表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

Ep2:宇宙の真理

 僕は得体の知れない惑星で闇の住人と化した。たった一人で居たような気がするけど、何故ここの住人達は闇よりも光を見る傾向か、少し考えてみた。人間と言っても人間らしい風貌のしないその姿は、透明人間に近い状態で、辺りの風景と同化している様にも見える。何故ならそこには太陽が在ったから。時には食事を摂り、狩りをし、見た事も無い異形の生物を調理している。王国ならば必ず味付けをしているだろうけど、この住人は味付けも匂い消しもしない。辺りに塩分や糖分、それにハーブらしき草花はあるのに何故か使わない。これは僕に対する仕打ちか、と思った。考えるだけ無駄かな。この魔王たる僕の存在はコトワリによってかき消されたのだから。


「ジグル」

「なに?」

「味付けは魔王様の仕来たりによって、してはいけないんだ」

「どういう意味?」

「生贄にするという事は、生血すら拒絶するという事。お前の判断は誤りだらけだ」

「なぁ~・・・んだってぇ~・・・?」


 おっと、いけない。危うく本性を明かすところだった。訳の分からない地へ飛ばされてこのまま始末される事があると、色々と不都合だ。それに未だ、次代の世界線へと向かう方法が分からない。ここはどうやら失敗したらしいから、異なる世界線を追わない限り自分自身を支配する闇が表せないし、示せない。ただ、一つ情報があるとすれば、ここには通常の人類が到着し、何かをしているという。天文学で習っていた惑星着陸と同じ事か?未確認生物や物体を採取し、そのまま自らの惑星へ持ち帰り、研究と実験を繰返す。まるで僕の居たエイドカントリーズの研究施設と同じだ。もし、僕の発案した人工生命体と機械生命体がここに訪れていたら、科学は新たな道へ発展していたに違いない。それに魔道が使えない限り、コイツ等を操作する事さえ出来ない。思考を変化させ、住人達の誰かを生贄にし、そして人類の研究素材にしてもらい、僕を発見してもらう計画を立ててもいい。とにかく、変容しなければいけない条件がある筈なので、このブラックホールと呼ばれた宙域にライト・オブ・ホール或いは、ダーク・オブ・ホールが存在していればいい。それに僕が人類に発見されたなら、是非とも協力してあげたいものだ。こんな僕だけど、博士である事には間違いない。


「力が発揮できない。あの頃の僕は一体、どこへ?」

「お前はどうやら魂が分離した、と見た」


 一つの生物たる人の形がそう言った。どうもおかしい。伝えた筈のない事柄が彼に次々と晴らされてゆく。寧ろ、同じエネルギーを感じるのに、闇さえ感じさせぬ光を灯させる。一体僕が彼に何をしたのか、それすらも理解できないが、思考を読まれることが屈辱的だった。


「なるほど。お前はパヘクワードという力場から訪れたのだな?」

「そうだけど、なんで僕の思考が読めるんだい?」


 彼は暗い表情で、僕の思考を読むと、次なる人類がこの惑星に到着する事を伝える。彼は「今度来たら、乗ってゆけ」とだけ伝える。理由は解らないけど、彼の言う通りにしないと失った力で僕はこの惑星を時間も寿命も分からず彷徨っている処だ。


「この闇の住人という存在は、時も命とも関係を断っている。しかもお前はコトワリと繋がれている。何事も変容から逃れられないとはいえ、この長寿に耐えられる忍耐はさほど高くない様だ」

「言うねぇ――」


 コトワリとの交信で「そのままで居ていい自分」と「彌汲治具流」と「臣子道彦」と融合していい自分との境目が取れるなら、新たな変容を得て、再びライズ達と合流することが出来るだろう。腑に落ちないのは、イーターが僕との関係を断ち、ライズを選んだこと。それに、ミヘルを先にライト・オブ・ホールへ突き落とし、僕の好みとなる仕様・人形に出来ない疼き。これ等が複雑に絡んでいて闇の住人たる形へとなったので、余計に自らの懐に在る闇を探りたくなった。


「その様な事情があるのなら、再び人類の中へと向かうことだ。安易では無いだろうが、潜んでいれば自ずと道と変容が迎えに来る」

「闇、次に潜むは・・・どこかな?」

「っふ、焦るな」


 それは在る時に訪れた。

 パヘクワードで見た虹の鉱石の飛空船とよく似た構造の乗り物が、この惑星へと降り立つ。よく見ると無骨な恰好をした人型の人造物が動いている。これはパイルで見た文明書物に記されていた人型兵器という物ではないだろうか?どこか機械生命体である七つの騎士とよく似ている。だのに、何故こうも捨てた一族の技術がこの世に結集しているのか謎だった。こんな現象はブラックホール現象としか言いようがないからだ。


「さて・・・どうしよう」

「私は隠れる。お前は闇の住人だし隠れる事も、そのまま前に出ることも出来る。行きたければ行けばいい」


 その無機質な形からそれを宇宙船と言えばいいのか、何やら突起物のようなものも幾つか装備されてある。しかもエネルギーを探知するような丸い形も装備。触角の様に動いているのはレーダーか?近付くものすら撃退しそうな、古文書の図解に在った銃器らしきもの。幾ら隠れていても攻撃しそうな気がする。僕の才を以ってして出来る事と言えば・・・


「やぁ、君たち!」

≪ビビビ、ナンだ、キサマは?≫


 人造物が反応した。これ等が反応するには操縦者が必要な筈。七つの騎士でさえ僕と技術者が改造しなければ命令すら受け付けないレベルだった。


「僕はこの惑星に不時着してね、それで5日間も水と植物だけで彷徨っていたんだけど、乗せてくれない?」

≪ブブブ、フジチャク者、ハッケン≫


 やはり反応した。裏に操縦者が要る筈。積極的に聞いてみよう。


「誰かと交信しているのかい?もし可能なら、その者と話をさせて欲しい」

≪ビビ、ヒョウリュウ者トして、ニンシキ。直ちにホカクする≫


 しめた!僕の言いなりになってくれた。

 これから唯一の科学文明と言葉を交わすことが出来るだろう。

 是非、僕の興味範囲で交信できる事を願う。


「痛いッ!ちょっとぉ~、乱暴すぎやしないかい!?」

≪ピピ、テイコウ、フジュンブツめ≫


 少し濡れた。拘束され、愛撫された頃を思い出してしまった。

 この無機質な人造物には痛みが理解不能だろう。


≪セイタイハンノウ、エネルギーゾウカ。ティム、オウトウしろ≫

「えへ!判るんだねぇ~、このエネルギーに反応するなんて嬉しいよぉ」

「エルヴィ、何をしている?」

≪ティム、彼ハ、フジュンブツだ≫

「不純物だって?」


 この応答を元に、宇宙船から一人の人物が降りてきた。白衣に一部機械的な装置を装備している。性別不明だけど、この者がエルヴィという人造物の操縦者か?


「悪いね。君が何者か知らず、この様に拘束する事を赦してほしい」

「言葉が通じる・・・君は?」

「ティム・N・ランカー。年齢は28歳。両性の生命体だよ」


 なぜだろう?ティムからは、学士オード・ナスワイの魂を感じられる。もっと遥かなる世界線から訪れた変容体のようだ。両性だと言っているけど、両親が存在するのか不明だ。


「まぁ、小さな宇宙船だけど入りたまえ」

「ありがとう」

≪ビビ、ヘンな気を、オコスな≫


 エネルギーを察知するに僕は、闇の住人と化している。しかもここにはライズ、イーター、ミヘルさえ居ない。追い掛けてきた筈が見失った様だ。僕の駒であり人形だったが、今は自身が駒で人形とされている様な気分がする。コトワリに魔王たる闇を廃されて、このティムから如何にして変容に関する事を調べよう?それに辺りを見渡すと、被検体容器のような棺桶が見られる。研究施設にあったものと同様だ。ネームプレートもある。


“№43闇の魔王”

“№109ゴリューサ”


「あぁ、それはね、帝国イラ・ウーズから運ばれたサンプルだよ」

「サンプル?」


 ティムが言うに、それは惑星交渉の上で、交信するための材料に使うという。


「ここはね、ブラックホールという空間なので、宇宙の外に出られなくて。あと、空間にある惑星の崩れの中で私達は働いている。外とこの中と交信するんだよ」

「そうかい。色々と親身的に答えてくれてありがとう」

「君、名前ネームは?」

「ジグルと言ってほしい。かつて魔王と呼ばれた存在だよ」


 彼は一瞬だけ「魔王」という発言に戸惑ったが、取り乱す事も無かった。

 そして、微笑みこう言った。


「そっか。君は宇宙の残骸なんだね」

「残・・・はぁ?」


 若干、興味よりも怒りが湧いた。

 彼はイラ・ウーズ帝国という場所と交信するらしい。

 でも、僕に対する侮辱を感じたのは何故だろう。

 何故こうも、“泥”に濡れるのか・・・。


「その反応は“宇宙の真理”に正しく在るね」

「僕が?」

「これから、少し面白いことが起きるよ」


 何だろう。この、安堵感は・・・。

 彼に付いていけば変容できそうな気がする。

 それまでもう少し大人しくして居よう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ