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ひかり〜約束の花〜  作者: せいら
残された親友
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花畑の中で

私は、アリアと一緒に見た白い花びらの光景が忘れられなくて、その夜も胸の奥が少しだけ落ち着かないまま眠りについたのだけれど、不思議なことに目を閉じた瞬間から柔らかな花の香りに包まれていた。

ゆっくりと目を開く。

そこはいつもの夢だった。

どこまでも続く白い花畑。

優しい風。

青い空。

そして。

「ひかり!」

聞き慣れた声が響いた。

私は勢いよく振り返る。

「美咲!」

少し離れた場所で、美咲が笑っていた。

私は思わず走り出す。

美咲も走り出す。

だけど、あと一歩のところで距離は縮まらない。

見えない壁が二人を隔てていた。

「もう!」

美咲が頬を膨らませる。

その姿がおかしくて、私は思わず笑ってしまった。

「全然変わってないね」

「ひかりもでしょ!」

二人の笑い声が花畑に広がっていく。


私、佐伯美咲は、夢の中でひかりと話せる時間が少しずつ長くなっていることに気付いていたのだけれど、それが嬉しい反面、目が覚めればまた会えなくなることを考えると少しだけ切なくなっていた。

「元気そうで安心した」

私が言う。

ひかりは大きく頷く。

「美咲も!」

「ちゃんとご飯食べてる?」

「食べてるよ!」

「寝不足じゃない?」

「誰のせいだと思ってるの!」

二人で顔を見合わせる。

そして同時に笑った。

その時だった。

ひらり。

一枚の白い花びらが二人の間へ舞い降りる。


わたくし、アリア・ルナリアは、その夜初めて夢の中で自分の意思を持ったまま白い花畑へ立っていたのだけれど、目の前にひかりと黒髪の少女が並んでいる姿を見た瞬間、胸の奥が懐かしさでいっぱいになっていた。

「ひかり……」

私が呼ぶ。

ひかりが振り返る。

「アリア!」

その隣で、美咲も驚いたようにこちらを見た。

「この子が……」

「美咲だよ」

ひかりが紹介する。

美咲は少し照れながら頭を下げた。

「初めまして」

その瞬間だった。

私の胸が強く痛んだ。

頭の中に声が響く。

『二人とも大好き』

『ずっと親友だから』

知らないはずの声。

だけど、涙が零れそうになるほど懐かしかった。


私、結城ひかりは、アリアと美咲がお互いを見つめたまま動かなくなっていることに気付いたのだけれど、その空気は初対面というより再会に近いもののように感じられて不思議な気持ちになっていた。

「二人とも?」

私が声を掛ける。

すると。

美咲が小さく呟いた。

「会ったこと……ある?」

アリアも静かに首を横へ振る。

「ありませんわ」

そう答えながらも。

二人の目には涙が浮かんでいた。

その時。

花畑の中央に淡い光が灯る。

白い花びらが渦を描きながら舞い上がる。

そして。

一人の少女がゆっくり姿を現した。

長いミルクティーブラウンの髪。

青い瞳。

白い花冠。

優しく微笑むその姿は、夢で何度も見た少女だった。

「フィオラ様……?」

ひかりが思わず呟く。

少女は静かに首を横へ振る。

『違うよ』

その声は風のように優しい。

『今日は私じゃない』

少女の身体が光に包まれる。

その姿が少しずつ変わっていく。

柔らかな栗色の髪。

明るい笑顔。

どこかアリアにも。

どこか美咲にも似た少女。

『久しぶり』

三人は同時に息を呑んだ。

「セレナ……」

その名前が自然と口から零れた。

セレナは嬉しそうに微笑む。

『やっと会えたね』

『でもまだ全部は思い出さなくていい』

『今は笑っていて』

そう言って三人を優しく見つめる。

その瞳は千年前から変わらない親友の瞳だった。

次の瞬間。

風が吹く。

白い花びらが空いっぱいに舞い上がる。

セレナの姿も光の中へ溶けていく。

『また会おうね』

最後の言葉だけが静かに響いた。


私、結城ひかりは、朝日で目を覚ました瞬間にも夢の記憶がはっきり残っていて、窓辺に置かれた白い花を見つめながら自然と笑顔になっていた。

私、佐伯美咲は、学校へ向かう道で空を見上げながら、理由も分からないまま「また会える」という確信を胸に歩いていた。


わたくし、アリア・ルナリアは、自室の鏡に映る自分を見つめながら、胸の奥で確かに温かな何かが目覚め始めていることを感じていた。

三つの世界。

三人の少女。

そして一つの魂。

まだ誰も真実を知らない。

だけど運命は静かに、確実に交わり始めていた。

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