり言っており発音もだいぶおかしい。
「っ!?」
勇気は毛布にくるまって壁の端にあるベットの角に小さく蹲りぷるぷると震えている。
今は身長120センチにも満たないため、蹲ると本当に小さい。
「セツメイ……するから……キイテくれ」
男はできる限り笑って勇気に言う。今の勇気は相当怯えている。
「何なんですか! ここは! お母さんには、お父さんには、会えるんですか?」
さらに大粒の涙が勇気から溢れ出てくる。
「オヤには……イズレ会える……だが……ジュウネンはアウコトガ……できない……ホントウニ……モウシワケない」
「十年っ!?」
勇気にとって、いや、誰にだって十年は長い、勇気はもう会えないかもと思っていた、だが、会えることは分かっても十年だ、また会えると言われても、涙は止まらない。
「そして……キミノカラダ……だが……イマハゴ……サイノカラダ……だ……アトセイベツモカワッテサイボーグニナッテイル」
「そんなこと言われても、分からないですよ!」
もう何を言われても勇気は混乱する。今説明されている事はは理解できなかった。
「オチ……着いて」
「うう、ひっく、うううう」
ユーノはそう言うが、勇気は泣き続ける。
「トリ……敢えず……キキ……たいこと……ハ……いつでも……キイテクレ……ベツニ……普通の……ハナシでも……良い」
「ひっく、うう、ああああ!」
もう耐えられ無くなってしまう、なりふり構わず泣きじゃくる。
そして三十分ほど泣くと、小さい子供の体だからかコロッと寝てしまう。
♢♢
「お母さん」
勇気は寝てもなを涙を出して震えている。
「カワイ、そう」
ユーノは眠っている勇気を撫でる、さっきまでずっと泣いているのを見て、どう言う心情かが分かる。
きっとどうしようもなく怖いのだ。
そして、今この場所に勇気が安心できる物はない。
「ホント……二……カワイ……そう」
この子は状況を飲み込めるのだろうか、笑顔になるんだろうか、この子の未来を観察という目的だけで変えるのは、やって良いことなのだろうか、ユーノはそんな事を考え始める。
勇気が起きたのはこの二時間後だった。




