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3-3

 

「部室がない?!」

「あー、クラブがいっぱいありすぎて、部室棟の部屋は全部使っているんだって」

「部員数が少ない新設クラブは部室が割り当てられないのだそうだ」

 部室待ちをするクラブは多く存在するのだという。

「わんわん探索部」は始動したばかりでまたぞろ難問にぶつかることになったのだ。


「えー、じゃあさ、「わんわん探索部」に依頼を出そうと思っても、どこへ行けば分からないじゃないか」

 バルドがさも学院生の権利を侵害しているとばかりに眉をひそめる。


「その前に、「失せ物探しをします」ということを周知させる必要があるだろう」

 シストがもっともなことを言う。誰も「わんわん探索部」のことを知らなければ、依頼がくることもない。


「大丈夫だろう。失くし物なんて学生はしょっちゅうやるさ。声がかかるまで、俺たちは神秘の方を探っておこうぜ」

「そうだな。依頼が殺到する前に学院を探検しようぜ」

 ルキーノの気楽な様子に、バルドも乗っかる。


「それより、ご飯だ!」

 腹ペコ男子たちにとっては早急に腹を満たすことは重要事項である。

 カフェテリアへ入り、席を探す。昼休憩の時間帯はどうしたって生徒でごった返す。


「空いているかな」

 六人というけっこうな大人数のグループとなったから、固まって座ることは難しいかもしれない。ふたつかみっつに分かれるのならば、リエトはグループの誰とでも話すが、バルドとシストは引き離すのが良いだろう。

『おれはリエトの隣!』

「うん、そうだね。アーテルの隣はぼくの席だね」

 アーテルにそう返しながら心の中で訂正した。六人じゃなくて、六人と一頭のグループだ。


 リエトたちは幸運にもみなが固まって座ることがでいた。こういうとき、大抵、バルドとルキーノは通路側に陣取る。お代わりをするために席を立ちやすいようにだ。リエトは逆側の端、壁際の方に座る。壁とテーブルの狭間にアーテルが寝そべる。


 リエトがトレーを持って料理を選んでいる姿を見たカフェテリアの職員がアーテル用の肉が盛られたトレーを席まで持って来てくれる。アーテルは身体が大きいため、結構な量を食べるので重いからと言って、運んでくれる。どんな高位貴族の子女だろうと自分で選んで席まで持って行くという学院のルールに対する例外である。


 食事と授業を終えたその日、少年たちはさっそく学院内の探索に取り掛かった。

「「わんわん探索部」、出発!」

「ってことは、アーテルが先頭?」


 学院は新校舎と旧校舎、講堂、部室棟、カフェテリア、図書館、寮といった多くの建物を擁している。長い歴史を誇るだけあって、創立から建つ旧校舎や図書館は年季が入っている。部室棟なども相当な年月を経ているのだが、こちらはことあるごとに修繕・増強を行っているため、わりに新しい見た目をしている。

 なお、旧校舎と言っても使われていないのではない。大幅なカリキュラム改定があり、教室の数を増やす必要となったため、いっそ新しい校舎を建てようとなったのだ。


 寮はプライベートエリアであるし、講堂は用がある者が鍵を借り受けて使用する場所である。カフェテリアは心安く、図書館はシスト以外の少年たちがどこか落ち着かない気持ちになるということで、校舎を探索することにした。


 旧校舎はコの字をしており、裏庭に畑がある建物だ。

 授業が終わった古い建物は人気がなく、少しばかり不気味な雰囲気を漂わせていた。


「なあなあ、かくれんぼしねえ?」

「かくれんぼお?」

 わくわくとした表情のバルドに、ルキーノは口ぶりこそ不満そうだが、その実、面白そうだという気持ちが隠しきれていなかった。


「それ、アーテルならすぐに見つけられるんじゃないか?」

「じゃあ、アーテルは鬼免除で」

『おれはリエトといっしょ!』

「じゃあ、じゃあ、リエトも鬼除外な」


『リエト、かくれんぼってなあに?』

「かくれる人と見つける人に分かれて、かくれた人を見つける遊びだよ」

 アーテルはかくれるのだ、と説明すると『おれ、かくれる! リエトといっしょにかくれる!』と意気盛んである。


「あー、これ、アーテルとリエトを見つけるの、めっちゃ難易度高くね?」

「まあな。すんげえ燃える」

「それな!」

 リエトとアーテルのやり取りを見ていたバルドとルキーノがうずうずする。アーテルのやる気満々の様子がバルドとルキーノへ、そしてそのほかの少年たちにも伝染して行く。


「じゃあさ、こういうのはどう?」

 そうして、鬼が増えて行くかくれんぼが始まった。

 ルールは簡単である。鬼に見つかった者もまた鬼となって、かくれている者を探すのだ。

 そして、当初の予想通り、リエトとアーテルをほかのみなで探すこととなった。


「探せ、探せ!」

「どこだ、どこだ!」

「一階は全部見て回ったよな?」

「ああ。なあ、これ、別れて行動した方がよくね?」

「そうだよな。探しているうちに移動されて、一度探し終わったところに隠れるってのを繰り返されたら、ゼッタイ見つからないぞ!」

「探せ、探せ!」

「どこだ、どこだ!」


 小一時間ほど探し回ったが、リエトとアーテルの姿は見つからない。

 いの一番にルーベンが音を上げて鬼が一番初めに目をつぶって数字を数えた教室で休憩した。次に不本意そうな表情のシストがやって来、その次にバルドとルキーノが「腹が減ったあ」と異口同音に唱えながら登場する。最後にアルフォンソが教室へ入って来たとき、「あー、頼みの綱のアルフォンソも見つけられなかったかあ」と悔しがった。


「それじゃあ、犬笛を吹くぞ?」

 降参、あるいは急事があった際にトレントの枝から作った犬笛を吹くことにしていた。離れた上に遮蔽物があってもアーテルが聞き取れることは実証済みである。

「ぽへー!」

「やっぱり、気が抜けるぅ」

 散々探し回った疲労も手伝って少年たちはへなへなとへたりこむ。


 そうしていると、ひょっこりリエトが顔を出した。その傍らにはアーテルももちろんいる。

「さすがだなあ」

「くーっ、負けた!」

 感心したり悔しがったりと忙しい。けれど、目いっぱい心を揺らして楽しんでいる。


「どこにかくれていたんだ?」

「移動していたの? 全然気配すら感じなかったよ」

 アルフォンソやルーベンの言葉に、リエトはアーテルと顔を見あわせた。

「うん、あのね、」

 リエトは実に楽しそうなわくわくとした表情になる。それを見た少年たちは付き合いが短いものの、「おっ」となった。なにかあるとピンときた。


「アーテルが隠し部屋を見つけたんだ」

 ずっとそこにいたのだという。





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