7、魔飲探索と義勇組合
あれから、眠るまで少しだけ、テント内の御客さんたちと話をした。
テント内のお客さんは、紳士の商人さん、最近の騒ぎで心配して祖母をみにきた家族連れ、隣町のカルばぁの商業組合の知り合いの人の三組だった。
どうやら紳士の商人さんや商業組合の人たちから聞くに、本当にここ1ヶ月、魔飲騒ぎは多いと話を聞かせてくれた。
災難だー!と思ってたけれど、今日が珍しいわけではないとのこと。
それじゃあ、この町で生活している人達も疲れてしまうだろうなぁと思った。避難する側もたまったものじゃないよね。
実際同じテントの子供は、慣れない環境から不安がっているのか、母親のもとからぴったり離れない。トイレにいく時も一緒に行きたがっていた。それに、さすがに、育ち盛りの子供だ、配給では足りなかったのか、「お腹が減った」と母に訴えていた。
ーー汁物だけでもありがたいけど育ち盛りだと足りないよね。
その子の母親は外で、食べ物を買おうとしたみたいだけれど、地下の即席の店は、災害時だからかそれなりに値段を高くつり上げているようだった。
命からがらもってきたようなものだし、仕方ないとはいえ、屋台を覗いてみたけど確かに高い。
買おうにもお金が足りなかったのか、困り果てて我慢しなさいと諭していた。それでも子供は空腹が辛いのか、ふて腐れたように、膝を抱えている。
お節介をすべきではないだろうか、などと思いながらも、悩んだあげく食い歩き用にまた買ったミモモを、分けてあげることにした。
ーー偽善とかそういうわけじゃないんだけど、こういうなんか家族の険悪な雰囲気っての、結構なんかこっちにも伝わってくるよね。
などという、メンタル的な打算からだった。ギスギスしている空間を目の前で見せられると、なんかまぁまぁっ落ち着いてといいたくなるようなあれだ。
「ミモモ、どうぞ」
「す、すみませんっ、でも」
「いい、大丈夫、自分も、たくさん、たべる人、だから、色々もつ、歩く」
「さっき出店をみてきたのですが高くて手持ちだとたりず……明日ロッキンヘム金庫で下ろそうと思っていたのですが」
「そういう、こと、ある、災難」
「本当に、まるでねだったようになってしまって、その、ご無理なさらないでください、きっと、明日には落ち着くと思いますから」
お金を常に下ろしておければそりゃあいいが、災害がおこると、そういうことはままある。
ーーわかるよお母さん。
それに、子供さんを、甘やかしたくないのかわからないけど、そういう教育方針なら割ってはいるつもりあまりない。でも、こんな時だ、不安だろうし、お腹を空かせているのだから、子供の訴えも、見逃すべきじゃないきがした。
「お母さんくれるっていってるでしょ、もらっていい?」
「もうっ、我慢しなさい、はしたないわよ、すみません」
「いい、こんな時、食べれる、元気、大事、それに、お母さん、きっと不安、だから、食べて元気、増やす、そして、お母さん、守る、あげて」
「うんっ、ねっ、ねっいいでしょっ?」
「……本当にすみません、一つだけもらいなさい」
「お母さんと、食べる、二つ、どうぞ」
「そんなっ、そこまでは」
「甘いもの、心、落ち着ける、作用、二人で、ついで、私も、食べる」
「角族さんも食べる?」
「たべる」
子供に二つ手渡して、お母さんにも分けてあげるように促す遠慮がちにしていたが、断られる前に自分用のものを自分でかじった。それをみたのか、深々とお母さんは頭を下げて、ようやく受け取った。
「ナレーシアも、たべる?」
「いいんですか?」
「明日、避難、おわる、また、買う」
「ふふ、じゃあ明日終わったら、宿でお返しにおいしい料理をふるまわなきゃ、ね、お母さん」
「あぁ、そうだね、ってあたしもかい?」
「こういうの、皆食べる、後々、あと腐れない」
「ははは、そうだね、その通りだねっ、しかしそれにしても、結構でてきたが、何個買ってたんだい」
「15個」
「良く食べるねっ、朝もみていたけど、ふふふふ、気持ちいいくいっぷりだったしね」
本当はプラマさんようのやつとして、15個のうちの5個を買ったんだけど。実質、一人で全部食べられそうなので、否定も出来ない。流力消費による、健啖さでエンゲル係数があがりにあがっていく。
ーーどうにか食費を賄えるようにならないとなぁ。
結局そのやりとりをみられていた、テントの人にも分け与えた。無差別に物を人に与えすぎるのも良くないとは良くいう。
でも災害用発電機?とやらに集られるようものではなく、所詮は食べたら終わりの小さなミモモだ。
後腐れもなければあまり、罪悪感も感じない程度の果物だ。
たまたまもっていた、あめ玉とかキャラメルをすこし分けるようなもの。
それにミモモじたい、値段も高くない。
もしこれが貧困地域なら、あげないほうがいいのかもしれないけれど。
収まれば離れる程度の関係なら。
「すまないね、じゃあ、今日の避難がおわったら、これでまた、ミモモ買ってくれ」
カルばぁの知り合いの商業組合の人に、お金を渡された。ついで、紳士さんもレデを渡してくる。そんなつもりではなかったのだけれど。たじろいでいると、女将さんがウィンクしてきた。
「こういうのは受け取るもんさ、そしたら、もらった方も、後腐れがないんだよ」
「なら、ミモモ、また、買う、ミモモ美味しい、いっぱい、あって、困らない」
「ミモモは、隣町からのものだがね、うちのアダシアの貝殻をつぶして肥料に混ぜ込んでるんだよ、だから当然うまいさ」
「ははは女将さん、そりゃあ強引すぎるぜ、隣町の農家の腕がいいからだよ、カルばぁのせいで生粋のアダシアっ子に育っちまって」
「なんだい、本当のことだよっ」
「あ、あのっ、ありがとう角族さん」
女将さんたちの会話で、笑っていると、先ほどミモモをあげた子が、旅装の袖を引っ張りながら、お礼をいってきた。母親にいわれたわけでもない、純粋にもらったことに対してお礼を言おうと思ったらしい。お母さんの普段の教育の賜物だろうなぁ、などと感じ入る。
お母さんが先ほど、気兼ねしているようだったけれど、いい子に育ってるようですよ、お子さんは。
小さいながらに一生懸命服の裾をひっぱって、気恥ずかしそうにいう姿は可愛らしい。こんなしらない場所で、しらない人にお礼を言うのなんて、萎縮してしまいそうなのに。偉い子だ。
「ん、お腹すく、我慢、つらい、わかる、だから、気にする、ない、きっと、騎士さん、怖い、見つけ、すぐ戻る、お腹いっぱい、たべる、できる」
「うん!」
「本当に、ありがとうございます」
他の御客さんと同じように、子供のお母さんから、多めにお金を渡されそうになったので、慌てて遠慮をしようとする。この額は受け取れない、ミモモの代金で充分だ。ちゃんとお金を受け取らないと失礼になる文化もあるとはいうし、先ほどの女将さんがにもいわれたこともある。けれどなにぶんミモモ1個92レデくらいでかった気がするのに、5個買える額だ。多すぎる。
「気持ち、だった、貰おうとか、おもう、なかった」
「そのほうが私の気持ちもはれますから」
「なら、これだけ」
ミモモ二つぶんの値段だけを、受け取った。
「騒動、おわる、後、残りお金、美味しい、もの、お母さんと、たべる」
「いいの?」
「そんな、すみませんっ」
「ミモモ、代金でも十分、気にする、ない、旅人、巻き込まれ、不安、だった、子供の声、あって、助かる、癒される」
「ふふ、あ、いえ、すみません笑ってしまって、子供の声が助かるだなんて、面白いかただと、ありがとうございます」
ーー冗談じゃなく、結構ビビリなので魔飲騒動でピリついて、疲れきっている自分としては子供の声は意識がそらされて助かるんだよお母さん。
災害時ってどうしても、暗くなるものだ、と昔の自分の微かな記憶にある。不安なことを考え続けていたら、やっぱり滅入ってしまう。だから心からの本心だ。
「それじゃあ、そろそろ、明かり、消えてきた、皆寝る所、自分、寝袋に、いく、けっこう夜、深くなる、きた」
「もうそんな時間ですか、本当にありがとうございました、はやくおさまったら、この子に美味しいもの食べさせてあげようと思います」
「うん、うん、それ、いい」
頷いて、テントの寝袋に潜った。ナレーシアちゃんのお母さん、つまり、女将さんは、また人に呼び出されて出てってしまったようだ。町の人達と、遅くまで話し合いの必要がでたらしい。会合場所に向かっていったとのこと。ナレーシアちゃんは、自分の隣で寝袋にくるまっている。
「寝袋、ふかふか」
ボソッとおもったことを小声で呟いていると、ナレーシアちゃんが、こちらの方を向いて、「ふかふかで寒暖差にも対応してるんですよ」と言ってきた。
「寝袋、腰、痛くなる、思った、けど、弾力ある」
「寝袋は、店それぞれで買って、常備しておくんです、お母さんがいいものにこういうのはするんだよって、お客が不快な思いさせないように選んだんです」
「さすが、女将」
「防犯や痴漢対策もばっちりな寝袋なんですよ」
なんでも、使用者いがいが、無理やり寝袋などを開けようとしたりすると、恐怖に反応して、メェクルのように、モコモコになって、開けなくなるらしい。落ち着くと萎んでいくとのこと。なんて便利なんだ。自分も1個、買おうかな。何かあったときように。
って、はっ、深夜のショッピング番組とやらで買いそうになるやつ。
「ふふ、百面相してますよ」
「ナレーシア、説明、うまい、欲しくなった、危ない、お電話する、ところだった」
「お電話?なんですかそれ、町の、港近くのお店にありますよ」
「今度、見る!」
「ふふ、はい」
「ルアドさんはどこから旅してきたんですか?」
「自分はマルメリアから……」
私自身のことは少しごまかして伝えた。自分が聞くと、ナレーシアちゃんは、アダシアのことや、カルばぁの店にいってることや、海鳴亭のことなど、そんな他愛ない話をしてくれた。自分のことをあまり話せなくて、ナレーシアちゃんを、絶妙に騙しているようで、罪悪感にかられたけれど、その触れ合いは悪い時間ではなかった。
ーー自分が魔女じゃなかったらな。
なんてふと、頭をよぎった。そんなこと考えても仕方ないけれど。
そんなこんなで、話しに花を咲かせていると、他の人が寝返りをうった音にびっくりし、二人で同じ反応をして、お互いに顔を見合わせてくすくすと笑ってしまった。
「寝ましょうか、他のかたに差し障りますから」
「そうする」
「おやすみなさいルアドさん」
「おやすみ」
それから、何時間かたったころ、寝入っていたが慌てた人の足音で起こされた。眠っているつもりでも、環境が違うからか睡眠が浅くて、起きてしまったのかもしれない。
近づいてくる足音は普通のものではなかった。騎士の甲冑のカシャカシャと金属が擦れるような足音だ。その音を煩わしく思いながらも、寝ぼけ眼で、時秤をみると、深夜の二時半頃だった。
「ふぁ~」
ナレーシアも、目が覚めたようで、眠そうに、身体を起こした。ほかのお客さんも、音に反応して身体をよじって頭をかいていた。
「ふぁ……何かあったんでしょうか」
「見る、くる」
寝袋を脱いで、テントの外へ出て様子を伺いにいく。すると、先ほどまでは灯りを消していたテントが多かったというのに、複数灯りが増えていた。
それだけじゃなく、深夜に人通りが減っていたのに、騒がしげに人が行き交いはじめていた。
何事かと寝ぼけ眼に呆けてみていると、みたことのある人物が走ってくる姿が見えた。
はじめて塔の外に出た日に、助けてくれた騎士たちの中にいた、そう、確か、背の小さいおどおどした子だ。
「ノルク、ふぁ~……いたか?」
「ロンダルさん、まだ見つかって」
「ん……二人、なぜ、ここ?」
「あ、噂をすれば、見つかったじゃんね、ノルクちゃんお手柄」
「わ、わわわ私、ただ話をしていただけです、たまたま運よく」
「……自分、用事、ある?」
「悪いが、流術士さんの力を借りたいんだ、町にいる流術士全員に話しかけている、流術士じたい、アダシアには数が少ないからな」
「自分にも、お鉢が?」
「そう、すまないけどね、まだ魔飲が見つけられないんだわ、魔飲の流力の濃度が高ければ一発でみつけられるんだが、流力が小さいからか、なかなかみつけられなくて」
「それにその……」
「町の住人を不安がらせちゃまずいから小声でいうが……あいつら、増えた」
「増え!?」
「しーっ」
辺りを見回して、みたが、回りに人はいなかったらしい。口に手をあてて、あわてて口を噤む。そしてしばらく、周囲に聞かれていないのを確認してほっとする。
「小鼠の特性は多産で、全て駆除しないと増えることだ、だから、魔飲化して、その特性を強化したようだ、力が弱いから数に頼ることにしたらしい、普通は番がいないと、増えないが、なんか反則なことに、切れば増殖するらしく……手が足りない」
「そそそそ、それ、わかるまでに、遅くて、もう、増えちゃって、通達したときには、六匹に」
ーーこれがねずみ講式にという本当の、本元ってやつか!って感心していってる場合じゃないわ!増える、増えちゃったのか!?
「三びきまでは捕まえたが残り三匹まだ逃げ回ってるみたいでな、学習しているらしい、流術士は、流力の気配を探るのがうまい、駐在騎士だけじゃ探しきれず、力を借りないといけなくなっちまった……すまない」
「お、お願いします」
「なんでも、おたく、優秀な流術士っていうから、藁にもすがりたいんだよ、どうか落ち着いて、オッサンにシュワとしたやつを昼間からぐびぐびさせてくれっ、畜生おっさんは休みたいんだよぉ」
「ロンダルさんっ欲望しかみえてないですっ!でも、お願いします、本当に手が足りてなくて」
頭を下げられてしまった。はい、手伝います!といいたいところだけれど、生憎本当は優秀な流術士じゃない。カモフラージュのための嘘だったのだ。
ーー嘘をつけばつくほど、嘘がたまっていく~。でも、嘘つきたくないけどつかないと、魔女だってばれるし、実験動物にされちゃうし、なんであの時、時計なんて身分証に見せちゃったかなぁー!?もっとうまいごまかし方、なかったのかな自分!?
「お願いしますっ」
切実にノルクちゃんから頭を下げられるとめちゃくちゃ答えてあげたい。けれど、実力は生活魔法と、他の妨害魔法少しと翻訳だけ、ネズミサイズとはいえ、立ち向かうのは怖すぎる。そもそも優秀な流術士を期待されてるのに、へっぽこ魔法しか使えないなんて、偽物だとばれそうだ。
「もちろん、義勇組合や、騎士から、終わった暁には手当てが出る、タダ働きじゃないぞ!」
ーーあーロンダルさん、お金も大事ですけどそうじゃなくてですね。いや手伝いたいけど役に立たないとおもうんだよね!うんうん!……ってそうだ!
「自分、手伝う、できること、あるか、わかる、ない、少し問題、これ」
片方の腕を、旅装から見せると、二人が絶句したのがわかった。ロンダルは、眉間を険しく、ノルクにいたっては若干動転しているような気配すらある。そりゃあ、ほぼ骨に羽毛が生えている細すぎる腕がいきなり出されたら戸惑うだろう。町でいろんな人を見たが、やっぱりこの腕だけは異質らしい。
「昔、色々ある、災厄、後遺症、これで、流力、巡り悪い、だから、強い魔法、今、あまり、使える、ない、旅する、治療のため、今使える、生活魔法、妨害くらい……流力感知は、使える、でも、お荷物、かもしれない」
実質普通の魔女よりも、流力の流れが不完全なのは嘘ではないのだけれど。だいぶ話をもってしまった。
ーー嘘ついてすみません!
「そうか、すまない、悪いこと聞いちまった、だが、流力感知だけでもあれば助かるんだ、おれたち騎士であんたを守る、いや大変なときになれば、手一杯になるかもしれないが……それでも、それでも手を貸してくれないか?」
「明日、みんなで安心して生活できるように!お願いします」
ーー今すぐ自分本意に逃げたいよね!バレる危険性がますし。むしろ騎士と一緒とか、魔女として渦中の栗を拾いにいくような、わざわざ、飛んで火に入る夏の虫というか……。でも、でも、ここで断っても後々なんか怪しまれる原因になりそうだしなぁ……。
ミモモをあげるのとわけが違う。命の危険はあるし、魔女バレの危険もある。悩みに悩んだが、ため息をついて結論を出した。
「でも、どうしても、自分、危なく、なる、避難、良い?」
「はいっ!」
多分ここで協力しなかったら、流術士だって、疑われるかもしれないし、色々と後々面倒になりそうだ。それに、周囲にバレれば、
こんな時に手伝わない優秀な流術士なんて最低だー!なんて言われかねない。
なんとなく、世間体が悪そうな気もする。打算に打算と、保身に保身を重ねて、トホホと思いながらしぶしぶ頷いた。かっこいい人達なら、颯爽と助けにいくだろうけれど、自分はなんとなくもうねっからビビリなのだろうと、目覚めてからわかった。
何も知らずにがんがんいこうぜなんて、出来る方がそれはそれで、怖い気もするのだけれど。
それにやっぱり、こんな世界だ、命大事には優先したいよね。いや、死んでるけど一回。いや一回死んだから大事にするというか?
「なら、協力、する」
「もちろんさ、俺ら騎士だってよ、命あっての物種だからな、じゃ、旅人さん、すまねぇが頼むよ」
「手伝う、前、宿の人、伝えてくる」
「わかった、じゃあ、ノルクちゃん、俺は他の人にも声かけてくる、伝えるのが終わったら、その人本陣に案内してくれ」
「はい!」
いつもはおどおどしてる様子だが、そのノルクさんの返事は力強かった。彼女に、頷いて、そのあとテントに戻り、ナレーシアに声をかけにいく。
「どうでしたか」
「捜索、騎士、手、欲しい、声かけ、られた、だから、今から、いく、くる」
「一般の方の手もかりたいほどなんですか?」
首をふってみせる。
「自分、流術士、だから、らしい」
「ルアドさんが流術士」
「それで、今から、手伝い、いく、くる、ごめんね」
「わかりました、お母さんに伝えておきます、お客さんを守るのも本当は宿の責任なんですだから、気をつけてくださいね、ルアドさんっ、見つけられなくても戻ってきてくださいっ、安全が一番ですからっ」
「自分、怖いの、苦手、誰よりも、気を付ける」
「ふふ、はい、あ、もしかしたらお父さんも出動してるかもしれないので、その時があったら、迷惑かけるかもしれませんがよろしくお願いします」
「ナレーシア、お父さん?」
「義勇組合の支部長をやってます、ダカンっていいます」
ノルクの案内に従い、この避難空間の一番奥、一際大きなテントに、案内をされると、入り口に、ロンダルやあの隊長といわれていた美人の怖い騎士の姿が見える。
ーー魔女ゆるすまじーって感じでめちゃくちゃ、会いたくなかったのに~!仕方ない。
そんな気持ちが伝わってしまったかのように、隊長といわれていた、あの女性が、こちらに声をかけてきた。
ーーあの、その、こなくても大丈夫ですよ、ええ是非に、などとはいえないよね~。
「すまない、流術士どの、このような深い時間に呼び出してしまった」
「いい、皆、有事、同じ」
「そういってくれると助かる、今回のアダシア、魔飲侵入において、現場指揮をまかされているナティア、ナティア・フィムノリアだ、よろしく」
鋭い眼光の美女様は、ナティアさんというらしい。優しげに微笑まれ握手を求められると、まったく怖くはないのだけれど、魔女となると殺気スイッチが入る人なのだと思う。
ーーこれが本当の殺る気スイッチ。
などと謎の突っ込みを無自覚にしてしまった。
人生初の殺気を感じた時から、この美女は怒ると怖いとしっている。魔女的に、お近づきにはなりたくなかったけれど社交辞令で挨拶をしておこう。
「よろしく」
「早速だが、中に入っていてくれ、私は現場のものに指示をだしてから戻る」
「わかった」
彼女が離れていったのを見て、内心、ほっとした。危険からは遠ざかるに限りたい(願望)。そんなこんなで、氷の殺気を放つ美女騎士様により、バクついた心臓をなだめながら、テントを潜った。
テントに入ると、テント内に設置された机の上に、アダシアの全景が、精巧なホログラムのように浮き上がっていた。
おそらく、机の上に広げてある、地図のようなものが、アダシアを映写する機能をもっているのだと思う。
ーーある意味これは、向こうよりも便利かも。紙一枚電力なしで精巧な情報がみられるのだもんなー。
魔法の力ってすげーなんて、その機能に感心してしまった。そして、一頻り感心したあと、ようやくテントの内部にいる人達に目がいった。
そこには、いつぞや見た、あの猫耳のダルそうな女性と、筋骨粒々の男の人の姿があった。あの、カルばぁの店に案内してくれた人だ。
その他には、騎士数人、町の関係者だろう人達、数人の流術士ぽい人達が見える杖とか色々ともってるし。
せっかくたまたま、こんなときだけれど、合えたのだから筋骨粒々の人に、この前のお礼をしよう。
「すこし、いい?」
「あんたは、この前の」
「そう、この前、案内、感謝」
「いやいや、いいさ、この街を歩くのはすきだし、なにより仕事だからな、ハッハッハッ」
豪快に笑ったのをみて、その声がなんとなく、こちらの内側まで響いてくるようだった。相変わらずでかい、筋骨粒々で豪快な人だ。そして、そんな笑い声をきいてか、隣にいる人が腰の辺りを小突いた。
「はいはい、そうやって街が好きすぎて、ほっつき歩きすぎて、書類を出すのをいつもサボるんですからっ、わかってますか支部長、わたしの仕事もふえてるんです、そんなことばかり支部長がするから私だけダルさが倍になるんですっ」
「わ、わかってるって」
「それ絶対わかってないですよね、何回目ですか」
「うー難しい計算とか書類とか苦手なんだよっ、ってこんな時まで怒らないでくれ~、ネネル」
「ふんっ、有事ですし今日はここまでにします、怒るのもダルいので、ダカン支部長」
「ん、ダカン?」
ナレーシアから聞いた名前と合致する。じゃあもしかして……。
「俺がダカンだ、ここのアダシアの義勇組合の支部長をやっている」
「ダカン、ナレーシア、父、もしかして」
「俺のかわいい、ナレーシアをしっているのか!?」
やっぱりこの人がダカンさんか。どうりで、あのカルばぁの店に詳しいはずだ。ナレーシアちゃんのお父さんだもんね。いやでも、似て……似てないな、うん。いや似てなくて良かったけれど。ムキムキのナレーシアちゃんなんて想像したくない。
「海鳴亭、泊まる、カルばぁ、紹介」
「そうかそうかっそれでかっ、あのつかぬことをきくが、こんなことになって、ナレーシアは怖がっていなかったかっ、震えていたらお父さんが抱き締めにっ」
「お母さん、手伝う、てきぱき、すごい、偉い」
「ほらー全然怖がってないし、心配するようなことないじゃないですか、支部長の妄想ですよっ、ナレーシアちゃんに、また暑苦しいっていわれますよ」
「うぅ、それでも心配してしまうのが親ってやつだろう、溢れ出る俺の愛をとめられるものはいない、そう、例えナレーシア本人でも、それに4日も書類ばかりで合えていないので、ありあまる俺の愛が、溢れすぎて禁断症状が出そうになっている、忘れられてるんじゃないかっ!?」
「4日くらいで忘れる家族ってなんですか、奥さんがご飯届けにきてるし大丈夫ですよ、忘れられてませんって、それに、禁断症状とか、支部長、キモいですよ」
「だってな、だってな、こんな、騒動もなかったら……ナレーシアに、ナレーシアにあいにいけるのにっうぅぅっ、魔飲滅殺、俺とナレーシアの仲をさこうとするなんて、あああああああナレーシアっ」
筋骨粒々で、巨人っぽい大きなガタイの良い人が、娘の名前を喋りながら、泣きわめきているのはすこし怖い。
「うるさいのでなきやんでください」
多分、いや、おそらく、このネネルさんという人も、義勇組合で、ナレーシアちゃんの父親のダカンさんの部下なのだろう。すこし話を聞いてるだけなのに、このネネルさんも苦労してそうだ。
ーーお疲れ様ネネルさん。
けれど、カルばぁから、アドバイスされた、華精の蜜の採取を頼みにいくのも考えていたし、知り合えて良かったのかもしれない。思わぬかたちで義勇組合と関われることになった。
そもそも、義勇組合ってなんなのだろう。まだまだ、なんだかダカンとネネルは緊張感のないやりとりを、あーだこーだといいあっていそうなのでその間に調べよう。
ーー義勇組合に関する項目を抜粋、概略化して、表記して。
『 義勇組合、レネリアス大陸だけでなく、数十か国において一般化している、相互扶助組織。
街や村での様々な仕事の依頼を仲介している。また、レネリアス大陸において、国からも認可を受けている正式な組織である。
国や名家の勅命をこなす騎士とは別で、騎士の仕事の従事に差し障ら無い程度の、自治活動も認められている。
必要があれば騎士からも災害時には、協力を申し出られることもある。また国や町所属の、流術士とも協力関係にあることが多い。
国家権力の介入を免れる、独立的な扶助組織である。
依頼内容は、家事代行や、買い物の手伝い、必要な物資の運搬や採取や、危ない獣の生育環境の観測や討伐まで多岐にわたる。
簡易的な依頼ならば町内部に限り、小さな子供も受けることが許される。
放棄し依頼を遂行できない場合、特定の条件において違約金が発生する場合もある。大陸中に拠点があり、登録したものは、その土地での義勇組合所属の証明がなされ、勇士とよばれようになる。ちなみにロポメスは古代語で折れた翼の添え木をさす』
なるほど、相互扶助組織か。確かに、こんな世界で、助け合える人達が存在しなければ、困ると思う。
自分の記憶の常識だと、家事代行や介護など、向こうでは会社や法人など、組織が協力して運営して、お金や維持費を払う型式でサービスをしていた。
これにより、資本主義社会の影響をもろに受けて、サービスを受けられる格差や、資本を束ねる巨大企業なんかが、うまれたけれど、こちらの世界にはあまり適合しないように思う。営利目的にしすぎると、富を持つものを優先し助けたり、汚職が蔓延し、民間の人々が野放しになる可能性もある。
こちらの世界だと、有事が多いから、営利化しても合わず、より近所のお助け合いを拡張した組織が生まれたのかもしれないなぁなんて思った。なんせ魔飲や、魔女がいるのだから。
それに、騎士だけでは細々したことは手が回らないのを、このような事態になって強く認識する。義勇組合が治安や町の安定化に騎士のみならず手を貸しているのだとおもう。
騎士の配置数だって、人工の多い場所に回すだろうし、田舎に割ける人員が減るのも仕方ない。
自分の生きていた世界にも、古代から組合に類するものは世界各地であったらしい。商業の価格の安定化、税制の取り締まり、同業における諍いの仲裁や、助け合いなどの理由などによるものだとか。
しかし、義勇組合の組合、勇士は、高齢者や若者の援助やコミュニティー形成としても成り立っているものなのだとおもう。町限定版の小遣い、日雇いバイトだ。必要があれば継続できる場合もあるのかもしれないし、熟達するとそれを生業にする人もでてくるのかもしれない。
けれど、この組合は地域密着型で、一仕事終えたら縁が切られるというよりは、もう少し町に根付いたようなものの気がする。
ーーでもこれもしかして、自分も登録すれば、日銭稼ぎになる?魔女だってバレたら別のところに移るのにちょうど良いのでは?
なんて、そんなことを考えはじめて、いたら声をかけられた。
ようやくネネルのお小言と、疲れから乱心して娘にあえない支部長の叫びは終わったらしい。
「そういえば角族の旅人さんよ」
「ん?あ、ナレーシア、愛叫ぶ、終わった?」
「それは年中喋っても足りないから、今は終える」
ーー確かにナレーシアちゃんは可愛いけれど親バカここに極まれる。
「そう、確かに、ナレーシア、いい子、可愛い」
「そうだろう!旅人さんは、わかるやつだなガハハハっ!!娘はやらんけどなっ」
「年はなれてる」
「ん?そうか若そうにあんたも見えるが、角族はみんなあんまり見分けつかんな」
いやー、0歳であんたの娘さんのほうが、年上ですよなんていえない。前の生きた精神ぶんの年月だってわからないんだから。
「まぁ、安心、する、さっき、何、話す、した?」
「あぁ、ここにいるってことはあんたも流術士さんだったのかい」
「端くれ、みたい、もの」
「なら、旅でせっかくきてもらったのに、悪いなこんなことに巻き込んじまって」
「いい、仕方ない、でも、そんな、役にたつ、ない」
「何ができなくても俺たちだけなら、探せもしないんだから十分さ探索してもらえるだけでな」
「はい、一刻もダルいことは終わらせましょう、それに、今日の魔飲騒動は、義勇組合だけじゃなく騎士からの依頼として出された勅命です、参加するだけでっ報酬はとてもいいですよっ」
「ん、そう、なの?」
「騎士から、災厄や魔飲騒動の時は、勅命として、代理的に発注されることが多くてな、共同で義勇組合も腕のあるものが、参加するんだ、お国からだとそりゃあ普通の依頼よりは、高くなるな」
「お金高い、嬉しい大切でも、そんなことより、今もっと、はやく、終わる、大事」
「あんた、いいやつだな!?アダシアや町の人のことを考えてくれてるんだろ」
ーーいや、騎士から離れたいだけなんだけれどね!!ごめんね、ダカンさん!!ついでに町の人達の不安が解消できたらもっといいけどね!!
「あまりお金にがめつくないと、足元みられちゃいますよ旅人さん」
「ううん、お金、大事、町大事、でも、ただ、はやく、終わる、安心、熟睡、寝たい」
「ふふ、それは確かに目先の重大問題ですね、さっさとダルいこと終わらせて寝たいですもん私も、それは同意します、感動して、支部長聞いてませんけど」
「ダカンさん、いうことも、まぁでもある、何でも、無事、終わる、こしたこと、ない」
「ふぁーほんとそうですよねー」
「いいやつだなっあんたはっ本当に」
「ぐぇっ、うぅ、げほっげほっ」
ダカンさん、背中をバシバシ叩かれて痛いので、そろそろやめて欲しい。叩かれすぎて咳き込んでいると、テントにあの怖すぎる、氷の美女騎士、ナティアさんがあらわれた。
「あ、騎士様がきましたよ、会議はじまるようですね」
「ん」
彼女が入ってきた瞬間、ピシッと引き締まったように空気が変わった。騒がしかったテント内は静まり、厳粛なムードに早変わりした。
「遅れてすまないな、このような深い時間に、疲れているだろうに、集まってもらってすまない、しかし、此度の有事、小さな魔飲なれども、流力への耐性が低いものや高齢者や子供が遭遇すれば死人が出る可能性がある、また、ひとたび瘴気が発生すれば、小さな範囲でも除染は時間がかかる、先のアダシアの名産である蜜砂糖の畑の汚染も復興半ばだ」
彼女の言葉に、町の人達が悔しそうに頷いて聞き入っている。そして、あれほど先ほどは緩い様子だったダカンや、ネネルも真剣に聞いている。
「これ以上、我らが住むアダシアの町を、瘴気と無秩序の元たる魔女の種に、穢されてたまるか!」
「そうだ!」
「その通りだ!」
ーーその魔女がいるのですがなどと、言えないことはもちろん、気まずいですよね。ごめんなさい生きててすみません。いや死んでてすみません。
「しかし、現状、アダシアの駐在騎士は数が足りず、後手にまわっている、皇王から、住民の安全を任された我らが騎士の不足のいたすところだ、すまないっ」
ナティア隊長は、深々と頭を下げた。騎士さまというからには、それなりに、厳しい立場として威厳をしめす必要があるだろうに、そのようなことをしないと思っていた。
それが彼女なのだろう。高潔である雰囲気をまとっているが、高慢ではない。
すこししかみていないが、人柄としては悪い人じゃなさそうだ。ただ、魔女が嫌いなところはどうしても相容れないのだろうけれど。自分の立場上。魔飲の発生源にもなるし、畑も汚染されるし、魔女を好きになれなんて無理だよね……うぅ。
「仕方ないことだ、それに最近の魔飲騒動で、騎士さんたちもでずっぱりだろう、こういうときは町のものもどうにかしないといけないからな」
ダカンの言葉につられて、ほかのもの達も頷いた。
「ダカン殿そして、……ここに集まってくれた貴殿らに感謝する」
「かまわないさ、それに、時間が惜しいだろう、早速だがはじめよう、騎士隊長さん」
「ああ、では、協力への礼を強くのべたいところだが、それは、終わってからにしよう、では、現状の報告だ」
アダシアの書かれた地図の下に、小さな人型の駒を置いた。すると立体のアダシアの、その位置に、人がちゃんと配置される。立体型のシミュレーションマップのようだ。
「町北側は、アダシアに配属されている二人の流術士と四人の騎士が、東側はエリアが狭いから、一人の流術士と二人の騎士が担当している、おそらく、そこらで、追いたてられた魔飲を見つけたのだろう、上官である私に報告の後、騎士が魔飲を剣で切ったようだ」
「切ったって、いま生きてるってことは複数だったのですか?」
状況を知らされていた自分は例外だったらしい。一人の流術士らしき人が口にした。
「いや、本来は小さな小鼠一体だった、しかし、あれは、切断すると分裂する」
「分裂!?」
「魔飲化した生き物は凶暴化し、力や俊敏性、能力が上がるのは珍しくないが、アレは、力ではなく、分裂し生存することに特化させたらしい、もとより、大きな魔飲から分かたれた力の一部がとりついてなったものだ、元からそんなに力がなかったためだろう」
分裂していることを聞いて、会議に参加している面々が、ざわつきはじめた。
「じゃあ、いま何匹なんだ」
ダカンが確認のために問う。
「三匹だ、最初の一匹が、最初の切断で二匹に、そして他方に逃げたものを、通達が間に合わず切断し、また増えたようだ、捕まえて消滅させていないものが、残り三びきになる」
「厄介な」
自体がより悪い方向に転がっていることに、集まったものたちも、複雑な顔で、何か言い出しそうな雰囲気になった。
「後手にまわってしまった、わたしの判断ミスだ、終わったら謝罪ならいくらでもするが、今は許してくれ」
「いやいや、長年みてきているが、小さい個体じたい珍しいし見つけにくい、それによ、出勤続きの騎士さんたちもよ限界だろう、そもそも防護陣が作動しなかったんだから仕方ないことだ、だがだ、騎士さん、肝心のこれからだ、どうするつもりだい」
町でそこそこのベテランの雰囲気を醸し出している、義勇組合の勇士の人だろうか、が、隊長のミスを責めなかったことで場が、険悪な空気になるのを是正したようだ。ダカンの目配せもあるらしい。
「ああ、此度の指揮をまかせられたものとして、もちろん、次の計画は考えている、今、引き続き、捜索をしてくれているものたちは動かさず、北と東にとどまってもらっている、北と東に驚異があるとなれば、おそらく魔飲は、驚異のない方に本能的に逃げるだろう、我々は南と西に二手にわかれ、追いたてられた魔飲を捕縛する、もしそこで逃したとしても、北と東にまだ人がいる、配置して包囲網を狭めていくつもりだ」
「確認のためだが、倒さないってことだな?」
「ああ、増殖するなら、流力を通さない封鉱銀の箱に封じ、圧縮して、逃げられないようにしたほうが安心だ、最後の手として高出力の流力の斬撃により消し飛ばすことも考えてはいるが、町中では建物に被害がでるからな」
流力を通さない封鉱銀そんなものがあるのか。
「やはり、捕まえなきゃいけないってことだな」
「苦労を強いるだろうが、その後、箱に閉じ込めたまま、高火力の炎で滅するつもりだ、倒すより難しいが、これ以上増えるほうが厄介だ」
「確かに」
それには、周囲も同意したようだった。確かに、増えられるのが一番の厄介に違いない。
「参加している流術士方々には、その魔飲の捜索を一番に優先し、騎士と共に連絡を取り合い、発見のち、見つけ次第騎士と共に捕獲を手伝っていただきたい」
「それで私たちなのですね」
「理解」
他の流術士さんたちが、理解を示したので、自分もそれにのって、頷いた。
「はい、そして、優先は捕獲、しかし、逃した場合でも参加してくださった方々は気落ちせず、包囲をして中央に逃げ場をなくしておいつめて欲しい、私が中央で指揮をとりながら、追い詰められた魔飲を、封鉱銀で捕獲し滅する、最悪大技で消滅させるかもしれないが、中央広場は建物が少なく、鐘楼には緊急用の障壁がはられているから、被害を出さずにすむ、作戦は以上だ、疑問は」
美人の騎士隊長さんの作戦をみんな思案しているようだった。
「他のやつらと足並み揃えないと、追い込められないが連絡やらはどうする?」
確かに、他の勇士さんの言う通りだ。今回の作戦は、連携が大きく必要だ。町という広範囲の追い詰めに対して、密に連絡しあう必要がある。
「この地図にいま置いている駒をそれぞれにもってもらうことで、私が位置を確認できる、そして、騎士たちは、通信用の伝達装置をいつも持ち歩いている、各勇士、流術士の方たちについてもらうことで補う、騎士達きいたか?」
『はっ!』
「くれぐれも、町の人たち、そして手を貸してくれる流術士の方々に怪我をさせないように、守り、任を遂行せよ!」
『我らが剣をかけて!』
「では、土地勘のない流術士の人には、土地勘のある騎士や勇士と行動させた方が良いな、この町に詳しくないものはいたら手を上げてほしい」
自分ともう一人が手を上げた。
「ならば騎士に通達する、ノルク、ロンダル、おまえ達は、そちらの旅装の流術士の方に、ついていけ」
「了解っす」
「は、はははっはい!」
「他二名はもう一人の流術士の方に、私は残りの騎士と合流して中央で指揮をしながら待機する……すまない、私自ら捜索したいが……」
「あんたが、この町の駐在騎士の隊長だろう、あんたの指揮系統が乱れたら、俺たち勇士も、騎士達も皆も混乱する、どしっと、中央でかまえてれば良いんだよ」
「協力感謝する、義勇組合の勇士の方の配置は」
「半分ずつにわかれて、俺たちも騎士の補助をしたり、逃げ遅れた人がいたら誘導するさ、流術士が魔言を唱えてる時に、戦うくらいはできる」
ダカン支部長とネネルや他の勇士の人達も頷いた。
「よろしく頼む、では、ただいまより
魔飲討伐の作を、はじめる!
組にわかれ、この駒をもち、指定する位置から探索をはじめてくれ!」
『おう!』
それぞれの気合いの入った、掛け声が響き渡ったのだった。
町の人達はこの町のために、必死だ。義勇組合の人達も騎士の人達も役割と、責任のために動く。
なんとも気圧されてしまい、少し自分は場違いな気がしたけれど、でも、この騒動の夜が終わるのは、私も望むところだ。早く寝たいし、怪我をした人が出るのもなんとなく、空気が悪いし。
それになにより……。
ーーとても、怖いけど、終わらないと買い物できないしね!(切実)魔女だってバレずに終わらせないと、うぅ災難だ。
目的の買い物は、まだ終わっていないのだから。そうして、鼠取りの夜は、はじまったのだった。
ーー買い物するだけのつもりだったのにいいいいどうしてこうなるんだよー!!




