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第12話

第12話



 正式に第2王子の推薦占い師となったシャイレンドラは、レイバッハの現国王ベルナール・セオ・ドーム・レイバッハと謁見することになった。

 ホムラは、当初廊下で待機しているつもりでいたのだが、王の許しを得て同席していた。どうやら、ホムラがアデルハイドを殴り倒したことが、すでに耳に入っていて、王が興味を持ったらしかった。


「そなたが、レセルニアスの選んだ占い師か。遠路はるばる、御苦労であった」


謁見の間でシャイレンドラと対面した国王は、まず労いの言葉をかけた。


「シャイレンドラ・アリスノ-ドでございます。この度、レセルニアス様の推薦を受け、次期国王選定の儀に参加させていただくことになりました」

「うむ、これよりは、レイバッハ王家の客人として、できる限りのもてなしをいたそう」


 初老の国王は、穏やかな口調で言った。


フ-ン、この王様は、一応まともみたいだな。この国王も弟王子も一応まともみたいなのに、なんであのバカ王子だけ、ああもああなんだろうな。もしかして母親か乳母が違うのか?


ホムラの推測は、正鵠を射ていた。実際、正妻の子はアデルハイドだけで、その王妃も早くに亡くなってしまったため、アデルハイドは周囲から甘やかされて育ったのだった。


「話は以上だ。下がるがよい。選儀の詳細は追って知らせる。そなたも今日は長旅で疲れたであろう。夕食の席で、他の占術師と面通しさせるゆえ、それまで部屋で旅の疲れを癒しておるがよい」

「お心遣い感謝いたします」


 シャイレンドラは一礼すると、謁見の間から退室した。


 そして日が沈み、夕食のために案内された大広間で、シャイレンドラは残るレイバッハの王族と、彼らが選んだ占い師たちと顔を合わせることになった。


 全員が席に着いたところで、まず王の口から今回の王位争奪戦に参加する王位継承権を持つ者たちと、彼らが招集した7人の占い師が改めて紹介された。


 第1王子 アデルハイド・クロム・アド・レイバッハ。

 推薦占い師 ジブリール・リーリン。サイキックは予知夢。使用する占具は、夢の聖印。


 第2王子 レセルニアス・クリューデン・アスト・レイバッハ。

 推薦占い師 シャイレンドラ・アリスノート。サイキックは霊感。使用する占具は、精霊の宝玉。


 第3王子 フィルナス・アンリオット・セム・レイバッハ。

 推薦占い師 ル―ン・アムステリアム。サイキックは予知。使用する占具は、運命のカード。


 第1王女 リリアンヌ・レムール・リンス・レイバッハ。

 推薦占い師 ニム・アデリアン。サイキックは直感。使用する占具は、神の指針。


 第2王女 フローデン・レーチェル・ドーラ・レイバッハ。

 推薦占い師 エンゼル・ストラッド。サイキックは予感。使用する占具は、天空の鏡。


 第3王女 レイレシア・ファーム・アン・レイバッハ。

 推薦占い師 ノア・カストロフ。サイキックは感知。使用する占具は、導きの杖。


 そして全員の紹介が終わったところで、王は話を王位争奪戦の勝負内容に移した。


「間もなく、この王都で闘技会が開かれる。これは、我国で3年に1度開かれる大規模な大会であり、この大会には、毎回各地より数百人規模の強者たちが集い、覇を競い合っておる」


 ベルナール王は、そこで一同を見回した。


「そこで、そなたらには、そこで行なわれる闘技会の優勝者を、言い当ててもらいたいのだ」

「もし、複数の者が正解した場合は、どうなるのですか?」


 リリアンヌが尋ねた。


「その場合は、次の課題で決着をつけてもらうことになる」 

「でも王様、それだと、ライバルを蹴落とすために、参加選手に毒を盛るとかして、故意に結果を操作する奴が出てくるんじゃないっスか? その場合、どうするんスか? 自分の候補者の予知が外れた。こうなったら、死なばもろともだ。みたいに、他の候補者を巻き添えにして、玉砕戦法かます奴が出ないとも限らないし」


 ニムが指摘すると、全員の視線が自然とアデルハイドに向いた。


「な、なんだ、貴様ら、その目は? このオレが、そんな姑息な真似をすると思ってるのか? ふざけるな!」


 アデルハイドは気色ばんで、テーブルを叩いた。


「そのために、皆が予知した内容は、書面にしたため試合当日に提出してもらう。そして、その内容は誰も目にすることはできぬよう、大会が終了するまで封印しておく手筈になっておる。それに、仮に自分の予知通りに、大会を操作しようとする不心得者がいたとしても、本当に未来がわかるのであれば、その妨害工作を含めて、結果を予知できるはずだ。なんの問題もない。そうではないか?」

「なるほど。確かに、そうっスね」


 ライバルが誰を指名したかわからなければ、確かに妨害工作そのものが無意味になる。


「だからと言って、そのような不心得者を許すつもりもない。もし不正を行なっていることが発覚した場合、その者の王位継承権は即座に剥奪するものとする。いかなる言い訳も許さぬゆえ、裏工作するつもりでいる者は、その覚悟ですることだ」


 ベルナール王は淡々と言った。


「だが、王位をかけた勝負となれば、他の候補者の妨害を受けることなど、容易に想定しうることであろう。その場合、当然のことながら、命を狙われることも考慮に入れねばならぬ。むろん、我が騎士団も全力で貴殿らを守るが、絶対とは言い切れぬ。命が惜しい者は、早々にこの地より去るがよい」


 ベルナール王は占い師たちを見回したが、動く者はいなかった。


「我が子たちも同様である。己が身は元より、己の命運を託した候補者の身ひとつ守れぬような者であれば、どの道この先、国を率いる大役を務めることなど到底かなわぬであろう。その覚悟と力無き者は、早々にこの国より去るがよい。命があるうちにの」


 ベルナール王は、子供らにも最後通牒を突きつけたが、やはり動く者はいなかった。

 そして夕食会は、不穏な空気を漂わせたまま、お開きになったのだった。



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