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Ep3:別次元の存在

 ジグルはブラックホールの中に佇む自分自身を見つめた。服装はパヘクワードでの白衣のままである。そして、空中遊泳のように宇宙間を漂っていた、いわば、何者かの存在に気付いてほしいと言わんばかりの格好である。だが、それをも不純物として宇宙の残骸として感じ取られた。その間にもコトワリの示す闇の住人であるが、何とかティム・N・ランカーの示す、“宇宙の真理”に触れ、何れブラックホールを抜け、ライズ達と合流しなければ自らの闇を拭いされないだろう気がした。


「中でもね、ブラックホールが大いなる意志と関りがあって、強い念を生命に送るんだ」

「ティム、それはどういう事だい?」

「宇宙の真理はね、絶大なエネルギーからライト・オブ・ホールやダーク・オブ・ホールのような幾つもの遺伝粒子を運ぶエネルギーに“答え”を探させるんだ」


 それ程に絶大なエネルギーを灯すなど、如何なる答えを紡ぎ出すのだろうか。ジグル自身が話を聞く限りでは、この狭き空間たる拡大は、新たな世界線を、糸を吐き出しそうである。しかもジグルは大いなる意志について微弱ながら“畏怖”なる狂気を思い浮かべる。そこにはインシュビーが居て、光とは異なる強烈な光を灯していたのだと信じる。


「“アークマター”の中に“出来の悪い形”が生まれてくるんだよ」

「何だい?それは」

「この空間が人柱となるように、新たな構想を迎えてゆく」


 新たな構想と聞いたジグルは、自らの体が闇の住人に染まる気配を感じる。そこからは自ら放ったブラックホールという形を如何にして抜けるか、という想いしか成らない。冷たくて温度のないこの情景の中でティム・N・ランカーと話していると次第に科学文明に近い話題となる。但し、「そのままではいけない」と焦るジグルは自ら放った魔核鉱石の中身を思い知ることになる。


「へぇ、魔核鉱石とはね。それって体を強化するだけじゃなく、意志と魂の強度を上げるというものだね」

「そうだね。僕は自らの子孫を作るための新たな希望を宿した訳さ。今となってはもう、役にも立たないけど、知識は持ち帰るつもり」

「知識を持ち帰る?ブラックホールから変容するとどうなるか知らないの?」

「どういう意味?」

「分解でなく、変曲するとのことだ。つまり、元通りの記憶を保てない・・・かな?」


 ジグルは再び濡れた。完全な形でなく自らの価値観と異なる自分自身になれる事を。どうも疼きの様なものを感じられ、次第に胸が熱くなるのを感じた。只の人間となってしまった今が、闇の住人に染まり、新たな変化を加えるエネルギーを感知できると。また、再構成、再構築、再生を期するのでなく、変曲するという異なる意志と魂となる意味を深く感じられる様になる。それにはティム・N・ランカーを利用し、己の向く様に誘おうとするが、果たして彼が付いて来てくれるか謎である。


「例えば、君の関係は何と繋がっている?」

「ブラックホールという生命の嵐さ。抜け出せない中に、やがて別の形となって抜け出ることが出来る関係と繋がっている」

「今、機械で君の生体反応を調べるとね、光の様で闇の様な祈りを測定しているよ。また、金貨らしきものがその身から離れてくれない様だね」

「これは、以前の世界線で大臣から貰ったものさ・・・」

「いい形状のコインだ。文様が掘られている」


 コインには10の星座と、7の変革らしき人物が描かれている。この世界線での見え方だとことわりの中へ引き摺られる様に形状を保っていると考えた。ティム・N・ランカーは「私は科学者でね」と態度を改め、ジグルへと話し込む。その瞬間ずつを選んでいる内にティムは「イラ・ウーズ帝国との関り」について話し込む。


「イラ・ウーズ帝国には809の機関が有ってね、私が被検体を渡すと、新たなチップを渡してくれる」

「取り引きをしているのかい?」

「いや、新たな人物について少し腑に落ちるところがあるんだよ」

「それは?」

「逢わせてあげようか」


 すると、宇宙船は一気にブラックホールの渦の方へと向かい、一つの惑星から電波塔を連ねるように、ハイパージャンプを繋げていた。そして、渦中に見える銀河の中を突き抜ける。


「・・・何が起きたの?」

「ハイパージャンプ。転送ワープよりも速い技術だよ」

「ここは何処だい?」

「惑星イラ・ウーズ・・・イラ・ウーズ帝国かな」


 周囲は艦隊に囲まれており、一つの惑星に基地が設けられていた。それは二つの惑星を繋げたような形であり、お互いのレールで拠点同士を橋渡ししている様にも見えた。ジグルは感動した。この様な文明を見た事も無いと言い、拘束具から外された解放感よりも強い執着心に侵された。ジグルにとってそれは科学文明の塊であるから、遥か以前よりも遠い世界線より広くも感じられた。


 そして、ティム・N・ランカーはジグルと共に宇宙船から降りて、生体ロボの暗証コードを合わせ、中へと入る事にした。ここは、大きな増築物で、研究施設よりも遥かに広く、ドッグと呼ぶには規模が違い過ぎる。ジグルは濡れに濡れて、歩き辛さを感じられなくなる程に、涙を流した。


「おや?感動したのか。それに、何だか君、精力絶倫のようだね」

「ふふふ、濡れたのさ。この感動的な瞬間を目の当たりに出来た」

「着替えなよ。予備ストックの衣服は別室にあるから」

「ごめん。理を感じるので、ビショビショしててさぁ」


 大いなる意志との関連、新たな科学の形式、ブラックホールという状況下にジグルは「自分も触れてみたい」との欲求を増やしていた。いつか異なる世界線に辿り着き、ライズ一行と再会したのなら、同じ規模の文明を拵えようと考えた。


 ただ、少し妙なエネルギーを感知した。別の次元から現れたような命であり、人類には違いないが、神・マーズのような干渉を受けると、ジグルの闇の力が感知する。「誰だ?」と声を発してみたが、その声を察したティム・N・ランカーが「紹介するよ」と言葉を放った。


―ヴイイン―

「やぁ、ティム。帰ってきていたんだね」

「よう。今日も生きていた?彼はジグルという」


 何か、ジグルの触覚的な器官が鼻を突いた。

 そして、その彼の言葉を聞いて驚く。

 しかも驚愕する。


「ライズ・フォーレムだ。45歳になる」

「おっと、ジグルが驚いているよ。また、濡れたのかな?」

「なに?濡れているだと?ははは!」

「それより、彼女とは連絡を取っているの?」

「あぁ、ミヘルだよね。連絡して――」


 ミヘルの名を聞いたジグルは、計算を間違えたように両の目を泳がせた。あのライト・オブ・ホールでイーターが先に別の世界線へと送った筈が、ここに存在する事に違和感を渦巻かせていた。だが、本当にミヘルであれば、そのエネルギーを感知している筈である。何せ、眩き王の力を宿しているのだから。しかもライズはあのフォングランではなく、フォーレムである。眩き王のエネルギーを感知することも出来なかった。


 そう思っているジグルへライズから一言伝える。


「君は、宇宙魚さかなだね?」

「宇宙魚?」

「闇の住人のオーラを感じる。僕は生体エネルギーを感知できるように改造された特別人種なんだ。通信機を使い、別の次元の者とも――おっと、関係なかったね」

(ふぅ・・・ん)


 闇を秘めるジグルが、ブラックホールの渦中で次の変容を迎えるであろう出逢いに遭遇する。以前までエイドカントリーズで王になり、科学文明を灯す博士となり、神と呼ばれていた魔王が、コトワリによって力を除去され、エネルギーを感知できる只の人間となって、初めて異なる文明に触れる。それは次代の世界線にも影響するであろう、序幕でもあった。

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