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ひかり〜約束の花〜  作者: せいら
残された親友
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もうひとりのセレナ

私、佐伯美咲は、最近毎日のように見る夢のせいで朝起きてもどこか現実感がなくて、それでも学校へ向かう足だけは自然と前へ進み、いつものようにひかりのいない教室へ入っていった。

窓際の席。

今日も空席のまま。

私は小さく息をつく。

「おはよう、美咲」

友達が声を掛ける。

「おはよう!」

笑顔で返事をする。

だけど、その笑顔の奥では。

ずっと同じ名前が響いていた。

セレナ。

その名前は日に日に私の心へ深く刻まれていく。

昼休み。

私は屋上へ向かった。

春の風が制服を揺らす。

空を見上げる。

すると。

ひらり。

白い花びらが舞った。

「また来た」

私はそっと手を伸ばす。

花びらが指先へ触れた瞬間。

世界が白く染まった。

白い花畑。

優しい風。

そして、目の前には私とよく似た少女が立っていた。

栗色の髪。

穏やかな笑顔。

「やっと会えたね」

少女が言う。

私は戸惑いながら尋ねる。

「あなたは誰?」

少女は少しだけ困ったように笑った。

「私はセレナ」

「そして……あなたもセレナ」


私、結城ひかりは、その頃アリアと一緒に神殿の図書室で古い書物を調べていたのだけれど、第二の封印が目覚めてから古代文字が少しずつ読めるようになっていることに気付き、自分でも驚いていた。

「これ……読める」

私は一冊の本を開く。

古い文字が自然と頭へ入ってくる。

アリアも隣から覗き込んだ。

そこには。

『光の聖女フィオラ』

『親友セレナ』

『魂を二つへ分け、未来へ託す』

そう書かれていた。

「魂を……二つ?」

私は思わず声を漏らす。

アリアも静かに息を呑んだ。


わたくし、アリア・ルナリアは、その文字を見た瞬間に胸の奥から温かな光が溢れ出すのを感じて、その場で静かに目を閉じていた。

知らない景色が浮かぶ。

フィオラが笑っている。

アルスが花冠を作っている。

ルナが楽しそうに話している。

そして、私は…セレナはフィオラの手を握っていた。

『絶対にまた会おうね』

『もし世界が壊れても』

『私が繋ぐから』

約束。

それは千年前の約束だった。


私、佐伯美咲は、夢の中でセレナを見つめていたのだけれど、不思議なことに怖くはなくて、むしろ昔から知っている人と話しているような安心感に包まれていた。

「私はセレナなの?」

私が聞く。

セレナは首を横へ振る。

「全部ではないよ」

「半分だけ」

「半分……?」

「もう半分は月の国で笑ってる」

その瞬間。

知らない少女の姿が浮かんだ。

紫がかった白い髪。

水色の瞳。

上品な笑顔。

「この子は……」

セレナは優しく微笑む。

「アリア」

その名前を聞いた瞬間。

胸が熱くなった。

涙が自然と零れる。

「会いたい」

思わず口にしていた。

セレナは頷く。

「きっと会えるよ」

「ひかりが繋いでくれるから」


俺、レオン・ソレイユは、王宮の回廊を歩いていたのだけれど、最近のひかりとアリアの様子を見ているうちに、千年前の記憶が少しずつ鮮明になってきていることを自覚していた。

白い花畑。

四人で笑う日々。

そして。

明るく笑う少女。

「セレナ……」

自然と名前が零れる。

その時だった。

向こうからシリウスが歩いてきた。

「珍しい顔してるな」

「お前も同じだろ」

二人は苦笑する。

「最近、夢を見る」

シリウスが言う。

「ああ」

「四人で笑ってる夢だ」

「俺もだ」

少しだけ沈黙が流れる。

そして。

レオンが静かに言った。

「何が起きても」

「今度こそ誰も失いたくない」

シリウスはゆっくり頷いた。

「同感だ」

長年対立してきた二人の王子は。

初めて同じ願いを口にしていた。


その夜。

私、結城ひかりは、夢の花畑で一人立っていた。

すると、左右から二人の少女が歩いてくる。

アリア。

美咲。

二人は同時に私を見る。

そして、同じ笑顔で言った。

「ひかり」

その声は完全に重なっていた。

まるで一人の人が話しているように。

その瞬間、白い光が二人を優しく包む。

遠くからセレナの声が響いた。

『ありがとう』

『もう寂しくないよ』

『だって私は』

『ちゃんと二人の中で生きているから』

花びらが空へ舞い上がる。

その光景を見ながら、私は涙を浮かべて微笑んだ。

千年前に交わした約束は。

少しずつ、確かに未来へ繋がり始めていた。

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