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Ep5:通信機

 このブラックホールにライト・オブ・ホールが現れた。ここにジグルを放り込めば新たな世界線に向かうことが出来る。そう睨んだ矢先、ライズが通信を開いていた。それは異なる次元から受け継いだ意志の悪戯によるものだった。フォレスからブラックホールへようこそ、君達・・・として、宇宙間戦争の真っただ中、ジグル、ティム、ライズの三名はブラックホールの中へと宇宙船ごと突っ込むという規格外の行いをしていた。


 そして、その電波はティムが傍受し、分析するとの事だった。ギリギリまで船をブラックホールの渦中に近付け、ジグルを投げ込むという方法。その解析係として電子コンピューターであるデイミー・クレントン・イズマというプログラムを起動させていた。


 何故それを使ったのか。それはジグルが新たなる世界線へ変容する時に、どれほどの苦痛と快楽を得られるか、そして他の人類もブラックホールを抜けた先に何が起き、何が現れるのかを心待ちにしているという。


 一つ忠告を――と、ティムは言葉を尽くす。


「いいかい、ジグル。君は大いなる意志の元から分散された意志に過ぎない。そこを誤って力を放出しすぎると宇宙の中で散り散りになるんだよ。インシュビーだった頃に砂となった。そして、臣子道彦の時にその魂はライト・オブ・ホールによって宇宙移民計画という科学まで走ったが、犠牲と成功のもと、自らが残骸となってインシュビーは君に宿った。その兆候は何だと思う?」


「愛撫を受け続けて情報交換する只の人形」


「正直に言いたまえ」


「骨が折れる程の怪我をしたよ。なのに、勝手に再生したし、気付いたら破壊を

産んでいたのかも知れない。とてつもない高揚感に浸されてねぇ」


「気を付けろ。このブラックホールは正直だ。私の見るところ君は直ぐに闇に浸される。その隙間にインシュビーが宿った。最古の、だ。つまり君はインシュビーの大いなる意志をも超える光ではない、闇のエネルギーによって生まれ変ったんだ」


「ティム。だから僕をブラックホールの残骸だと言ったんだね?」


「私もコトワリから意志を見直すよう伝えられた。だけどそこは戦場だった。まさにこのイラ・ウーズ帝国そのものだ」


「貧困、科学・・・臣子道彦が次代に降臨する」


「救った形が以下の状況であれ、一度も二度も変容して往くと、そのエネルギーは次第に薄まってゆく。用途によって扱い方を考えるしかないんだ。偶然、ジグルと私は出逢った。君も私も母胎の中に存在した、たった一つの点だったに過ぎない」


「魔核鉱石は?」


「注意するよ。私が両性になったのも、たった一つの点だった大いなる意志の表れかも・・・」


「君もエネルギーを感じるのかい?」


「私もいずれ変容するかも知れない。もしも、新たな運命に紡がれるなら、一つになりたい」


 そう。ライズ・フォーレム自身も変容しながらも、記憶の奥底にある意志とのコンタクトは忘れていなかった。そして、次元フォレスでの一端を、立場を、出来事を忘れずに科学者としての研究を続けていたのだった。それは、人工生命体としてのライズ・インバルスが領主ビオ・ダルムとして生きて来たからこその証かもしれない。


「ミヘル・・・僕は覚えているよ」


 そういってライズは一室の通信電波室でペンダントを組み込む。

 次元を超えてその通信は新たなる世界線に向かう途中の者にも通じる。

 マクスエル総督にも、その電波を流す。

 ライズ自身も、次元フォレスから派遣された一つである。


―ザザー―


《応援を頼みます》


「繋がった、ミヘル、無事か?」


《意志は繋がっている様ね。異なる生まれ変わりのライズ・・・確かに私は調査に向かった。そこで変わったわ。アントレアの娘として育ち、そして貴族たる者の由縁を誓った。そして、学問を焚きつけられ王国の騎士となった。救うことが出来なかったの》


「必ず迎えに来るよ。それまで泣かないでくれ」


《でも、私は・・・》


 恋人よ、如何にしてブラックホールとライト・オブ・ホールの中を突き破る?例えばコトワリに「これまでの愛の苦境」を伝えればよいのではないか?さすれば、眩き王の光が宿り、再び一つと成るのではないか?


 ミヘル・アントレアとライズ・フォーレム。彼等はミヘル・ブレトーナであり、ライズ・インバルスである。何れも同じ立場でありながら、異なる立場に存在する。それは再び会おうにも、会えない形がそのたった一つのペンダントを繋げる。



 「別れ」というものを体現する。再び、宇宙間戦争という名の艦隊戦を補おうにも補う程の距離が見いだせていない。いずれ繋がろうにも、同じ次元に存在しないお互いの正解が世界線によって阻まれる。だからブラックホールとライト・オブ・ホールの小さなエネルギーとは比べようが無いのだ、と宇宙はうなりを上げる。


 そこに求められていた二つの生命の繋がりとは、如何に儚くも悲しく、哀れで惨いものか。そのたった一つの通信機がお互いの繋がりを出来るだけ長く繋げようとしてくれていた。


 だが、ミヘル・アントレア自体は最早ミヘル・ブレトーナとの融合を遂げていく。変容によってだ。異なる容姿、性格になろうとも、何れは同じ立場へ戻れると信じていた。ライト・オブ・ホールのエネルギーが正直なブラックホールによって曲泉の次元をも飲み込んでゆく。


 誇り高い貴族として産まれ、あのか弱き存在が一挙に強い生命と生まれ変わろうとしている。その一瞬の中で彼女は泣いていた。子供の様に。


≪ねぇライズ・・・もし、あなたに再び会うことが出来たなら、私達で元の魂に戻りましょうね?・・・私はもう、全てを失った。あの星にも戻れない・・・グスっ≫


「何故だミヘル!“ぼく達”は一心同体だろう?だからライト・オブ・ホールの中でも通信機を聞くことが出来た。俺は今、ブラックホールの向こうの星”アマテス“の宇宙総艦隊に居るよ。だから還ってくるんだ!」


≪そう、私達は一心同体。ライト・オブ・ホール・・・グスっ・・・あのとき眩き光R・O・ソウルと闇のD・O・ヘルと出逢った。そしてそれぞれのホールに飲まれた時感じた―――まるで体が別の空間へ吸い込まれて消滅しそうになった―――≫


「ミヘル、君は消滅などさせない!俺が君を決して―――」


≪それは『最古の王ブレトル』から魂が二つに別れてミヘルとして産まれたわ・・・グスっ・・・時と同じよ。そしてあなたは唯一の私の拠所だった―――別れる前にそれが言いたかった―――ごめんなさい・・・グスっうぇえ・・・もう、戻れないよォ・・・グスっ・・・きっと次の、ウェ、世界線は、エグ、闇だからぁ、ゥうあぁぁ―――――≫


 しかし一方、デイミー・クレントン・イズマはその通信の内容を傍受していた。ブラックホール同様に、この電子体プログラムも正直だった。


「私、ティム・N・ランカーがライズとミヘルの通信を傍受した」

≪ビビ、イラ・ウーズをアマテスと呼び、データーと化した、ミヘルとライズが通信をシテイタのだ。彼等のエネルギーはスデニ、最高潮デある≫

「君も、翼の民ガヴリールの魂が混入されている。彼は翼の民の中で一番屈強な体を持ちながら、神の頭脳と呼ばれていた。ジグル、我々はブラックホールにて変容を迎えるよ。恐らくね」


 ジグルについて、ティム・N・ランカーは、パヘクワードから持ち出した金貨コインを珍しそうに眺める。その様子を見たジグルはティムの予知的能力を感じ取る。もしかして彼も同じダーク・オブ・ホールの中から現れたのではないかと考えるのだった。


「ジグル。コトワリとは、何もかも授けてくれる訳じゃない」

「確かに。それで闇を抱えていた僕だけど、引き入れてくれるかな?」

「もうとっくに引き入れているよ。それにもう、私達は、ね?」

「ありがとう。そして抜けてみせるよ。ここからね」


 宇宙船にて、ジグルはその身をロボットアームへ繋がれ、ブラックホールの渦中に身を遣る。その磁気嵐の中か、アームを操縦していたライズの体だけでなく、ティムの体も全てブラックホールへと飲まれてしまった。余りの出力不足に宇宙船が耐えきれなかった事をコトワリは見定めていた様である。そして、魔王とされていた、闇の存在たるものも、ブラックホールに飲み込まれ、次代の世界線へと向かってしまった。残された人類たちは魔核鉱石により、惑星ごと渦の外に出られ、異なる世界へと向かうのだった。これで新たなる希望が見えたかのようであるが・・・果たして?

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