不思議な共鳴
私は、最近毎朝目覚めるたびに胸の奥が温かくなって、それが夢の余韻なのか、それとも誰かの想いなのか分からないまま、神殿の窓から朝日を眺めていた。
すると。
胸がどきんと大きく鳴る。
「……え?」
同じ瞬間。
なぜか嬉しい気持ちが込み上げてきた。
理由は分からない。
だけど。
自然と笑顔になっていた。
私、佐伯美咲は、登校途中の横断歩道で信号待ちをしていたのだが、突然胸が温かくなって、何もないのに嬉しくなり、小さく笑ってしまっていた。
「美咲?」
隣の彩乃が不思議そうに見る。
「いいことあった?」
私は首を傾げる。
「分からない」
「でも、誰かが笑ってる気がするの」
彩乃は笑う。
「変なの」
私もつられて笑った。
わたくし、アリア・ルナリアは、王宮の庭園で白い花へ水をあげていたのだけれど、不意に胸が高鳴り、思わず空を見上げていた。
「ひかり……?」
「美咲さん……?」
その名前を口にした瞬間。
風が吹く。
白い花が一斉に揺れた。
まるで三人の心が繋がったように。
俺、レオン・ソレイユは、神殿へ向かう途中で突然足を止めた。
理由はない。
だけど。
胸が苦しい。
そして。
少しだけ切ない。
「なんだ、この感じは」
すると、向こうから歩いてくるひかりと目が合った。
ひかりは少し困ったように笑う。
「レオンも?」
「お前もか」
二人は顔を見合わせる。
その時だった。
俺、シリウス・ルナリアは、書庫で本を読んでいたのだけれど、突然胸の奥がきゅっと締め付けられ、本を落としてしまっていた。
「痛っ……」
その瞬間、アリアが部屋へ飛び込んでくる。
「兄上!」
「今……感じました?」
シリウスは静かに頷く。
「誰かが泣いている」
私、佐伯美咲は、その頃学校の音楽室で一人ピアノを弾いていた。
昼休み。
誰もいない部屋。
何となく鍵盤へ指を置く。
弾いたこともない旋律が自然と流れ始める。
優しくて。
少し切ない曲。
すると、気付けば涙が頬を伝っていた。
「どうして……」
曲が終わる。
静かな拍手が聞こえた。
振り返る。
音楽の先生が立っていた。
「きれいな曲だったよ」
「題名は?」
私はゆっくり首を横へ振る。
「分かりません」
だけど。
心の中では。
一つの言葉だけが浮かんでいた。
「約束の花」
私、結城ひかりは、その瞬間、神殿の中庭で同じ旋律を口ずさんでいた。
自分でも知らない歌。
アリアも。
シリウスも。
レオンも。
誰も教わっていないはずなのに。
同じ歌を知っていた。
歌声が重なる。
白い光が空へ伸びる。
すると、神殿の中央へ一輪の白い花が現れた。
花はゆっくり開く。
中には小さな水晶。
その水晶へ三人の姿が映る。
ひかり。
アリア。
美咲。
三人が同時に笑う。
その瞬間、水晶へ文字が浮かび上がった。
『心は距離を越える』
『想いは世界を越える』
そして。
『三つの魂は一つの歌になる』
文字は静かに消えていった。
その夜。
私、佐伯美咲は、夢の中で白い花畑へ立っていた。
少し離れた場所にはアリア。
その隣にはひかり。
今までとは違う。
三人とも同じ場所にいる。
私は嬉しくなって走り出す。
「ひかり!」
「アリアちゃん!」
二人も笑顔で駆け寄ってくる。
そして。
三人は初めて同時に手を繋いだ。
その瞬間。
白い花畑いっぱいに光が溢れる。
遠くからセレナの声が聞こえた。
『その共鳴が』
『未来を変える力になるよ』
優しい声は風と共に消えていく。
だけど、三人の手の温もりだけは消えなかった。
遠く離れた闇の国ノクティス。
ネヴァは夜空を見上げながら、小さく目を閉じる。
白い光が空へ伸びている。
「始まったのね」
その隣へ、一人の少女が歩み寄る。
「女王様」
「このままでは封印が……」
ネヴァは静かに頷く。
そして、どこか寂しそうに微笑んだ。
「ええ」
「フィオラ」
「あなたはまた、人と人を繋いでしまうのね」
紫色の花びらが夜空へ舞い上がる。
白い花びらと交わりながら、新しい運命は、静かに動き始めていた。




